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不純異性同棲日記  作者: 瓶乃らむね
2/4

第1話 「今日から同棲」

「起きてくださーい」

朝、甲高い声で阿弥が叫んでいる。

「…」

「やっと起きましたか」

「もう朝食できてるんですから早く着替えて、顔洗ってきてくださいね」

そう言って阿弥は部屋を後にした。

「どうしてこんなことに…」

遡ること3日前


◇ ◇ ◇


幼馴染で自称可愛い渡月阿弥が

『今日から宙比戸そらひとと同棲します』

などと僕、小鳥遊宙比戸に言ってきたのだ。

正直それだけ聞いても意味がわからないし同棲なんて高校生の男女2人でするなんて無理なので当然

『無理です』

と即答した。

そうして安心してもう一眠りしようとした瞬間


ピピピピッピピピピッ


突然、宙比戸のスマホが鳴り出した。

(誰だろう…まぁどうせ智也ともやだろうから無視でいいや)

『出なくていいんですか?』

宙比戸のスマホを見ながら阿弥が尋ねてきた。

『多分智也だろうから別にいいよ』

『…そうですか』

そう言った瞬間、阿弥は少し間を空けてから宙比戸のスマホを取りこう言った。

『じゃあ私が出ますね!』

『ちょちょちょ!ちょっと待って!』

(流石に今阿弥が電話に出たらあらぬ誤解が生まれる!)

(いや、あいつなら無理矢理にでも生む!)

宙比戸は慌てて阿弥からスマホを取り返した。

『も、もしもし?』

【あ、宙比戸?やっと起きたのね】

「母さん⁉︎」

声の主は智也ではなく先月から父さんの出張の関係で沖縄に行ってる母さんだった。

【なによ、急に大きな声出して】

『い、いや寝ぼけてて』

(まずいまずいまずい)

(今隣には阿弥がいる!高校生の男女が朝から男の部屋で2人きりなんて不純だ!そんなのバレたら母さんになんて言われるか…)

【あらそう、ならいいのだけど】

『あはは、ははは』

(とりあえず阿弥がいるのがバレる前に電話を切らないと…)

【そうえいば、今そこに阿弥ちゃんいるんじゃないの?】

その瞬間、時が止まったかのように周りが静まり返った。

(あ、終わったんだぁ)

『えーとなんのこと?』

【あら、おかしいわね?阿弥ちゃんにはしっかり合鍵渡しておいたはずなのだけれど】

『え?』

【え?】

そこからしばらく全然噛み合わない会話が続いた。

『えーと、つまり阿弥は母さんに頼まれて同棲するって言い出したってこと?』

『そうですよ〜言ってなかったでしたっけ?」

『聞いてないです…』

ざっくり言うと母さんが僕を心配して信頼できる阿弥に頼んでみたら、なんとすんなりOKされたようだった。

【だははは!なんだ聞いてなかったのね】

母さんはまるでアホを見るかのように高らかに笑っている。

【まぁつまりそういうことよ。阿弥ちゃんのご家庭にも色々あるしね】

『つまりそういうことです!』

【だははは!ん?なにあおい?え、お兄ちゃん?】

電話越しから別の声が聞こえてくる。

【おいクソ兄貴‼︎お前阿弥さんと2人きりだからって変なことするなよ‼︎】

電話越しに聞こえてきたのは中学生の妹の葵だった。

【何かやらかしたらぶっ殺すからな‼︎】

どうやら少し怒っているらしい。

【もーう、本当はお兄ちゃん会えなくて寂しいくせに】

【な、何言ってるんだよママ!】

母さんの発言にひどく動揺している。

【毎日のようお兄ちゃん今何してるかなぁって気にしてるじゃない】

追加で母の攻撃が降ってきた。

『へ〜、そうだったんだ〜』

【げっ…】

『僕も会えなくて寂しかったよー!クソ兄貴なんかじゃなくて昔みたいにお兄ちゃんって呼んでよー』

【…誰が呼ぶかよ!○ね!クソ兄貴!】


ピーピーピーピー


宙比戸のキモい発言により電話が切られてしまった。

『全く〜思春期だな〜』

『はっ‼︎』

大好きな妹と話せて上機嫌になって忘れていたが今ここには阿弥がいたのだった。

『…』

恐る恐る阿弥のいる方向に目を向けてみると

『…シスコン』

そこからしばらくは沈黙の時間が続いた。


◇ ◇ ◇


という夢を見たのではなく現実があった。

「はぁ、阿弥と同棲かぁ…」

(正直、阿弥との同棲は心配事だらけで仕方がない。親の出張によって妹の葵が家から消えてしまったが実質一人暮らしということになるのでそこは嬉しかった。それに…)

(この部屋にはあれがアレな本や、これがコレなビデオや、とても薄い本があるのでそれがバレる危険性がある!それだけは嫌だ!絶対嫌だ!)

そんなことを考えているうちに部屋で着替えを済ませ、阿弥のいるリビングに向かった。

「あ、遅いですよ宙比戸」

「う、うん、ごめん」

阿弥を見た瞬間一瞬ドキッとした。

(制服エプロン⁉︎)

自称可愛いといったが、阿弥は周りの人と比べるとかなり可愛い。

「あれー?どうしたんですか?」

阿弥が少しニヤけた顔でこちらを見てくる。

「もしかして私の可愛さに魅了されてました?」

「そ、そんなことない!」

「本当ですかね?」

阿弥はどんどん距離を詰めてくる。

(ち、近い!)

「あははは!顔真っ赤にしちゃって可愛いですね」

阿弥は良いものを見たかのように笑っている。

「ふぅ、朝からいいもの見れました」

「さぁ早く朝食を食べましょう。今日は和食ですよ〜」

そう言って阿弥はエプロンを外し椅子に座った。

目の前にはご飯、鮭、味噌汁、卵焼きととても美味しそうな朝食が並んでいた!

「い、いただきます!」

「はい、召しあがれ」

阿弥の作ったご飯はとても美味しく、あっという間に食べ終わってしまった。

「はぁおいしかった!ご馳走さでした!」

「お粗末さまです」

そう言って宙比戸と阿弥は食器を下げた。

「食器は水につけといてくださいね」

「う、うん」

(そうえいばここ三日間、毎日阿弥にご飯作ってもらってるな。てかご飯だけじゃなくて家事全般任せちゃってるな)

「ねぇ阿弥」

「なんですか?」

「なんで阿弥はわざわざ家にきて料理だったり掃除だったり家事全般をやってくれるの?」

阿弥との同棲が始まってからずっと気になっていて曖昧になっていることを聞いてみることにした。

「え?」

「それに僕の親がお願いしてきたとはいえ、なんで僕との同性をあっさり受け入れたの?」

「なんでって…宙比戸は絶対に料理も作らないし、部屋も掃除しないし、それに私が朝起こさなかったら絶対に寝坊して遅刻するじゃないですか」

阿弥の怒涛の回答のオンパレードに見えない謎の言葉の矢がお腹に刺さった気がした。

「うぐっ!」

(図星だった)

「それに…」

そう阿弥が言った瞬間、阿弥の目からハイライトが消えたきがした。

「宙比戸のことは全部私がやって私無しでは生きられないようにしたい」

「宙比戸と離れたくない」

「宙比戸の周りに変な人が来ないよう防止しなくちゃいけない」

「宙比戸を……私のものにしたい」

「からですよ!」

阿弥から来た回答は想像を絶するものだった。

正直聞かなかった方が良かったかのかもしれない。

なぜそこまで思うのか。そしてなぜ…

目が笑っていないのか。

だが聞けない。

体が本能的に拒否している。これ以上聞いてはいけないと。

「…」

そのとき阿弥の目のハイライトが戻った。

「さ!早く学校に行きますよ!」

そう言って阿弥は宙比戸の腕を引っ張った。

「ちょ、待って!力強すぎ!」

そうして宙比戸と阿弥は一緒に学校に向かうのだった。


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