ラウンド65 〝信じさせて〟
ノアが出した、一つの証明問題。
答えなんて、考えるまでもなく決まっていた。
「―――――信じるよ。」
静かに告げたアルシードの顔が、くしゃりと歪む。
「いや……信じさせて。ノアのことだけは信じたいんだ。あなただけが、僕の存在に気付いてくれた。あなただけが、最初から最後まで、僕をアルシードとして見てくれた。あなたの声だから、僕の心に届いたんだ。僕はもう……あなたなしでは、生きていけない…っ」
本当は怖い。
また裏切られたらと思うと、目の前が真っ暗になりそうで。
だからこれ以上は暗くならないように、光に背を向けて闇だけを見つめてきた。
そんな時に無理やり見せられた光は、あまりにもまぶしくて。
だけど、もう手離さずにはいられないほどに愛しくて。
彼女の服を握って必死に光にしがみつこうとする、震える両手。
それを当然のように包み込んで、最愛の人は笑ってくれる。
「当たり前だ。どうか信じてくれ。お前がこれまで自分の心を犠牲にしてきたマイナスは、私が一生をかけてプラスに変えてやる。」
「―――っ」
ああ……やっぱり……
彼女は生涯でたった一人の―――運命の人だ。
子供のように、勢いよく胸に飛び込む。
その勢いと同じくらいの力強さで、彼女はしっかりと抱き締めてくれる。
「う……うあ……うああっ……」
もう、意味の通じる言葉なんて言えなかった。
「そうだな。二十年も溜め続けてきた涙が、そんな簡単に収まるわけないな。」
「うっ……うううっ……」
「いいじゃないか、復讐の人生。お前にはその権利がある。存分にやり返してやればいい。私も全力で手伝おう。」
「ううっ……ああ…っ」
「アルシードに戻る決意をしてくれて、ありがとう。ルルアではお前を都合よく使わせてなんかやらないから、心のままにアルシードとして生きろ。私と共に。」
「あああああっ! うああああっ!!」
生まれ故郷では、決して癒えることのなかった深い傷。
それが二十年の時と海を越えて、癒えるための糸口を掴んだ瞬間だった。




