ラウンド61 あふれないで……
さて。
どうせ研究所に来たなら、ちょっとばかり仕事をしていきましょう。
魂に染み込んだ研究者気質は、もはや本能みたいなもの。
知への欲求には、どうしたって抗えないんだ。
「あっ! アル兄ちゃーん!!」
ドラゴンたちが憩う広場に足を踏み入れると、真っ先にロイリアが飛んできた。
「やぁ、ロイリア。また大きくなったねー。」
「うん、そうなんだ。もうキリハやアル兄ちゃんに飛びつけなくて、ちょっと寂しいよ。」
「でも、大きくなることはいいことじゃない。大人に近付いてる証拠だよ。」
「うん! アル兄ちゃんがそう言うなら、嬉しい!!」
人間でいうところの成長期なのか、ロイリアはここ一年で体格がものすごく変わった。
とはいえまだ子供だから、寂しいのは我慢できないよう。
飛びつくことはしなくなったものの、今もこうして頭をぐりぐりと押しつけてご満悦だ。
「ロイリアったら……そんなに僕のことが好き?」
「うん、大好き! キリハとおんなじくらい!!」
無邪気に即答するロイリアは、嬉々として語る。
「アル兄ちゃんが僕の病気を治してくれたから、僕は今も楽しく生きていられるんだ! アル兄ちゃんのおかげで、僕の毎日はこんなにもキラキラしてるんだよ!!」
「―――っ!!」
その響きに、世界が真っ白に染まる。
(キラキラ……)
無になった脳内に、それだけが木霊する。
自分の場合、自己分析をしてぐるぐる悩んでも答えなんて出なくて、何かの拍子に外部から想定外の刺激を受けた時の方が、あっさりと自分の気持ちが見えるようだから。
そう思ったのは、いつのことだっけ。
でも待って。
これだけはだめ。
自分の奥底にある、鎖でぐるぐる巻きにして、何重にも鍵をかけた一つの箱。
それが―――揺れている。
お願い……
お願いだから……
そんなに暴れないで。
……開かないで。
―――――あふれないで……




