ラウンド52 過去の闇からのメッセージ
「本当の、報酬…?」
ちょっと。
意味が分からないんだけど…?
不可解に思って眉を寄せるしかない自分に、悪魔を超えて魔王と呼ばれる彼は淡々と告げてくる。
「安心したまえ。彼以外の人間は、君が望むように消したとも。ただ、彼だけには……生かす価値を見出だしてしまってね。」
「どういうことです…?」
「彼はその時、監禁された君に食事を運ぶ役目を担っていたそうだ。」
「………っ」
あいつか。
憎たらしいくらい鮮明に、顔だけは覚えている。
「たった九歳の子供から、日に日に光が失われていく…。そんな光景を見ていることが、ひどくつらくてたまらなかったと、そう言っていた。」
「はっ。テロ組織にいて何を……」
「連帯保証人として背負った借金のカタに、雑用でこき使われていたそうだよ。本当はこんなことをしたくなかったから、逮捕されてほっとしているとまで言っていたくらいだ。」
「口では、なんとでも綺麗事を言える…っ」
「そうだね……」
ランドルフは、こちらの言葉を否定しない。
「君が兄への復讐のために、自分を殺して兄として生きていると……それを知った彼は、私の前で泣き崩れたよ。そしてこう問うた。―――どうにかして、あの子を光で照らしてあげることはできないのか、と。」
「―――っ!!」
「そのためならなんでもすると……そう言ってきたから、私の手駒として仕事を与えた。君の望みどおりに事件の関係者を葬り去ったのは彼だ。」
「なっ…!?」
まさかの事実に、ジョーは目を剥く。
「そうさ。口だけではなんとでも言えるのさ。だが彼は、口だけではなく行動で君への償いを示した。だから生かし続け、今回の件で証言台に立てと命じた。喜んで取材に応じていたよ。ニュースの続きを読みなさい。彼から君へ、メッセージが贈られているはずだ。」
「………」
あいつからのメッセージ?
どうして僕が、そんなものを読まなきゃいけないのさ。
「………っ」
勘違いするなよ。
お前が余計なことをしゃべってないか。
それを確認するだけなんだから。
――――――
―――私はあの時、一人の可愛い子供が光を失う様を見たんです。
純粋な子でした。
アルシード君が奇跡的な薬を作れたのは、その才能以上に、命を救おうとした真に美しくて純粋な心が、真実への道を力強く切り開いたからなのでしょう。
そんな子供に、それとは逆に人を傷つける薬を作らせようだなんて……
今思うと、私たちはなんと罪深きことをしたのでしょう。
悔みたくとも、悔やむことすら許されないほどの大罪です。
自身が作った毒でアジトを制圧したアルシード君の目は、今も忘れられません。
そして、倒れた大人を見下ろす無に染まった冷たい目を見て、私は悟ってしまったのです。
大好きな薬を使って初めて他人を傷つけたこの子は―――他人以上に、自分自身を傷つけてしまったんだと。
あの子が生きてアジトを出るためには、ああするしかなかった。
それはそうなのです。
でも……あの時、私にほんの少しでも勇気があれば、あの子にあんなことをさせずに済んだのではないかと、そう思っては切なくなります。
今回私がこうして証言しているのは、ただの罪滅ぼしなのでしょう。
彼が今さら、私を許してくれるとは思いません。
ただ、私は許されなくてもこう願います。
―――どうか、本当の心で光の中に飛び立ってほしいと……




