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ラウンド28 互いに本領発揮


「うわぁっ!? なんだ、この女は!?」

「おい、怯むな! こっちは五人も―――ぐあ…っ」



「私を相手に、よそ見をする余裕があると思うなーっ!!」



 大の男を数人相手取っているとは思えない立ち回りで、ノアは圧巻の短刀さばきと体術を繰り出す。



 彼女ほどの腕ならば相手の喉をかっさばくなど一瞬だろうが、そこは最低限の注文があるためなのか、それなりに手加減しているようだ。



 故の不運と言うべきか。



 すぐに楽になれない彼らは、ノアの手痛い一撃を受ける度に壮絶な苦痛を味わうはめになっていた。



「く…っ。おい! 女は放っておけ! オレたちのターゲットは―――」

「本当にそれ。今さら思い出したの~?」



 指示役の男の背後に影が立ったのはその時。

 彼がそれに気付いた頃には、その首筋にささやかな痛みが走った後だった。



「う…ぐ…っ」



 瞬く間に崩れていく男の体。

 それを眺めるジョーは余裕の微笑みをたたえ、手にしてした注射器をくるりと回した。



「一応は僕の実力を加味した上で、それなりに腕が立つ人をチョイスしてきたんだね? ……でも残念。まさか、僕のエスコートの相手が天下の大統領様とは思っていなかったようで?」



「なっ…!?」



「まあ、分かるわけないか。研究所と御殿には口止め済みだし、予備策として情報操作プログラムは仕込んであったし……まさか、普段あんなに男勝りなノアが、あーんなに可愛らしい格好をするなんて、誰も想像しないだろうし。」



 さりげなく失礼なことを言いながら、ジョーは注射器を右手から左手へ。



 空いた右手をジャケットの内側に入れ、そこから取り出したナイフを素早くひらめかせる。



「今は軍から離れて地下に引きこもっている人間だから、ルルアの武術レベルについていけるわけがないだろう……とでも、依頼主に言われた?」



「くっ…」



 首にナイフの刃を食い込まされた男は、額から冷や汗を流す。

 そんな彼を、ジョーの鋭い眼光が貫いた。



「実質的な剣の腕はともかく……君たちの動きを見切って操るくらいの目と動きは、(おとろ)えてないんだよ。教師を目指す〈風魔(ふうま)のディアラント〉の指導力、甘く見ないことだねぇ? ……それに僕、天才なんで!」



「うっ…!!」



 小さな発砲音と男の(うめ)き声が重なる。

 二人目の動きを封じたジョーの左手には、拳銃型の注射器が構えられていた。



「一度手にした技術を、この僕が(なま)らせるわけないじゃない。研究も鍛錬も同時並行でやるくらい、朝飯前なんだ♪」



「貴様……いつの間に…っ」



「はっ、君たちって三流以下だった? いつ利き手が負傷するかも分からないんだから、両手を使えるようになっておくのは当然じゃないの? そして―――無駄なおしゃべりは、時間稼ぎの常套(じょうとう)手段さ。」



 ものの数秒で薬品を入れ替えていたジョーは、迷いない構えで次弾を発砲。

 それは、ノアに斬りかかろうとした男の背中に命中する。



「ごめんねぇ? 五人程度じゃ、僕を殺すのは無理みたいだね?」



 残りの二人も、ノアの手によって叩きのめされた頃。

 こちら側の圧勝である。



「………」



 なす(すべ)もなく、ジョーを見上げるしかない男たち。

 しかし、彼らの表情に悔しさや危機感といった感情は見られなかった。



 それどころか、焦点の合わないぼうっとした双眸が、光を失って濁ったガラス玉のようになっていく。



「……ふふ。効いてきたみたいだね。」



 ゆっくりとしゃがんだジョーは、男の顎先(あごさき)を指で上げる。





「話を聞きたいとは言ったけど、君たちの人格に用はないんだ。記憶と口だけ貸してちょうだい? まあ……―――薬が切れた後、正気を取り戻せる保証はないけどね。」





 凄惨さを帯びるその笑顔。

 そこには、セレニアで悪魔とも魔王とも恐れられる彼の真骨頂が見えていた。



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