表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

初めての殺人

作者: 西埜水彩

※性犯罪、殺人にまつわる描写があります。

 人を殺さないといけない。


 今私はよんどころない事情でお金が必要になった。そうしたら知人に殺人稼業を紹介された。


 もちろん知っている、殺人は犯罪だって。


 人を殺せば罪に問われる、そうしなくちゃいけないと今まで信じていたし、今も信じている。


 そんな私がお金のために人を殺す。もうこれしか手段がないから仕方ないけど、これ以外の手段を取りたかった。でもちょっとしたサイコキネシスの能力を持った中学生の私には、できることが他になかった。


「誰でも良いっていうけど、それが困る」


 思わずため息をついた。


 殺人稼業の事務所に所属するため、誰でも良いから一人殺す必要がある。


 一人殺して、その証拠を写真として提出する。そしてその後に殺人罪で捕まらなかったら、無事殺し屋として事務所に所属して、人を殺し続ける人生を送ることになる。


 ということなら今ならまだ間に合う。人を殺さず、他の手段でお金を得ることが出来るように頑張ることだって出来る。


「でもその他の手段が分からない。とりあえず治安が悪いところに行くか」


 最初の殺人にオススメの場所、として聞いた街へと向かう。


 そこは裏街。性風俗関係のお店が多く、人権が粗末に扱われていたり犯罪が多かったりするらしい。


 そこで二、三人死んでいても誰も不思議に思わないし、訳ありの人が多いから殺人が事件化されないこともあるし、何よりもひどい性犯罪者が多いから殺すことに躊躇わなくて良いらしい。


 そんな街の人通りが少ない場所。そこを探して私は歩く。


「あいつ逃げやがった。早く探してこい」


「お嬢さん、いくらだ?」


 たくさんの話し声、特に娼館をイメージするような会話が多い。とはいえ私は娼館へは行ったことがないんだけどね、小説とかで読んだだけって話。


 人から逃げるように歩いていたら、気がつけば薄暗い場所にいた。ここは路地裏という言葉が似合うのかもしれない。そんな明るさとは無縁の場所だ。


 少なくともここで人を殺したら、誰にもバレることはない。そうだここで殺人しよう。私はナイフとカメラを取り出しやすいように鞄のチャックを開けて、誰かいないかを探す。


 まともな人がいないでほしい。可哀想な被害者もいないで欲しい。私が殺したいのは、そう人間のくずみたいな人だ。何人のも人を殺すとか、他人の尊厳をぐちゃぐちゃにしているとか、そんな風な殺しても心が痛まない人がいると良い。


 そうじゃないと殺人という行為に躊躇ってしまいそうだ。本当は私、人を殺したくないから。


「おとなしくしろ。殺されたいかっ」


 そんなとき、物騒な言葉が聞こえた。


 これは殺人チャンス、こういうことを言うのは殺していい人に違いない。私は声がした方向へ走って向かう。


「誰も助けてくれる人なんていないんだ。おとなしく言うことを聞けば、早く終わる」


 ぱっと見では分からないコの字形の建物にある穴の部分で、私の二倍以上は生きていそうななおじさんが誰かを押し倒していた。


 私はそっと後ろからおじさんに近づき、ナイフで刺す。能力を使ってナイフを深く刺したもんだから、一発でおじさんは動かなくなった。私は能力をまた使い、足でおじさんを横に倒す。そして持っていたカメラで何枚もの写真を撮る。


 これ使い捨てで撮った後すぐにどういう風な写真なのか確認はできない。そこで念のために、十回くらいくらい写真を撮る。うん、これでちゃんと写真が撮れたはず。


 血のついたナイフをビニール袋にしまい、カメラと共に鞄へ片付ける。さて早くこの場から逃げよう、いつまでもここにいても仕方ない。


 その時初めて、私は襲われている人のことを見た。


 やたらめったら適当に切られた髪、ところどころ見える素肌には古い傷や新しい傷が残っている。年は私と同じくらいで、性別はどうか分からない。そんな綺麗な人が服の乱れを直さずに、うつろな目で空を見ている。


 早くここから立ち去らないといけないのに、歩くことすらできない。その人から離れることが出来ない。なんでだろう?


「どうしたんだ? ていうかこの人亡くなっているの、君たち大丈夫か?」


 大学生っぽい若いお兄さんがやってきた。


 ヤバい、この人に私が殺したとバレるかもしれない。だってもう一人いるけど、その人は魂が飛んでいて殺人なんてできそうにないから。


 私は黙ってその場から離れる。この街にいるから訳ありだと思ったんだろう、青年は私の方へやってこない。いやいかにも襲われた後のような人がいたから、そっちを優先したかもしれない。


 殺人現場からかなり離れたところで、たまたまあった小さなベンチに座る。


 私は人を殺してしまった。


 今まで殺人はおろか、信号無視のような小さな罪すら犯したことなかった。地面に落ちているものは警察か信頼できる所に預けたし、いじめや無視すらしたこともない。


 そんな正しさを守って生きてきた私が、人を殺してしまった。


 もう私は正しくあることができない。これからどんどん罪を重ねて、生きる度に間違いを重ねていくんだ。


 だからせめて、あの人だけは助かって欲しい。私が殺すことによって、解放された人。あの人が幸せになることで、私の犯した罪がマシになるかもしれない。


 私は完全に悪へ染まってしまうわけではないかもしれない。そう思うことができるから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ