52 氷より冷たい救済(マンゴーシェイク)
暑い。身体が熱い。
炎天下の信号待ちがつらくて、日陰で立ち止まる。横断歩道に蜃気楼が立つ。ツクツクボウシの鳴き声、眼鏡が汗でずれ、汗が顎を伝う。
身体が溶けちまいそう――。
暦の上では秋とはいえ、全くもって秋っぽくない。残暑見舞いも荒唐無稽甚だしい。
はっと気づくと、信号が既に青に変わった後だった。一緒に待っていた人が渡り終えているのを見て、慌てて横断歩道に向かう。横断待ちの車にぺこりと頭を下げて、駆け出そうとした途端。
「いでぇ!」
つんのめって、横断歩道の上で右ふくらはぎを抱えて座り込む。
「つった!」
とはいえ、車を待たすわけにもいかず、ひぃひぃ言いながら、横断歩道を渡り終わる。周りの人が心配そうに振り向くのが恥ずかしい。余計に顔を赤くしながら、ガードレールに腰かけて、右ふくらはぎをさする。
誰がこの痙攣をつったと言い始めたのか。筋肉がはりつめて、妙な方向に曲がりそうな手前で踏みとどまっている。こわばりが太ももにも伝わり始めて、焦る。
この痛みが太ももにまで及べば、大の男が叫んでしまいかねない。撫でたり伸ばしたりしながら、痛みが治まるのを待つ。
おかしいな。足がつるような動きをした覚えはない。
そしてハタと思いつく。そういえば頭に鈍痛がある。もしかして、熱中症?
脳内で、生卵がゆで卵になるイメージが浮かぶ。
白衣を着た誰かが「熱中症でダメージを負った脳はこのように元には戻りません」と言っている。
あかん。
急いでコンビニを探し、フローズンドリンクを買い求めた。
社に戻って体温を測れば、37.5度。
うん。お大事にしよう。
というわけで、アイスノンまみれで寝たのが昨日。
体温は戻ったが、どうにも熱さとダルさが取れない。これは内から冷やさねばならぬ。
身体を冷やすといえば、かき氷だが、我が家のかき氷機は手動。であれば、別の物がいいだろう。
というわけで、今日はマンゴーシェイクを作ります!
冷凍マンゴー、バニラアイス、牛乳、ヨーグルト、レモン果汁をミキサーに入れる。
あとは、スイッチオーン!!
どろどろに混ざったシェイクの上に、乱切りしたマンゴーを乗せたら完成。
いたって簡単。
「ぷはっ」
身体が中から冷えていく。
内臓には悪いのやもしれないが、命の危機である。許して欲しい。
濃厚な甘さにヨーグルトのさわやかさ、飲みごしがレモン果汁でさっぱりしている。何より冷たい。
冷たいのが正義である。
皆さま、熱中症には、お気を付けて。
 




