表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/55

25 俺のオクトーバー(ジャーマンポテト)

 台所の作業台の上には、じゃがいもの箱、巨峰に里芋、紅玉りんご、みかんにサンマ、鮭の切り身。

 The 秋! なラインナップにニヤニヤしてしまう。


 少し涼しくなって、スーパーに行くのが楽しくて仕方ない。

 生き帰りの歩きも快適だし、スーパーの中も楽しすぎる。


 入ってすぐの果物コーナーで、みかんとブドウを買うかどうか悩む。

 まだ緑がちなみかんの酸っぱくてさわやかなのも好きだし、巨峰も好きだ。男の一人暮らし、果物なんてっていう気持ちがよぎらないでもないが、見栄より食欲が勝つ。


 誰が見ているわけでもなし、食べたいもん食べよう。


 男の一人暮らし。

 どうにか正社員でやってきている。

 贅沢ではあるが、600円台の巨峰を買えないわけではない。

 むしろ、誰に迷惑をかけるわけでもない巨峰は、自分の機嫌を取るにふさわしい。


 そんなこんなの、結果が、現在の作業台を生み出している。


 幸せに浸らせてくれ。

 先週の連休が出張で、実質十二勤だった。

 秋の味覚を楽しむくらいの幸せあってもいいはずだ。


 この休み、誰にも邪魔されたくない。

 そっとスマホの電源を落とす。

 俺の休みは俺のためにだけある!!


 鼻息荒く、じゃがいもの皮を剥く。

 本日のメニューは、ジャーマンポテト with ビール。

 だって10月よ? オクトーバーよ?

 オクトーバーといえば、オクトバーフェストだよね。

 ビール飲まなくてどうする?(吞兵衛はいつだって呑む言い訳を持っている)


 ちなみに、本場ドイツにジャーマンポテトという名の料理はないそうで、よく似た料理にブラートカルトフェルンというのがあるらしい。

 舌噛むわ。



 贅沢な食べ物たちを見ながら、皮を剥いたジャガイモをくし型に切る。

 切ったそばから水にさらしておく。

 水にさらすのは、余分なデンプンを水に溶かして焦げ付きを減らす効果があるらしい。

 おふくろがやってたので、見様見真似でやっているだけで、検証したことはない。


 で、そのジャガイモをレンジで600Wで三分加熱。

 まだ芯が残っているが、そのくらいでいい。


 鉄パンに多めのオリーブオイルを入れ、ジャガイモを炒める。

 ウィンナーを入れて、さらにローズマリーも投入。

 ビール缶を傾ける。


 先にウィンナーを入れて、焦げ目がついたら取り出すっていうレシピもある。

 だが、俺は納得できない。

 ウィンナーを取り出したら、皿が汚れてしまう。

 その皿一枚を洗うのが面倒だ。


 おいしさの為に妥協はできないが、面倒くささは人並みにある。

 ウィンナーを取り出さねばならぬ理由は何か?

 ジャガイモを水にさらすのくらいの理由がなければ、皿一枚を犠牲にする気にはなれぬ。

 というわけで、今日もウィンナーを炒めすぎるくらい炒めることにする。

 カリカリのウィンナーってうまいでしょ?

 ビール缶を傾ける。


 で、残りは、ホリニシとローズマリーを入れて終わり。

 大変簡単。

 なのに、ビールに合う。

 最高!

 乾杯!


 さらに腹持ちもいい。

 Yeahh!!


 何なら、作りながら一本目は空けてますYO☆

 本日は眼鏡もかけていないので、曇りません!

 今、俺は、会社からも、眼鏡からも解き放たれている!!

 フリーーダァァム!!


 鉄パンごとこたつ机に移動する。

 片手にはビールのロング缶。


 かじりつけば、じゅわっと油と塩コショウのうま味が広がる。

 ホクホクのジャガイモ、カリカリのウィンナーの皮が弾ける。

 肉汁が口中に広がれば、脳汁が垂れる。


 喉を鳴らして、ビールを飲む。

 誰に気兼ねするでもない。

 こう見られたいとか、こんな自分でいたいとか見栄も虚勢もいらない。


 眼鏡を外す。

 ピンぼけの世界は、世間とズレている。

 でも、それでいいじゃない?


 ちょっと涼しくなったこと。

 とらわれずに、食べたい物を食べること。


 あぁ、幸せだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます

おいしい食べ物を通して、人と人の反応が生まれる瞬間――
そんな場面を書くのが好きです。
あなたの楽しみになるよう、更新していきます!


〇 あなたも中谷のつぶやきをみてみないか!?

 中谷のSNS
▶https://x.com/_MediumValley_

 小説になってない食べ物のつぶやきもあります



〇 更新情報はX(旧Twitter)にて

▶https://x.com/aiiro_kon_



〇 ご感想・一言メッセージをどうぞ

→ マシュマロ(匿名)
https://marshmallow-qa.com/ck8tstp673ef0e6



〇 新しい話の更新をお届け

こちら ↓ で、『お気に入りユーザ登録』お願いします。
(非公開設定でも大丈夫です)
▶▷▶ 藍色 紺のマイページ ◀◁◀




いいねや反応を伝えてもらえると、
新しい物語の活力になります☺️


本日もお読みいただき、ありがとうございました。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ