転生王女はマジックショーを目にする
ルドルフと愉快な話しては寝る生活を1年くらい繰り返してるうち、妾は2歳になった。
今日は、魔法を見せてもらう約束をルドルフから取ってきたのじゃが、場所が室外なのでマリアンヌはついて来れないのじゃ。
妾を抱っこするという大事なお仕事は、目の前にいるこの精強な男に任されるそうだ。
『姫様、自分は王室親衛隊ロイヤルナイトの隊長を務めるヒューズ・ラシツケネと申します。本日、陛下より姫様の護衛を命じられました。粉骨砕身して、全身全霊を持って姫様と陛下に忠義を尽くし、必ずや如何なる……』
お主、ヒューズと言ったのう。その体格は妾を抱っこするには相応しかろう。しかし、舌が少々長すぎるようじゃん。妾をいつまで待たせるつもりじゃん
『ヒューズ?はやく抱っこして~!』
『…身命を尽くして…、姫様?』
『は~や~く~』
『畏まりました。』
うむ。お主の抱っこは、マリアンヌとは一味違うようじゃのう。なぜ妾の体を横に翻しておる。これでは妾はお主の顔しか見えんじゃろうが。教えんと分からんやつかのう?お主は
『ヒューズ~かたぐるまして~』
『は、はぁい?姫様…肩車ですか?』
『は~や~く~!』
『はい…、姫様、これで宜しいでしょうか』
ふうむ。お主はなかなか見どころがある。良い肩しとるんではないか。妾がこれからこき使ってやらねばのう。
ヒューズの肩に乗って2時間ほど歩いたが。漸く辿り着いたようじゃのう。
ルドルフから聞いた話じゃが、この場所は、妾以外に王室親衛隊ロイヤルナイトと極少数にしか知らされておらんそうじゃ。
極秘というやつじゃのう。研究成果を守りたい気持ちは、妾もよく理解しとる。ここまで徹底するとは流石妾が見込んだ男じゃん。
しかし、その極少数とやらはもしや、目の前にいる、この『頭の真ん中だけ赤くない男』のことも含まれとるじゃろうか。
『姫様お初にお目に掛かります。儂は陛下より魔法技術局長を拝命しておりまするアレクサンドル・マゴメドフと申しまする。』
『あれくさ・・・?』
こやつの名はルドルフから聞いた覚えがあるようじゃ。確か大陸5本指に入る火魔法使いと言ったかのう。
『はい、姫様、アレクサンドルでございまする。本日は陛下より姫様に魔法の実演を披露するようにと命じられまして、御身の前へ参った次第でありまする。』
ほほ、ルドルフのやつ目、姿を見かけぬと思っておったが、最初からこやつにやらせる算段なんじゃろう。
『あか~いおじいちゃん。まほう、みせてくれるの?やった~、ありがと~!』
ルドルフのやつ何考えとるかは知らんが、ここは一度、大陸5本指に入るこやつの実力を見させてもらおうではないか。
『あか~いおじいちゃん。ま~だ~?』
『ひ、姫様、もう少々…もう少々お待ちいただけますれば…ゴホン、ゴホン…完成しまする』
妾はヒューズの膝に座って日が暮れるまで待っておったが、なかなか座り心地が良くてのう。妾の身長に合わせてよく膝を組んでおる。妾はこんな待たされても全く疲れんのう。
しかし、目の前で踊ってるこやつは一体何をしとる。ルドルフの奴め、もしや勘違いして大陸5本指に入るアホを妾に合わせておらんよのう。
『ひ、姫様、この老骨、御身のためとならば、骨が散らかっても誇れまする。今、一度ご覧に入れまする』
『頑張って~、おじいちゃん』
『ふぁ・・・火球魔術ファイアボール!!』
・・・・・・
ほほ、これが5本指の実力というやつじゃったか。実に見事じゃん。すぐ手前の木に焼き跡付けるとはなかなか微笑ましいのう。
前世の妾の弟子、クリスタの嬢ちゃんが3歳の時やらかしたこと思い出させるじゃないか。
クリスタの嬢ちゃんは木を焼き切るのに3秒も掛かっとらんがのう。
それに、この地面に散らかっとる『魔石』はなんじゃろう。使い方間違っとるわい!
『ひ…ゴホン…姫様、この老骨…ゴホン…の魔法、いかがしまするか?…もし、御身の目に適なわすれば、もう一度…ゴホン……ゴホン……ゴホン…、ご覧に入れまする。』
あとでルドルフの奴に、詰めてやらねばならんが、こやつは、こやつなりに頑張ったじゃろう。言葉くらい、労ってやらねばのう…
『わ~い。まほうすご~い!ありがとうね~おじいちゃん!』
『ひ・・姫様、この老骨、姫様に喜んで…ゴホン…いただけまするとは、最高に幸せでございまする!』
『もう、やすんでね?』
……
妾がヒューズに抱っこされて、宮殿に戻ったのはもう深夜になる頃じゃった。
ヒューズが眠ってた妾を抱えて、ゆっくり歩いてたからじゃろう。
して宮殿に入るや否や、声が聞こえたのじゃ
『姫様、夜遅くよくお帰りになりました。陛下は姫様とお話したいことがあるとおしゃって、姫様の部屋の中でお待ちなられています。』
おや、マリアンヌ、お主もまだ寝ておらんか。
しかし、ルドルフのやつ、妾に話したい事とは一体なんじゃろう。妾も話したいことがあるから、ちょうどいいじゃろうが。
『はぁい~マリアンヌ、マリアンヌ今夜一緒の布団で寝る?』
『ええ、姫様と陛下のお話が済んだら、お言葉に甘えて姫様をご堪能させていただきますね』
『やった~~~マリアンヌだい~すき』
『このマリアンヌも、姫様のことが~大好きでございます!』
さて、これでマリアンヌが妾のこと心配して夜更かしする心配がくなった。ルドルフのやつと話済ませてくるとしよう。ヒューズも早く解放してあげないとのう。妾を何時間も抱っこして疲れてるじゃろう。
ドアを開けると、ルドルフが目の前で立っておった。
座って待つこと知らんか?お主、ついにボケったかのう。
『ティーナよ、騙すような真似して済まなかった。この父を、どうか許しておくれ』
さて、騙すとは何のことじゃろう。妾に騙された記憶はおらんが…やはりルドルフ、お主ついにボケが来おったかのう。
『君が特別な子であること、儂がよく知っとる。じゃから、一度、君にこの世界の一般的な魔法を見てもらいたかったのじゃよ。』
ルドルフよ、妾の顔見て話さんかい。王様が、妾のような幼女などに顔下げてどうする。
『ルドルフ、ティーナのほうに、おかおむけて~』
ああ、どうしてお主、いつもこんな悲しい顔しておるじゃろう。妾には理解が届かぬぞ。
『ティーナよ。君は知らないかもしれないが。世界は、遥か昔から魔法を忘れとった。』
『まほうを…、忘れた?』
『蒸気機関とやら、電気とやら、列強諸国はその研究がよく進んどる。魔法なぞ、最初から誰も気にしとらんよ』
ルドルフの目つきが急に鋭くなっとるが、何かを見つけてるかのように言い放った
『儂と君のような存在は、この世では異類しかない!しかし、儂は信ずる。誰しもが魔法の力を
手に入れる世界こそが、真に誰しも幸せを感じ、笑える世界じゃと』
気付いたら、ルドルフが妾に手を伸ばしとる。この世界で手を伸ばす意味はよく知っとらんが、きっと、どこの世界も手を伸してくるやつの考えは変わらんじゃろ。
『どうか一度や二度でいい、君の力を、この儂に貸して欲しい!」
よかろう。その手握ってやろうではないか。お主の言ってることよう分からんが、魔法の発展はいいことじゃぞ。
しかし、誰しもが魔法の力を手に入れる世界とはのう。なかなかお主、良い点に気付くではない。
魔石に適切な魔導式による魔力変換方式を固定しときゃ、誰しも簡単に使えるじゃろう。
なぁに、固定方法はそう難しいことじゃない。まず、今日あやつに見せてもらった火球魔術ファイアボールから改良してやろうかのう。楽しみにしていいぞ、ルドルフよ。
ああ、そうじゃん。返事忘れとったな。
『いいよ~ルドルフ、ティーナ~いっしょにがんばるよ~』
『すまぬ。ティーナ、これからよろしく頼む。こんな夜遅く突き合わせて悪かった。君がこれから休むこと、儂からマリアンヌに伝えておこう。』
ルドルフ、お主やはり、妾といっしょに魔導の深淵を覗くに相応しいやつじゃったのう。




