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転生と少女と魔法技術と戦争  作者: 紫と雪と狐
ファイアボール
10/12

唄姫(2)

『この講義を始める前に、諸君らに一つ聞こう』


午後の1限目は、『連邦の歴史と構造』という名前の授業で、担当のマクシミリアン講師は自己紹介終えたあと、すぐ爆弾のような質問を投げてくるのでした。


『諸君らが知っての通り、我が帝国は植民国家だ。今まで、数多な植民地において、無実な現地人の命と尊厳を奪った。本来、そんな我々に自国の領土を守る資格などない。』


マクシミリアン講師は、一度水を飲んで話を続けます。



『弱肉強食という言葉はよく使われる。ならばなぜ、今弱者たる我々が強者の支配をそのまま受け入れない。どうせ負けるのであれば、なぜ我々は無駄な抵抗を続ける?!』



マクシミリアン講師の質問が投げられたとたん、教師は呼吸音すら聞こえるほど静かになりました。


みんなきっと色々思うところがあるでしょう。帝国は絶対正義でも善良な国とも言えないから、とても難しい質問ですよね。


自分が新兵教育受けた時の話ですが、一緒に訓練するすぐ隣の小隊に、自分よりも多分1~2歳年下で、植民地から徴兵されてきた男の子がいました。


その子が訓練中に、教官によく分からない植民地の言語で叫びながら、突っ込んでいくところを見ました。


教官は突っ込んできたその子のお腹に何発かパンチを入れると、その子は地面にうつ伏せます。

しかし、また立ち直って教官に突っ込みます。何度でも、顔がボコボコになっても、血反吐が出ても、気絶するまで繰り返しました。


その子のこと思い出すと、少しマクシミリアン講師の話が理解できます。


しかし、普通に考えると、侵略に抵抗しないわけにもいきませんので、この質問の意図は一体どこにあるでしょう……


質問から、10分ほど経ちましたが、教室の中は静かなままでした。



『さて、少々質問の内容を変えよう。まずは、この曲をよく聞いて欲しい。』



マクシミリアン講師は、自分の足元から箱のようなものを机の上に持ち出します。自分が昔尋問を受けた時に見たことあるものですが。声を収録できる機械で名前はよく分かりません。


その鉄の箱から、連邦の曲が流れてきます。連邦の単語はよく分かりませんが、このリズム…戦歌か何かでしょうか。


しかし、曲が流れ終わっても、場の静けさはそのままでした。


『今諸君らが聞いた曲は、連邦の子供なら誰もが歌わされる曲だ。儂が知る限り、連邦では例え貧困で飢え死にそうな村の子供であっても、この曲のことだけは必ず知ってる。』


マクシミリアン講師の話がもし本当でしたら、連邦の子供たちは何だか可哀想だと思います。ユーリくんも、子供の時からこんな曲を聞いて育ったのかな…


ユーリくんは今、何しているでしょうか。自分はあの変な男に解放してもらえたのはいいですけど、彼に何か悪いことが及ぼすならちょっと嫌ですよね。


そういえば、ユーリくんってどんな顔でしたっけ。


自分は軽く目を閉じて、頭の中で、ユーリくんの姿を思い描くのでした。うん…たしかこんな可愛くてちっちゃい顔だったはず…


『そこの目を閉じてる君、ちょっと立て!』


ええ…目を閉じてる…自分のことなんでしょうか。


ふっと思ったら目を開けると、マクシミリアン講師の指が真っ直ぐ自分を指していました。


はい…立ちますよ。



『君が知ってる童謡、なんでも良い。ちょっと唄ってくれ』



童謡…?ああ、一番最初の孤児院にいた時、院長先生がなんか唄を教えてくれましたよね。



あれでいいですよね



『はい!今からでしょうか?』

『うむ。今この場で唄ってくれ!』

『では、失礼いたします。

ん~

 小鳥は飛んだ~ 空まで飛んだ~ 青い空~ 青い花~

 小鳥は飛んだ~ 海まで飛んだ~ 青い海~ 青い花~

……



自分が6歳の時、院長先生とみんなで輪になって手繋いで、この歌を唄っていたことを今でも忘れられません。


また、あの頃に、戻れたらいいのに~



『……

小鳥は飛んだ~ 海の向こうへ~ 青い海~ 青い花~


以上となります。ご満足して頂けたでしょうか。』



教室の鎮まり具合は、相変わらずですね。



『パチーッ』



と思ったら、誰かが手を叩く音がしました。



『パチーッパチパチパチパチーッ』

『もう良い!静かに!』



急に教室に響く拍手の音をマクシミリアン講師が大声で止めます。



『諸君らのセンスが良いことは嬉しく思う。諸君らも知ってると思うが、この曲は『小鳥と青い花』という帝国昔からの童謡だ。儂が子供の頃もよく母と一緒に唄った曲だ。さっき聞かせた連邦の曲と比べて、諸君らは自分の子供にどの曲を歌わせたいかよく考えながら、この授業を聞きなさい。』


話終わると、マクシミリアン講師の目線が自分のほうに向けました。



『もう座って良い、これから講義を始める。まずは配った資料の1ページ目…

……』








『あれは一体何が起きたでしょうか。』



全部の授業を終えた後、夕方に校舎の後ろで偶然トーマスくん見かけたので、授業での出来事について相談しました。



『アンナちゃんは忠告を守らなかったようだね。あれは最近、毎年やってるよ。因みに去年は俺だからさ』

『トーマスくんはどんな唄を…?』

『俺は童謡なんて覚えてないよ。子供の頃かーちゃんに寝る前に唄ってもらった『眠りに付こう我が子』を唄ったら、その後こっそりあだ名まで先輩に付けられたよな』

『あだ名ってなんて呼ばれましたか?』

『まあ、別に内緒じゃないから教えてもいいけどさ…いや、やっぱりやめとくわ。女子供には失礼だから言えねーよな』



何なのかすごい気になりますよね。



『ちなみに、今日唄わされた子のあだ名、俺もう聞いたぜ』

『それは自分のことでしょうか。なんていうあだ名ですか』

『わりぃ。それも内緒だ!』

『……』


トーマスくんは本当に意地悪いようですね。


教えたくないから最初から何も言わなきゃいいのに!


一体なんて呼ばれているか気になるじゃないですか!?




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