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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その62 鬼追い・新ニホン節分

作者: 天城冴

前政権の長年の滅茶苦茶な政策のせいで、ついに事実上の占領下となったニホン国では、2月に”鬼追い”という行事が行われるようになった。その鬼とは…

古びた壁に貼られた、味気ないカレンダーの前に一人の青年が立ち止まった。

「も、もう、2月になってしまったのか。ぼ、僕にはスマホの支給も許可されないし、寮の部屋には装飾も認められていないから、わからなかった。ああ、今の境遇でさえ、耐えられないのに。あ、あれがくるなんて」

カレンダーをみたチンタロウは青ざめた。

「去年はガースさんとアトウダさんの派閥が主にやられたんだ、だった。こ、今年はどこの派閥だ…。もしや」

呆然とするチンタロウ。

その後ろで二人の青年が立ち話を始めた。

“2月か。今年も節分の季節が来たな”

“昔の豆をまく真似事と違って、本格的に鬼を追い払うんだから、楽しみだよ”

“まあ、ロクな娯楽がないからな、カラオケとか、そもそもなくなってるし。食いものとか前と比べて酷いもんだし。スマホで見れるものも制限されてるし”

“だからこそ、鬼追いをやるのが、楽しみなんだ。ニホンをこんなにした極悪鬼どもを追い払うのがな”

“今年はあれだよな、キジダダの連中が鬼か”

“ああ、3年目だし、そうだろう。中国放送ニホン占領テレビのアナウンサーもそういってたしな”

“あいつらか、大元のキジダダはもういないが、残ってる奴らを狩りだすんだろう。行方不明だったっていうあのドラ息子が見つかったんじゃないか?”

“そうか、アイツか。今年も参加申し込みして良かった”

“お前、やっぱり参加するのか、俺もだけど2

“もちろん参加するさ。俺らがこんなになってんのはあいつらのせいだぞ、今のニホンの現状をみろよ”

“まあ、生き残って食えるだけマシ、とはいうけどな。食事も娯楽も全管理、仕事後は地球市民になるための再教育、もうクタクタだ。社畜よりマシとはいえ、漫画読むのにさえ、許可がいるんだ”

“俺は占領前から酷かったからな。それだって、全部あいつらのせいだ、ホントに思い知らせてやりたいと思うしな”

二人の会話にチンタロウは震えあがった。

「りょ、寮から逃げるか。いや、まだ僕のことはバレてい

ない、そ、それにそんなに目立っていないはず」

ブツブツいいながら、チンタロウは足早に立ち去った。


2月3日早朝

ドンドン!ドンドン!

激しい音でチンタロウは目が覚めた。

“おい!開けろ!今年の鬼はお前たちキジダダ一族だ!”

“この世襲ジコウ野郎、でてこい!ニホンをダメにした報いを受けさせてやる!”

“お前が税金で遊びまくってたことはわかってんだ!お前も仮病使って逃げ回りやがったアマリリのように皮をひん剥いて海に投げ込んでやる!”

“てめえのオヤジのせいで、ニホンは各国から攻められたんだぞ!わかってんのか!俺らが寒さと値上げで死にそーになってんのに、馬鹿みたいにミサイルとか買いやがって!そのせいでニホンは危険国扱いで中国にイチャモンつけられたんだぞ!”

“アメリカに尻尾降りやがって、それなのに、いざ中国から文句付けらたら、真っ先に着られたんだからな!大笑いだぜ”

“そのせいでニホン国は占領されて、最低生活だ、てめーらジコウ党のアホのせいだ!この極悪鬼め、ニホンからもこの世からも追い出してやる!”

“そうだ、出てこい!オヤジが官邸で、たたき殺されてるのに、一人逃げ出した卑怯者め!”

ドア越しに聞こえてくる怒声にチンタロウは布団をかぶったまま、ガタガタと震えていた。

「ど、どうしてバレたんだ、なけなしの金で戸籍まで買ったのに」

その声が聞こえたのか聞こえていないのか、ドアの向こうから

“テメーについてたフジサンサンケイのバカ記者がばらしたんだよ、あのいかにもエリートって澄ました女が髪振り乱して命乞いしてたぜ”

“マスコミの奴らもお前らと同罪だからな。INUHKの奴らが最初だったが、今年はフジサンサンケイの関係者も血祭りにあげてやったぜ。それを知った番記者だったあの女がお前の正体をばらす代わりに助けてほしいと現政府に訴えたんだよ”

“ま、助けるといってもフクイチの原発作業送りだけどな、それだって、暴行されて、ずたずたにされて、殴り殺されるよりマシかもな、議員だったマルガワ・ダマヨだの、パクリイラストレーターのハズミだの、似非学者ヨツウラ・ハリだの、アベノノ取り巻きのアホ女みたいに”

“ニホンを滅茶苦茶にしやがったんだから、それぐらいの刑をうけて当然だ、それにこれは現政権公認の行事だしな”

“そうだ、そうだ、ニホンの新しい伝統行事だぜ、ニホンをダメにしたジコウやマスコミ、御用学者や太鼓持ち芸人どもを追い出すってのはな”

と、言いながら男たちがドアを蹴破った。

どかどかと大勢が部屋に入り、チンタロウの布団の周りを取り囲む。

「ひいいいい!」

チンタロウは被っていた掛け布団をはがされ、床に転がされた。

“さあ、鬼追いの始まりだ!”

バットや棒を手に持った男たちが舌なめずりをしてチンタロウを見下ろしていた。

チンタロウの涙交じりの目に最後に写ったのは、恐ろしい形相の人々と、その後ろにぼんやりと浮かび上がる血まみれで顔が歪んだ父やなじみの政治家たちがおいでおいでと手招きする姿だった。



どこぞの国の国民は普段は大人しく、規則に従うようですが、いったんタガを外し、やっていいよとなると、とんでもなく残虐になるようですね。いったん、攻撃していいんだーとなると歯止めが効かないハトの殺し合いもさながら、なかなか恐ろしいことをやっちゃうみたいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の終わり方が怖すぎる ハラハラしますね
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