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プロローグ

 普段は黒い物書きなんですが、今回は普通にラブコメ(?)目指してました。プロット立てる間に、無理な事はとっとと諦めようと思ったのは秘密です。


 リレー小説で素敵な世界観を創って下さった先生方、一緒に冒険して下さった先生方、いつも遅筆な私を励まして下さる周りの方々に捧ぐ。

 私の事を一番理解しているのはウィンクルムで。

 ウィンクルムの事を一番理解しているのは私。

 ―――― そう思っていた、あの日までは。





 麦畑を渡る風は優しく幼子達の頬を撫でる。まだ収穫には遠い青々とした麦穂の海原は風を受け、反射する光の波をよせては返す。

「サリュ、どこ? どこにいるの?」

「ウィン、ここだよ~」

 ぴょこんと跳ねた女の子の頭が、また麦穂の海に沈む。

 一瞬だけ見えた彼女は蒼みがかった銀の髪、琥珀の瞳、白磁の肌だった。そして右目を縁取る黒揚羽蝶(くろあげはちょう)鱗翅(りんし)を象った刺青(いれずみ)

「どこなの?」

 サリュと呼ばれた女の子と、とてもよく似た男の子が麦畑の海から顔を出し、また沈む。彼の左目を象るのは対となる黒蝶(こくちょう)片翅(かたはね)の刺青だった。

「ここだよ」

 麦穂かきわけ、男の子の袖を掴む女の子。頬笑み合い、(たわむ)れにまた離れてはお互いを探す。

 女の子の名はサリューナ・グルカ、男の子の名はウィンクルム・グルカ。酷似した容姿を持つ彼らは同じ日に生まれた双子であった。

 良く飽きもせずにそうやって遊ぶものだと、畑の手入れをしていた両親は双子を見て笑う。

 双子の両親もお互い良く似た容姿をしている。蒼銀(そうぎん)の髪に、琥珀色(こはくいろ)の瞳、白磁(はくじ)の肌。父の右目を縁取るのは鳥の片翼の刺青、対となる翼が母の左目を縁取る。彼ら一家の姿は妖精のように美しく、不思議な色彩を帯びていた。

「父さん、母さん、お腹すいたー」

「私も!」

 口ぐちに叫ぶ幼子達(おさなごたち)を見つめ、父カスティーガーと母アルマは微笑んだ。


 水妖国(すいようこく)――豊富な水源と美しい自然に囲まれた、音楽・絵画等の芸術が盛んな国――グルカ族の村はそんな国の湖の畔にあった。

 彼らの村は人口七十人にも満たない小さなもので、皆がグルカ性を名乗り、大家族のような集落を形成している。

 武芸に秀で勇猛を誇る戦闘系民族である彼らは、穏やかな水妖国の中では少し異質な存在といえよう。

 平和な国とはいえ、害獣(がいじゅう)の猛威は容赦無くその牙と爪で人民を蹂躙する。近隣の街、村を襲う害獣達の群れから人々を守る――彼らの刃はそのために、ひたすらそれだけのために振るわれた。

 遠い昔、滅びた水妖(すいよう)と彼を愛した娘との間に生まれたとされる彼らは不思議な能力を持つ。

 その血を引く何人かは必ず男女の二卵性双生児で産まれ、片方がその護り手、片方がその遣い手となるのだ。

 遣い手は類稀(たぐいまれ)なる戦闘能力を持ち、護り手は遣い手の武器と盾に変身する事でお互いを助け合う。

 そしてその“印”は外観に蒼銀の髪、琥珀色の瞳、対となる刺青に似た痣を刻む。


 沈んでいく夕陽に辺りの景色は朱に染められていく。

 農具を担ぎ、歩む父母を拙い足取りで追う双子の兄妹。

「僕ね、父さんと母さんみたいに大きくなったらサリュと結婚する!」

「私もウィンと結婚するー」

 結びつきの深い護り手と遣い手は、お互いを終生の相手に選ぶ事が多い。

 双子の両親もまた双子であり、助け合い共に戦う事で結びつきを深めてきた。

 比翼連理――幼子達もそうなりたいと思っていた――これは遠い日々の記憶。


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