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石の勇者と常闇の竜  作者: ドラゴンさん
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3.呪いの代償

 馬車に乗せてもらうことができたルインは、荷台の中で静かに座っていた。野菜や果物、衣類や武具、様々な品物がある。馬車の車輪が獣道の小石をはじく度、それらが小刻みに揺れた。


 「ルインさん?もうすぐ日が暮れるので今日はここらで野宿にしましょう!」


 リスのリッチが御者席から少し大きめの声で話しかけてきた。確かに明かりの少ない夜道を進むのは危険だろう。それに馬もしっかりと休ませる必要がある。断る理由はなかった。


 「わかっ……!?」

 「ん?どうかしましたか?」


 返事が出来ない。理由は分からないが声が全く出なかった。それどころか体も全く動かなくなっている。馬車が止まり荷台の中をリッチが覗き込んできた。外はすっかり日が落ちて夜になっているのが見えた。


 「あわわわ、ルインさんが石像になってる!?」


 リッチの一言でルインの中にある一つの仮設が立った。この現象は恐らく()()()()()()()()。千年前、常闇の竜と戦った時に使った呪いの反動だろう。


 【石化の禁呪】

 対象と術者本人を瞬時に石化させる呪いを放つ土魔法の一種。非常に危険で使用は禁忌とされている。歴史上使用者も少ないため情報が少なく、呪いを解くのは難しい。


 完全に石化し身動き一つ取れない状態だが、意識ははっきりとしていた。そこで、ルインは精神を集中し肉体から魂を切り離し幽体離脱をした。これも英雄ならではのスゴ技なのだろう。

 慌てているリッチに声をかけてみたが、聞こえるはずもなかった。いつ石化が解けるのか、それとも一生解けずに浮遊霊か。頭を悩ませていたその時、ルインの目にある物が留まった。


 「人……?いや、人形か」


 沢山の木箱の山に囲まれているショーケース。中には本物の人間そっくりな少女の等身大の人形が置かれていた。ルインはショーケースの前に立ち人形を観察した。綺麗な黒い髪、雪のように白い肌、どこから見ても本物の人間が眠っているようにしか見えない。

 ここでルインは閃いた。この人形を仮の体として使うことができないだろうか。見た目が少女という事もあり、多少躊躇いはあったが相手は無機物。思い切って人形に飛び込んでみた。

 人形とルインの魂が触れたその瞬間、意識が途切れた。目を覚ますとショーケースの中にいた。手のひらをゆっくりと開き、そして閉じる。「こいつ……動くぞ!」と思わず呟いてしまうほど思惑通りだった。こうしてルインは体を手に入れた。

 後はショーケースから出るだけだが、ここで問題が発生した。ケースの外にある木箱がつっかえて扉が開かない。押しても引いてもピクリとも動かない。元の肉体なら力押しで開けることも可能だったが、今のルインはただの少女。竜と戦った英雄の鍛えられた肉体と比べるのも酷な話だが、ルインにはとても頼りなく感じた。


 「リッチ……また迷惑かける」


 魔法を使うのは品物が傷つくので使うのは避けたかったが、やむを得ず土魔法でショーケースを破壊した。ガラスが割れ、木箱が吹き飛ぶ。

 その音を聞いてリッチが慌ててやって来た。散乱する品物の数々。そして動き出した人形、もといルインの姿を見たリッチはあまりのショックに泡を吹いて気を失ってしまった。それから少し時間が経ち、目を覚ましたリッチに事情を全て話した。


 「ふむふむ……なるほど、事情は分かりました。ですがこれは酷すぎます」

 「本当にすまない……俺はどうすればいい?」


 リッチは少し悩んで、それから手で相槌を打った。


 「そうですねぇ、私が人間に戻るのに必要なミューズの杖を手に入れるのを手伝って下さい」


 【ミューズの杖】

 どんな呪いも解くことが出来るとされる神具。いつ、どこで、誰が作ったのかは一切語られていない。所在不明の超貴重品で、その価値は杖1本で城が買える。


 耳を疑った「()()()()()」なんとリッチは人間だった。旅の道中で手に入れた呪いの指輪を、呪われていると知らずに装備してしまいリスの姿に変えられていたのだった。

 様々な解呪を試したが効果が無く、途方に暮れていた所に偶然杖の情報を耳にしたという。


 「杖の在りかは現在、エルタニア王国の城にあると聞きました」

 「その情報は確かなのか……?」

 「いいえ、でも本当なら使わせてもらえるかも」


 王国まで彼を護衛する、それがリッチの願いだった。本来の力が使えないが、魔法である程度は戦える。ルインは世話になった分しっかりと働くことにした。

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