表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【受賞】10円魔力の駄菓子ごはん~錬金術じゃなくてただの料理です~  作者: 富士とまと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/165

小さな騎士

「ごめん。リツ兄ちゃん……」

 深く頭を下げたミック君が頭を上げると、ミック君の目には涙が浮かんでいて、顔がぐしゃぐしゃに歪んでいる。

「おいら、おいら……リツ兄ちゃんと友達になりたいけど……おいらリツ兄ちゃんに迷惑をかけたくないんだ」

「め、迷惑じゃないよ。ミック君は美味しい井戸の冷たい水も出してくれるし、玉ねぎも出してくれたでしょう?ああ、こんなこと言うと、私の方こそミック君にいろいろ出してもらいたい……利用したいから友達になりたいって言ってるみたいになっちゃうけれど、そうじゃなくて……何も出してくれなくたって、私はミック君のことが大好きになったし、粉ジュースを見て空の色みたいで綺麗だって言ったミック君がとても素敵だと思って……」

 必死に言葉を探しているのは、もしかしてミック君のようないい子を少しでも疑った自分が許されたいからかもしれないと思うと、さらに自分がみじめで卑怯な人間に思えてきます。でも、言わなくちゃいけないんです。

「夜明け前の空の色、夕焼けの空の色……いろいろな空の色を綺麗だって思うミック君の……」

 感性。美しいものを美しいと感じられることって素晴らしいことで。人に疑われてミック君の良さがもし失われてしまったら……私のせい。自分が許せない。

「あ……ああ。ああ……」

 ミック君がボロボロと涙を落とします。

「おいら……そんなこと言われたの初めてだ……。お空がきれいだねなんて言ったってもう、誰にも言葉が通じないのかと思ってた。死んだ母ちゃんだけが、本当だ綺麗だねって言ってくれた。教会に行ってからは空を見てると何ぼーっとしてるんだって言われるから……言われるから……」

 ミック君を思わず抱きしめていた。

 しっかりしているからって言ったって、まだ子供だ。親を亡くして一人で必死に生きてきて、今は教会で保護されていて……。

 でも、ずっとずっと寂しくて泣きたくて辛かったんだろうって思ったら。

 私は大人で、でも一人で異世界に放り出されて……寂しくて泣きたくて辛くて……我慢して。子供だったらきっともっとつらくて……。

「ミック君……」

「リツ兄ちゃん、おいら……うぐっ、おいら……」

 ミック君が声を殺して泣き始めました。

 思い切り声を上げて泣いたっていいんだよと。ぎゅっと抱きしめるミック君の背中をトントンとたたきます

 ああ、これは、私がミック君を抱きしめたいのではなくて、私がこうしてほしいことをミック君にしてあげてるんですね。

 大人になるってきっとこういうことだ……とふと思いました。

 自分がしてほしいことを、誰かにしてあげる……そうすることで、自分も満たされていくんですね……。

 きっと……。

 私はミック君を抱きしめて慰めているようで、実は自分自身の心を抱きしめて慰めているのですね……。

「うん、うん」

「おいら……」

 人にやさしくできる大人は、きっと自分自身も大切にできる人なのでしょう……。

 大人になると、誰かに求めるばかりでは満たされない……のではないでしょうか。……なんて、不思議と異世界に来て気が付くなんて不思議ですね……。

「リツ兄ちゃんの味方する……」

 はい?

「おいら、リツ兄ちゃんを守る……おいらはリツ兄ちゃんの味方だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 抱きしめられたら男性と女性の体の固さに気がつきそうなものですが、気付かないところがまだ子供なんだなあってちょっとホッコリしています。
[良い点] リツさんの感性と優しさ。 リックくんの感性と素直さ。 [一言] リツさんの 「自分のして欲しいことをしてあげられるのが大人」 のセリフにハッとしました。 改めて辛い時に他人に優しく出来る人…
[一言] ミッ君「リ、リツ兄(あん)ちゃん!」 ←敢えて「にい」と読まない ……リ、リツアンちゃん、リリツアンちゃん、リリッアンちゃん、リリアンちゃん!? リリアン(璃々亜ン)かわら版(汗) (氷室…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ