街へもどってきました
「えーっと、肉の種類はちょっと分からないんだけど……」
何の動物のどういう部位の肉なんだろう。
「この調理法が燻製っていって、燻製という調理法で作った肉だから、燻製肉って言うの」
ミック君が簡易的に煙をこもらせて燻製を作った場所に視線を向けました。
「ああ、なるほど!煙、臭いもんな。だからくっせー肉か!」
ち、違います、あの、また、くっせー肉に戻りましたね……。
「すごいよリツ兄ちゃん。くっせーのにうんめーんだもんな!さすが泥団子の兄ちゃんだ。不思議だけどうまいの天才だな!」
……えーっと。料理を伝えるのは難しいですね。それとも私が伝えるのが下手すぎるんでしょうか……。
火の始末をして、燻製肉はフライパンの中に入れてふたをして持ち運びます。
「これからどうするんだ?リツ兄ちゃん」
「えーっと……街に戻ろうかと思うんですが……」
「街に住んでるのか?」
「いえ」
「街に住むのか?」
「えーっと、何も考えてなくて……」
街に住むなら仕事と住む場所を確保しないといけません。私にできる仕事が見つかるかどうかですね。
「とりあえずは……街に戻って仕事を探さないと。お金がないので今日寝るところもどうするか……」
二人で並んで歩きながら会話をする。ついつい、子供のミック君に不安を口にしてしまいました。
「なに?お金が欲しいのか?」
首を傾げるミック君。
欲しいというか。野宿しなくていい環境で寝たいんですが……。
そうだ、グレイルさんがギルドに行けと、ギルドなら保護してくれるだろうって言ってましたし。
別にお金がなくてももしかしたら大丈夫かもしれません。
「だ、大丈夫だから、多分、あの、街に行けば、えっと……」
たぶん。
グレイルさんが嘘をつくとは思いません。もし話を聞いてくれなかったら指輪を見せろとも言われましたし。きっと何とかなるはずです。
「リツ兄ちゃん、お金稼ぎたいならおいらに任せてくれよ!」
は?
孤児で教会のお手伝いをして食べているミック君にお金のことは任せろ?
いやいや、任せられないですよ。そんなの……!
「くっせー肉貰っていい?」
え?
「それ売ってきてやるよ。そうすりゃお金なんてすぐだよ」
ああ、なるほど。
フライパンのふたを開けて燻製肉を見る。
グレイルさんが出してくれた肉2枚分。しっかりしたサイズのステーキ肉2枚分を薄切りにして作った燻製肉。
最低でも親指の爪サイズの肉魔石2個分の価値はあるはずです。いくらくらいになるのだろう。宿に泊まれるだけのお金になるのかな?
街に入ってすぐの場所にちょっとした広場があります。街に入ってきたばかりの人が休憩できるように座る場所も用意されています。
「じゃぁ、ここでリツ兄ちゃん待っててくれよ。すぐに売ってくるから!」
ミック君に燻製肉入りのフライパンを渡しました。
「絶対ここで待っててくれよ!」
ミック君が手を振ってフライパンを持って立ち去りました。
……あれ?売ってきてやる?
よく考えたらこのちょっとした広場にもそこそこの人がいます。ここで、肉を売ったらよかったのでは?
露天商もいくつか見えますし。立ち食いしている人もいます。
くっせー肉はいらんかねぇとか言わないよね……ミック君、頼むよ




