魔法のアイテム
すーはー。落ち着こう。グレイルさんが悪いわけじゃないんです。
「あっ、ごめん、その、子供扱い……」
ほらね。
ほーらね。
ほらね。
子供に対するかわいいですからね?
「すまん……だが、リツ、女だってことは他の奴には黙っていろ。少年だと思われていた方が安全だ」
と、私が心の中で嵐を起こしている間に、グレイルさんは真面目な顔をして忠告する。
えーっと、ああ、まぁ、そうなんですかね?普通はそうですよね。
女性を襲う人間は容姿など関係ないって言いますもんね……。女であればいいって。うう、怖い怖い。比較的安全だと言われている日本でも女というだけで痴漢やセクハラいろいろと辛い目に合うんです。この世界では……何が起きるか。
「わかりました!」
「知らないやつにはついていくな!食べ物をくれるからって信用するな!困ったら、ギルドに行け!俺の名前を出せば総ギルド長が話を聞いてくれるはずだ……」
グレイルさんが何かを思い出したかのように、手元に視線を落とし、手をすり合わせる?何か動作をしてから、魔石の入った袋を取り出し、何かを入れて口をしめた。
「ちょっと試してくれ」
ひゅんっと随分距離があるのに袋をちょうど私の手元のあたりに落ちるようにグレイルさんが投げました。
キャッチ。
ずしっ。重たい。
「試すって?」
「中に指輪を入れたんだが、リツの手にはまるか試してくれないか?」
指輪?はまる?試す?……さっき手をすり合わせるような動作は指輪をはずしていたのですね。試すもなにも……グレイルさんの指にはまっていた指輪なら、私の指にははまるでしょう。……いえ、サイズが合うかという意味ならがばがばでサイズは合わないでしょうね……。
とは、思ったものの試してほしいと言われたので、おとなしく巾着袋の口を開けて、魔石の間に顔を見せている銀色の指輪を手に取る。
ロックな感じな人がつけるようなごっつい指輪ではなくエンゲージリングのような繊細な指輪だ。5ミリもない太さにびっしりと美しい模様……いえ、文字でしょうか?彫り込まれています。そして米粒魔石ほどの大きさの青い透き通った宝石が一つついています。
うわー、綺麗。
大きさはやっぱり大きいようなので、一番太い左手の親指にはめてみました。
うん、それでもまだ緩いです。手を振ったらスポーンと抜けそうな……。
「ひゃぁー!」
突然指輪がきゅっと縮んで私の指のサイズにぴったりになりました。
「え?魔法?魔法の指輪?」
待って、でも、こんなにぴったりだと……抜こうと思っても……。
「グレイルさん、抜けません、これ、どうしたらいいんですかーっ」
グレイルさんが私の言葉を聞いて、右耳に手を持って行きました。……何?聞こえない?っていうジェスチャーでしょうか。……ちょっとグレイルさんのところまで走って言って話をしようと足を動かそうとしたところで、指輪から声が聞こえてきました。
「リツ……そう……か。リツは指輪が使えるんだな」
「う、うわっ。グレイルさん、この指輪、指輪で話ができるんですか?魔法の指輪ですか?」
魔石とか召喚魔法とかあるんだから、通話できる指輪があっても不思議ではないですよね。
魔法のある世界。
もちろん、あの魔法もありますが、中途半端なあの魔法が……




