無自覚タラシにものもうす!
「グレイルさん、甘えていいですか、甘えさせてください、あの、お肉を、もっとたくさんくださいっ。ちゃんと生焼けでは食べないと約束しますし、えっと、大事に取っておくこともしません。あの、その」
加工して日持ちするようにしますって言って分かるのかなと思って口をつぐみます。料理の意味は分かるみたいですが、料理と何が違うのかと言われると、保存食がないなら説明しにくいですよね。
「甘えてくれるのか」
にこっと嬉しそうにグレイルさんは笑って、フライパンに肉をあと2つ出してくれました。
「早めに焼くんだぞ?焼けば2~3日は大丈夫だろう。それ以上は腐るから渡せない」
ステーキ3枚分の肉がフライパンの中にあります。……うん、実験的に作るには十分です。
……せっかく作っても、やっぱり獣臭くて食べられないとかだと無駄になっちゃいます。
「はい、十分です。ありがとうございます」
丁寧にお礼を言うと、グレイルさんが私の頭をなでました。
「また、今度出してやるから。必要な時に必要な分を出してやる。3日分出したから、次は4日後にまた出しに来てやるからな」
は?
「じゃあな。仕事があるから帰るよ」
グレイルさんが手を振って歩き始めた。
ちょっと待ってください、仕事があるのに、わざわざ来てくれて……4日後にもまた来てくれる?
仕事の負担なんじゃないでしょうか?そこまで甘えるつもりはありません。
「グレイルさん、あの、大丈夫ですから、私、何とか一人でやっていきますからっ!」
グレイルさんが振り返った。
泣きそうな顔をしている。
え?私がそんな顔をさせちゃったの?
「俺は、いらないか?俺の顔は見たくないか?」
どきっ。
まるで恋人に捨てられるみたいなセリフって思った瞬間大赤面。違うのは分かっているんですよ。私が何でも漫画的変換を瞬時に脳内でしちゃうんです。
「私、グレイルさんの顔好きです。見たくないなんて思わないです。でも、お仕事の邪魔になってしまいたくないので……あの、時々で……肉もそんなに頻繁に食べたいわけでもないので、迷惑にならないくらいで……」
グレイルさんが遠目でも顔を赤くしたのが分かった。
「俺の、顔が好き?」
あわわ。私、そんなこと、言いましたね!つい、言っちゃいましたね!
「私の住んでいたところでは髭の人の方が少なかったので、髭に囲まれると落ち着かないんですっ」
照れ隠しに思わず叫んでしまいました。しまった!コンプレックスを刺激してしまっただろうか……。
グレイルさんのはにこりと笑っていた。
「あはは、俺の顔も役に立つんだな」
それから、なんてこともないように、また無自覚タラシが爆弾発言をしました。
「俺もリツのかわいい顔好きだよ」
……う、わぁー!ダブルですよ、かわいいとか言うなんて!
好きとか無理無理、もう、勘違いするなって言う方が無理でしょう。
いえ、しないですけど。
知っています。漫画ではありがちなのですよ。何の深い意味もなく口走っちゃうキャラクター。その一つずつの言葉に振り回される……主人公……いいえ、モブというか、こじらせて事件を起こす悪役みたいなの。いるんですよ。
ストーカーになったり、主人公に敵対したり……ヒーローは「そんなつもりはなかった、妹として見ていただけで」みたいなね。
無自覚タラシは罪の意識もないのよ。人の人生くるわせておいて……。
どうも。いつもご覧いただきありがとうございます……。
(._.)残念加速中




