教会の役割?
「もし、すべての人間に、祝福だと言って服を無料で与えるにはどれくらいのお金がかかるのでしょう?」
たとえ話として相応しいかわかりませんが、料理に関する常識がないのならと服に変えて尋ねてみました。グレイルさんが静かに口を開きます。
「とんでもない予算がいるな……」
ですよね。ズボン1本が金貨何枚の世界ですし……。
「教会が金、金、金とお金が払える人から受け取ったお金が、貧しい人への祝福に使われているならそこまで問題じゃない気がするんです……。貧しい人からもお金を取るとか、何らかの差別で与えない人がいるとかなら大問題だと思うんですけど……」
グレイルさんが大きく息を吐きだしました。
なんだろう、怒りを鎮めるように深呼吸しているようにも見えます。
私、怒らせてしまいました?……まぁ確かに、この世界に来たばかりで、この世界の仕組みをろくに知らないのに語りすぎた気はします。
「ほ、ほら、教会の人たちも生活がありますし……えーっと」
グレイルさんは眉間にしわを寄せてしまいました。
くぅーっ。イケメンは苦悩するような表情も色っぽくて素敵です。スケッチしたいです。不謹慎ですね……。
「……言われるまで、気が付かなかった……そうだな。確かにそうだ。教会は誰にも平等に祝福を与えてる。それは間違いない……それを実行するための資金源……なるほど……最低限の祝福以外は法外とも思える金を取るのは最低だと思っていたが……」
グレイルさんがふぅと今度は小さく息を吐きだしました。
「みっともなく髭を剃った姿をさらしてまでも祝福のための料理を作っているんだ……。そりゃ少しくらい庶民よりいい暮らしができるだけの金もうけをしたって許されるべきだよな」
いや、そこですか?
え?
えええ?
「そうか……国がもし祝福を行ったとしても……。そうだな、すべての領主が善人というわけでもない。官吏にも悪いやつがいる。祝福が受けたかったらこうしろああしろと国の目を盗んで悪用する者が出てくる可能性はある……そう考えれば、教会が他にはない本物の料理を売ることで利益を享受することなど大したことではない……かもしれないな……」
ああ、まぁうん。
「ああ、やばい。なんか、今、俺は……すごいことを知ってしまった……」
え?
「大切なことだ。もし教会がなくなったら、祝福を代わりに与える組織を作ればいいなんて簡単に考えていたが……。その金はどうするかという話も重要だが、金以上に、その組織……は国中に置かねばならぬ。その国中に置かれた組織を清浄に保ち国が亡ぼうと新しい国に変わろうとも継続させていくことまで考えたら……。とても実行できるとは思えない」
……ああ、なるほど。国が滅んで新しい国に代わる……。そういう可能性まで考えるべきなんでしょうね、確かに……。
そうすると、教会……宗教関係であれば国とは関係なく存続しますし……。うってつけの組織かもしれませんね。
「でも……もし、教会が腐敗したり、施政者が教会を弾圧したり……あるとき祝福を受けられなくなるようなことがあれば……あれば……」
大変なことになってしまうのでは……?
と、歴史の授業で習ったことを思い出しながら首を捻りました。
「ああ、そうだな。まだ祝福を受けた親の世代が生きている間はなんとか食べていけるだろうが……祝福を受けられなかった者たちばかりになれば死ぬか、大金を積んで祝福を受けた者に頭を下げるしかなくなるだろうな……」
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