★★まさかの!
グレイル視点
「う、え……ま……マジで……か……」
子供じゃなくて、大人で……女性?
髭が生えるわけないじゃないかっ!女性なら!俺は、俺は……なんていう勘違いを!
俺の馬鹿やろー!他に何か失礼なことしたんじゃないか?
「ご、ごめんなさい、その、あの、早く言えばよかったんですが、性別をわざわざ相手に伝えて自己紹介なんてしたこともなくて、えっと、街について初めて、あれ?もしかして……女だと思われてないって気が付いたので……えっと……」
リツが申し訳なさそうに眉尻を下げた。
いや、違う、違う、悪いのは俺だ。リツは何も悪くない……。
ああ、そうだ。本当に、俺は……女性になんてことを……。
片膝をついて、頭を下げる。騎士の最敬礼姿勢だ。
「申し訳なかった。気が付かなかったこちらの落ち度だ。……女性に対する態度ではなかった。森に一人放り出すなど……いや、もちろん子供に対してもひどいことをしたと思っているが……女性を守るべきが騎士だと言うのに……騎士どころか、男として情けない……」
ああ、なんてことだ。なんてことだ。なんてことだ。
「いえ、その、こちらの世界の常識からでは想像もできなかったと思うので……その、ひどい扱いを受けたとも思ってないですし……」
リツは俺を責めることもなく、むしろ俺のことを気遣って言葉をかけてくれる。
なんて心優しいんだ。
「いいや、見た目だけの話ではないのだ……俺はこんなんだから女性にもてないと、ダンはまた笑うだろう。仕草などからすぐに見抜くことができただろうと……」
俺は本当に女性のことに関してダメダメだ。女性が喜ぶ言葉も知らない。女性が好む見た目じゃないからもてないと言い訳をしているが、俺と同じような見た目でもモテている奴はモテている。
女性だと見抜けないような間抜け……きっと騎士には他にいないんじゃないか?
言われて改めてリツを見れば、柔らかそうな手は、骨ばった男のものとは違う。物腰だって、ガサツな男とは違って、座る時には足をきっちりと閉じていたし……ああああ。もう、俺は、俺は、俺は……!自分が嫌になるっ!
「もっ、もてないなんてことはないですっ、私の住んでた世界では、グレイルさんは追放レベルのイケメンですっ!」
「は?追放レベル?イケメンとはどういうことなんだ?」
追放レベルの馬鹿者という意味か?……そりゃ、女性に対してこれほど失礼なことはないだろう……。
落ち込む俺を励まそうとしてか、リツは早口で言葉を続ける。
「髭とか、私の住んでた国では少数派でした。8割とかそれ以上生やしてませんでしたし、むしろ、髭は仕事に不適当だから暗黙の了解で禁止になっているところもたくさんありました」
ちょっと待て、髭を生やしていない?それどころか、禁止だと?訳が分からずリツに尋ねる。
「は?仕事に不適当?禁止?髭が?」
「例えば飲食店……料理を提供するお店とか……」
「は?なぜだ?別に髭があろうがなかろうが関係ないではないか?むしろ立派な髭をたたえた者が売っていた方が信用できるのではないか?」
さっぱり分からぬ。
そりゃぁ、若くてかわいい女性が料理を出してくれたら嬉しいという人はいるだろうが、髭がない男に料理を出してもらった方が嬉しいなんて話は聞いたこともないぞ?
「料理に髭が落ちてしまったりしません?髪は三角巾や帽子などで落ちないようにできますが……」
「え?料理に髭が落ちる?」
どのタイミングだ?魔石を取り出し、呪文を唱えるときにくしゃみでもすれば時には髭が抜けて料理に落ちることもあるか?
「あ!そういうことですね、魔石を取り出して呪文を唱えるだけなら……確かに、関係ないですね……いえ、あの、そうではなくて私の住んでいた世界では、料理は材料を切ったり混ぜたりして時間がかかりますので、髪の毛など異物が混じらないように……と注意を払う必要があって」
リツの言葉に、料理が、複製料理のことではなく本物料理のことを言っているのだと気が付いた。
本物料理を出すところといえば教会くらいだ。その教会の人間……神官たちは、確かに髭を剃る。
「そういうことか!なるほど!教会の人間が髭を生やさないのは、そういう理由だったのか。確かに祝福で食べたパンに髭が入っていれば、一生髭入りのパンを食べることになるな!」
ちゃんとした理由があって髭を剃っていたのか……。
「教会の人間は、自分たちは特別な存在だと、髭などなくとも誰にも馬鹿にされない存在だと主張するために髭は生やしていないのかと思っていたが……まぁ神官皇だけは俺と同じようにろくな髭は生えないんだろうなとも思っていたが……。なるほど、祝福を与えるべき立場として、不備がないようにと恥ずかしくとも髭は生やさないのか……」
次回リツ視点に戻ります。
うー。また中途半端な!うううう。
まぁ、とりあえず女だと思った時のグレイルさんは自己嫌悪しまくりです。




