★★いろいろしてやりたいんだ
グレイル視点
ボロボロな短剣が目にはいる。肉を一口サイズに……リツは俺よりも一口が小さそうだから、俺の一口の半分くらいのサイズに切って、木の棒で救い上げてリツの口元に持って行く。
「ありがとうございます。いただきます」
あ。リツが笑った。
胸がポカポカとちょっと温かくなる。
喜んでもらえるのって嬉しいもんだな。……そういえば、俺の周りの人間は何かを俺にしてもらうと恐縮してしまうようで、表情が固まることはあっても、こんな笑顔を見せてくれることはないんだよな。
「……う」
う?
うまいの、う?
うれしいの、う?
いや、ちょっと待て、なんかよくかまずに飲み込んだぞ?
「ほら、そんなに慌てなくても肉はなくならないぞ。もっと落ち着いて食え」
めったに食べれない肉だからか?
いくらだって俺が出してやる。いくらだって、リツ、お前に食べさせてやるから、慌てなくたっていいんだ。
また笑顔が見たくて肉を棒に刺してリツに差し出す。
今度はリツに笑顔はなく、黙って肉を食べた。
「あの、もう、食べられないで……す」
え?まだ、2切れしか食べてないだろう?
「ああ、そういえば何か食べた後だったな。お腹がいっぱいか?」
……ろくなものを食べていないから食が細いのかもしれないな。
ちょっと苦しそうな表情は、食べたいのに食べられないことを悲しんで残念に思っているんだろうか……。
複雑な表情でリツが首を縦に振っている。
「そうか……もっと食わないと大きくなれないぞ……まぁ、俺は食っても細いままだがな……」
「あの、一つ質問したいことがあるのですが……」
「なんだ?」
「肉は、この世界の人は普通に食べているんですか?その、下層階級の人たちは何を食べて生きているのですか?」
ん?ああ。リツはこの世界のことは知らないんだったな。自分がこんな贅沢をしてもいいのかとでも思っているのか?
「ん?ああ、確かに、下層階級の者たちは本物として食べたことがあるものは祝福で与えられるのはパンと肉になる。が、実際はパンはこのサイズの魔石で出せるが、肉はこのサイズの魔石が必要になるからな……。年に何度かしか肉が食べられない者も多い」
「あの、ほぼパンだけですか?それで大丈夫なのですか?」
「大丈夫とは?」
何が言いたいんだ?まさか、肉が食べられない生活が?貧しい人たちの生活を心配しているのか?
「その、病気になったりとか……」
「大丈夫、複製食品は安全なものしかないからな。本物の方がよほど危険だ。毒を口にしてしまったり、おなかを壊したり腐っていたりと危険なものもあが……」
リツの頭をなでる。
「リツも、いくらお腹が空いたからと言っても、もう無理して変なものを食べなくていいからな……」
腐った豆を毎日のように食べていたというのは、好んで食べていたわけではあるまい。それしかなかったのか、はたまた無理やり食べさせられていたのか……。粘土の塊よりは豆なだけましなのか?
「そうだな、これも渡しておくか。このサイズなら肉が出せる」
肉魔を差し出すと、すぐにリツは大きく首を横に振った。
「あ、いえ、いいです、いいです、あの、必要ないです!」
「遠慮することはない」
「遠慮……ではなくて、その大きさの魔石は……」
「お!」
しまった……、喜ばせたくて勢いだけで行動してしまった。
「そうだったな。まだ子供だもんな祝福を受けてすぐじゃぁ、このサイズは無理だよなぁ……。悪かったな。じゃぁ、こっちだ」
パン魔石の入った袋を代わりに出す。
「いえ、これも、いただくわけには……」
「子供が遠慮するな」
笑ってくれ。喜んでくれ。
「こ、子供じゃないんです、あの……だますつもりは全然なくて、言う機会がなかったんですが……というか、その、私も気が付かなくて……勘違いされていることに……。えーっと、わ、私の住んでいた世界ではその、男女でそれほどの違いはなくて……年々ジェンダーレスが進んでもいて、えっと、その……なんていうか……」
子供じゃない?
は?エルフ系で、見た目は子供だけれど、年齢はもう成人しているとかそういう……?だとしたら髭が生えなさそうな感じも納得だが……。
「私の住んでいた世界では、奇妙に思うかもしれませんが、女性もズボンをはきますし、髪の毛を短く切ったりするんですっ」
ズボン?髪が短い……?
「……!」
……え?あ?
色々と調べると、知らなかったことを知ることもあるんですが、中には知らなきゃよかったみたいなこともありますよね。
ところで、うわさのヤクルトが現代のポーションちっくなことになってますね。
異世界に持って行ったらどんなことになるやら想像すると楽しいです( *´艸`)
とりあえず、自動販売機で1本売りしてる一番安い時期のヤクルトっていくらだったんだろう?




