★★恥ずかしい顔
グレイル視点
「あ、いた」
町についてどうやって少年を探そうかと思っていたら、町に近い森の道の端に少年は座り込んでいた。
細い煙が上がっているのが見える。火を起こせたのか。
火を起こしたことはないと言っていたが……。そうか。何かを焼いているのか?
それにしても、もう何日か前には町についていたはずだよな。どうして町の手前の道にいるんだ?
……知らない町で、居場所が見つけられなかったのか?
「ギルドは何をしているんだ……」
たしかあの町にギルド長はいたはずだよな。
王都に居れば、貴族連中のくだらない依頼やクレームを聞かされる羽目になるからと逃げていたはずだ。
まぁ、気持ちは分かる。あいつら貴族はすぐに「責任者を出せ!」と騒ぐからなぁ。
ギルドが本気を出せば国を乗っ取るだけの力があると馬鹿な貴族は知らないのか。
王家と教会とギルドがどれほど微妙な力関係であるか……。
「やたらと面倒見のいいギルド長……が、困ている少年を見捨てるようなことはしないはずなんだがなぁ。ギルドの宿泊施設に生活が落ち着くまでいて、食事も面倒見てくると思ったんだが……」
もしかしたらギルド長は留守で下っ端が判断できなかったのか?
ギルド長は時間があればすぐにギルドの建物から逃走……いや、逃亡……いや、逃げ出す……じゃないな、何ていうんだ、えーっと、とにかく、あちこちフットワークが軽く出歩くと聞いたことがあるからなぁ。
……ダンに「隊長がそれを言う?」と言われそうだな。
……うん、まぁ、確かに、今の俺も似たような……は、はは。
子供が手に何かを乗せたパンを口に運ぼうとしていたところに声をかけた。
少し待って食べ終わってから声をかければよかったと思った時には、少年はこちらを向いて目を丸くしている。
なぜそんな驚いた顔をしているのだろうか?
「な、なぜ……兵士さんは兜を取ってしまっているのですか?」
「え?」
ああ、そうか。少年と移動していた時には、確かにずっと兜をかぶっていた。顔を半分隠していたんだった。
俺の顔を知っている人間に会うのも面倒だと思っていたのだが……。
少年は私をただの兵士だと思っているし。隊長だということも、殿下だと呼ばれる立場だということも……わざわざ言うことでもないだろう。
あの陛下の同類だと思われて嫌われるのも……避けたい。
ん?いや、嫌われても仕方がないんだよな。事実同じ国の人間なんだし、陛下の行動を止められなかった責任もある。
……嫌われて当然なのに、嫌われたくない?
自分のわがままな考えに心の中で首を振りつつ、兜をかぶっていた理由の一つを口にする。
「あ、ああ。いい年して髭も生えてないから恥ずかしいんだが……」
正体を知られ炊くなかったというのは王都にいる間だけの話だ。王都から出てしまえば俺の顔を知る者は少ないから、本当は途中から外すこともできた。だがずっとつけていたのはもう一つの理由から。
「伸ばそうと思っても、薄くてはげかけた頭みたいな髭しか生えないからあきらめたんだ」
少年もいつか同じ悩みを抱えることになるかもしれない……と思うと、恥ずかしいなどと言うべきではなかったかと……。
やたらと少年は驚いた顔をして俺のみっともない顔を見ている。
どういうことだろうか……。将来自分もこうなっちゃうのかとがっかりしている?
なんだか、俺の体系もじっくる観察してないか?
そうだよな。髭だけの問題じゃないんだよ。
勘違い男グレイル。
どこまでも勘違いがすすむよ……。
自分がイケメンだと気づいていないイケメン……。




