★★かわいそうな子供
グレイル視点です
あまりにも、召喚された子供が哀れで仕事をダンに任せて飛び出してきた。
腐った豆を毎日のように食べていたというのは……。
服装を見れば浮浪児のような生活をしていたとは思えない。顔や手も傷どころか荒れた様子もなかった。
いいところの子なのに、ろくなものを食べさせてもらえなかったというのは、後継者争いなどでひどい扱いを受けてきたのだろうか。
側室の子……。
そうだ、例えば、長子として生まれたが、母親の身分が低いとか。正妃に王子が生まれていれば正妃に疎まれる存在だろう。側室に別に王子がいるが正妃には王子がいない場合が一番ひどいかもしれない。正妃の子は特別だが、側室の子は生まれ順で王位継承権が決まる……っと、あの子の生きてた世界、国の仕組みはどうなっているか分からないんだから、違うかもしれないが……。もし、側室生まれでも長子が王位継承権1位なら……王妃にとっては邪魔だろうな。
排除しようと……。
「はっ!まさか、そういうことか?」
王室でなくても貴族……いや、豪商ですらそうかもしれない。妾の産んだ子が正妻の子を差し置いて家を継ぐなんてことがあれば……そりゃぁ、邪魔だ。
「毒殺を恐れて……出された料理を口にすることができなかったとか……?」
ゴミとして捨てられていた物しか食べられなかった……と、考えれば、腐った豆や排泄物のようなものを食べていたことも分からなくはない。そして、粘土……。
ポケットからあの子にもらった銀色に包まれた粘土を取り出して見る。
「あの子からしていた甘ったるいようなにおいがするな……」
匂いだけなら美味しそうな気もしなくはない。
だがなぁ。さすがにちょっと、口に入れる勇気はないな。
子供にしては、しっかりとした受け答えをしていたが、教育が行き届いていたということばかりではないのかもしれないな。
細くて折れそうな手足をしていたが、あれは食べ物をろくに口にしていたせいなのかもしれない。
身長も低くて幼く見えたが、見た目以上の年齢だったのかもしれないな。
声変わりもしてなくて髭も生えてなかったから、子供には違いないだろうが……。
子供の、黒くて大きな目と長いまつ毛を思い出す。
なんか、エルフの血でも混ざってたんだろうか。女みたいな顔だったな……。
まぁ、俺も人のことは言えない。
俺も、どれだけ頑張っても顔も体も太く立派だとはいいがたい。筋肉はつくが、横にどっしりと安定感のある体系には程遠い。身長ばかっかり伸びたために、より細く見えると言うかっこ悪さ。
顔だって、まぁさすがに女に見えるようなことはないが……。いや、ないと思いたいが……。目は情けないことに目じりが下がっている。男らしく切れ長でしゅっと目じりが上がっていればよかったのに。まつげも無駄に長く目も大きい。
眉毛だって、伯父のように太くて立派ではない。伯父から比べれば半分ほどの太さしかないんじゃないだろうか。情けない。
髭も……はぁ。
あの子供の苦労するかもしれないよな。コンプレックスを持っていたら、先輩としてアドバイスしてやろう。
世の中には、エルフの血が混じっているような細くて女みたいな顔をした男が好きな女もいるから安心しろと。
……まぁ、俺の場合、俺の男らしくない容姿を好んで寄ってくるわけじゃなくて、地位や財産目当てで近づいてくる女ばっかりだがな……。
……。もうちょっとマシなアドバイスができたらいいんだが。だめだな。
すいません、なんか、もうちょっときりがいいところで入れたかったんですが、だんだんこのシーンが遠ざかっていき、忘れられそうなので、グレイル視点入れます!




