白い粉の正体
「パンに何を塗ったんだ?」
「え……?えーっと」
兵士さんから視線をそらします。
ピザは、多分ないのでしょう。この見た目でピザって単語が出てこないのですから。
ピザソースモドキを塗ったのですが、ピザソースも分からないですよね?
うまいんだ棒ビザ味を水で溶いたなんて説明はもっと分からないですよね……。えーっと、なんと説明すれば……。
「い、いや、すまん。答えを強要するわけじゃない。言いにくいのであれば無理に言う必要はない……」
あ、はい。説明難しいというのを察してくれたみたいです。
やっぱり兵士さんは親切ですし優しいです。
兵士さんががさがさとポケットをあさりだしました。そのすきにあまり時間がたつと固くなってしまうので残りのピザを食べます。
フライパンにお水を……出したいのですが、火を使っている近くでは危険なのです。
なんせ10円分の水道水……大量なので。火が消えてしまいます。もちろん火を始末するときには問題ないのですが、火を消す前に炭をまた取っておかないといけません。水にぬらしてしまっては火おこしが困ります。
「少年、これを食べなさい」
は?
少年?
あー。うん、やっぱり少年に見えますか。
これを食べろって?
と、手を出すと手のひらにパラパラと白い粉……白い粉粒が落とされました。
「あの、リツです。名前、リツです」
少年じゃないと否定するのも女ですって主張してるみたいで、顔を見たとたんにイケメンを前に色気づいたみたいで言いにくく。
かといって、少年と呼ばれ続けると嘘をつき続けているみたいで心苦しいので名乗ってみました。
「あ?リツか。俺はグレイルだ」
ほう、兵士さんの名前はグレイルさんと言うのですね。……苗字とか私も名乗りませんでしたが、兵士さんも名乗らないのか、苗字がない世界なのか。はたまたフルネームを知られると隷属魔法が発令しちゃうとかいう恐ろしい世界なのか。あとは、苗字持ちは貴族というパターンもありましたかね。いろいろなことが頭をよぎります。
「あの、グレイルさん、この白い粉……は、なんでしょう?」
「……そうか……知らないか……」
知らないかって、だって、無臭の白い粉粒……。
塩?グラニュー糖?味の素?唐突に手のひらに出されても、分からないですよ。
「なめてみろ」
はい。舐めれば分かるっていうことですね。およそ私の手のひらに出された白い粉は、一つまみほど。
口に含みます。
「!!」
絶句。
「それはな、塩というんだ」
知ってます、先に言ってくださぁぁい!
しょっぱい!塩一つまみ、最近塩分あまりとってなかった私の口には、しょっぱすぎますっ!
ぺっぺと吐き出すわけにもいかず、水もなく、そのまま必死に飲み込みます。
「本物の塩だ」
いや、本物の塩以外に塩ってあるんです?……って、あ!
魔石で出す複製塩じゃなくて、本物の塩っていうことですね。そうでした、ここはそういう世界。
いつもご覧いただきありがとうございます。
白い粉、色々ありますよね。
でも、はたして塩って白いのかしら?砂糖も白いのかしら?
藻塩とかはちょっと灰色っぽいし、三温糖とかは茶色っぽいし……うーむ。




