☆☆実食!
神官皇視点です
「スライム魔石で出したものをこんなに丁寧に包むなんて、変なの!」
ミックの言葉にうんと小さく頷く。
「どうも、これをくれた人物は魔石をパンにできないんだよ。身なりはよい物を身に着けていたけれど……食べるものに関しては苦労していたのではないかな。せめて見た目だけでもと、親が工夫を凝らしたのだろう……」
そういえば、少年が取り出したものはすべて違った絵が描かれていたように思う。
一つずつ親が用意して丁寧に包んだのではないだろうか。
「へー、祝福を受けてないのか?魔石が手に入らないわけじゃないよな?」
「詳しいことはよくわからないけれど……ミック、これは何に見える?」
包みを開くと、白い小さな塊が出てくる。
「え……っと」
ミックが絶句している。
「食べたことはない……みたいだね」
「うん……何これ?白い石?いや、石みたいに堅そうじゃないし……あ、もしかして、壁とかに塗るあれ?」
ミックが漆喰の塗られた壁を指さした。
……確かに、可能性として全くないわけじゃないだろう。
白い壁を作るときに練って壁にぬるものだ。
泥団子を食べていたと考えるなら、漆喰も食べていた可能性は十分にある。
……いったい、どのような食生活を送っていたのか。
「壁のあれなら毒とかじゃないよね?さっそく食べてみるよ。これ1個しかないなら、半分に切ればいい?」
ミックがナイフで半分に切って、躊躇せずに口に入れた。
「うわっ」
周りで様子をうかがっていた神官皇補佐が小さく声を上げて口を手でふさいだ。
「うえっ」
味を想像してか、別の神官皇補佐がちょっとだけえずいている。
まぁ、普通の反応だろうとは思う。
私自身、泥団子を出された時にはとても口に入れる気にはならなかったのだ。……白いだけで幾分か気持ちが前向きになってはいるけれども。漆喰……か。
泥よりは幾分マシではあるが。土の仲間……。とても食べ物だと思えない。
ミックの何でも口に入れるバイタリティは本当に見習いたいものだ。
ミックが、両手で口を押えた。
「毒か?吐き出せっ」
慌てて立ち上がり、ミックの背中をたたく。
ミックがぶんぶんと首を大きく横に振った。それから、私の手を逃れて、壁にピタリと背中をつける。
な、なんだろう、この行動の意味は。
ミックは両手で口を押えたまま、壁に背を当てたままじっとしている。
毒で苦しそうな顔をしているわけではないけれど……。
まずいのを必死に我慢して味を確かめている……?
顔を見ると、何かを我慢しているようにも見えない。
様子を見守ること1分ほど。
ミックが大声を上げた。
「あーーーーっ」
「ど、どうしたんだミック。大丈夫だったのか?」
ミックがソファに戻ってどっかりと腰を下ろした。
「口からなくなっちゃったぁ~」
「え?」
「始めた食べた。すんごく美味しい。甘くて、はちみつとも砂糖ともちがう、全然違う、とにかく甘くておいしくて、もう、ずっと口の中に入れておきたいのに、なくなっちゃったっ」
ミックがそれほどまで褒めるなど、いったいこの漆喰もどきとはどんな味がするのだろう?
ミック少年を書くのが楽しくなってきた。