☆☆飢えの無い世界
神官皇視点です
「神官皇様みぃーっけぇ」
腰をしっかりホールドされた。
「見つかりましたね……」
青いズボンにフード付きの膝上丈の短い白装束を身に着けた神官見習いだ。
13歳にしては小柄なそばかす顔の少年だ。
「おお、ミック、神官皇様を見つけたか。だが、何たる不敬。だ、だ、抱き着くなどと……!神官皇様から離れなさいっ」
「えー、逃げないように捕まえてただけだよぉ」
ミックはぷぅっとほほを膨らませた。
後から来た神官がミックをしかりつけるが、ミックは気にした様子もなく私の顔を見た。
「ねぇ、神官皇様、何か面白い物見つけた?」
「ああ。そうだな。ちょっと変わった者がいた」
「えー?どんな人?ねぇ、手に持ってるのは何?」
私の立場は神官皇だ。
神官の中で一番上。国内では、陛下に次いで高い地位……ということになっている。
まったく。望んで神官皇になったわけではない。
ほんの少しエルフの血が流れていたために。
ほんの少し人より植物を育てるのがうまかったがために。
ほんの少しいろいろなことに興味があり、新しい料理を作り出すことができたために。
気がつけば神官皇の地位にまで上り詰めていた。
……一度食べた食べ物であれば、魔石があればいつでも出すことができるこの世界。
料理をする必要などどこにもない。
過去には、干ばつや洪水などの飢饉で多くの人がなくなることがあったと言う。
魔石から食べ物を得られるようになってからは、食べる者の心配をしなくてもよくなり、食べ物や豊かな土地をめぐっての争いはなくなった。……それが三千年ほど前のこと。
それから、100年もたたないうちに畑は姿を消し、動物を狩ることもなくなった。魔物を狩り魔石を手に入れる。
いつしか、食べられるものの知識も料理の方法も忘れていった。
唯一、教会だけがその敷地で麦を育て、牛を飼い、本物のパンと肉を人々に食べさせるようになった。
それが祝福と呼ばれるようになったのは今から1500年ほど前だ。
エルフは長命種ゆえに、口伝でなんとか伝わっている歴史。
歴史書として残されている書物にはすでに教会のみが神に与えられた麦だとか神から選ばれた神官にしか本物は作れないだとか怪しいことが書かれている。
……私は、昔は魔石ではなく誰もが畑で作物を育て、狩りをして料理を作っていたということを知ってから取りつかれている。
今、教会で作っている作物以外にも食べられるものがあるのではないか。
もっと世の中にはたくさんの知らない食べ物があるのではないか……と。
残念ながら、何の知識もなく、森に生えているようなものを口にして命を落とす者たちも多い。それゆえにやはり教会で祝福を受けなければならないと言う信仰はなくならないし、教会側はあえて権威を保つために秘密にしていることも多い。
この世に生を受けて50年。残りの命は何年あるかは分からないが、もういい加減、同じ味のパンも肉も食べ飽きている。
神官皇視点始まりました。
世界観の説明……主人公視点じゃ進まないですし……。というか、神官皇も大概おかしな人ですわ……。
あー。ところで……ですね。
チィロールチョコのミルク味→ホワイトチョコで白い
チロルチョコのミルク→茶色のチョコの中に白いチョコが入ってる
チィロールチョコのイチゴ味→全部ピンクのチョコ
チロルチョコのイチゴ→アポロのように茶色とピンクの二層
などの、違いがあります……(っていうか、書いたあとにあらためてチロルチョコ食べたらまったく記憶と違ったわ……汗)




