ミミズのごはん
大きな魔石を食べるということは、つまり、大きな魔石を食べものにする必要があるということですよね?無理です。
私が食べているのはパンじゃなくてうまいんだ棒とかチィロールチョコレートとかです。
魔石のサイズは、パンの10分の1しかサイズがありません……あ、でも、10個食べればとんとんでしょうか?食べた魔石のサイズ量で魔力が上がるのを早めることができるっていうことは、少ないと遅くなると……。
今のような米粒魔石生活を続けていたら、いったいどれくらいかかることか……。
どちらにしても、パンレベルまでとは言わなくても、米粒からごはん粒になるまでにも、何年単位でしかレベルが上がらないっていうことですよね……。
うううう、ううううう。
割引価格50円のおにぎりすら遠い夢。
牛丼は死ぬまでに食べられないかもしれません……。
いいえ、負けません。一番安く買った牛肉はたぶん100g98円とかだったはずです。
醤油も砂糖も生姜チューブも料理酒も、特売98円で買ったことがあったはずですっ。だから、パンが出せるようになればきっと、牛丼の材料も出せるようになるはずです!
って、それすらも10年近く先の話……。それまで牛丼の作り方を覚えていられるでしょうか……。
醤油という名前を憶えていられるでしょうか……。
「しかし、君のその年までパンを出すだけの魔力がないとは、一体何を食べて生きてきたんだ?教えてくれ」
うん。どうやらお兄さんは分からないこと知らないことがとても気になるようです。
学者タイプでしょうか。だから、私が神官ともめていた理由も知りたくなったのでしょうね。
米粒魔石を一つ取り出します。
「これは小さいな。スライムの魔石か?これではせいぜい野イチゴ1つ出すのがやっとだろう」
野イチゴ?そう言うのがあるんですね!そして野イチゴは米粒魔石から出せるんですね!良いことを聞きました。
「チィロールチョコレート」
基本のチィロールチョコが出てきました。
「なんだこれは?随分と細かい模様が描かれているが……これが食べ物か?」
「あの、包み紙です。食べるのは中身です」
チィロールチョコレートの紙をめくって中のチョコレートを見せるます。
「……泥団子?」
お兄さんが哀れむような目つきで私の顔を見ました。
ど、泥団子……。
「あの、色は確かに……泥のようですけれど……」
形は団子じゃないと思うんです。キューブ系ですし。いえ、キューブは立方体のことでしたっけ。あの形はなんという名前なんでしょう?直方体とも違い、少し台形っぽさがあるあれ……。と、とにかく団子じゃないですっ。
「泥団子じゃないです。美味しいんですよ?」
チィロールチョコは決して泥じゃないと教えるつもりで、出したチョコを口に入れます。
うん、チョコです。甘いです。美味しいんですが、今日は朝食もチィロールチョコだったので、ちょっと飽きてます。
「疑うわけではないが……無理をしているんじゃないだろうな?食べなれただけということも……」
パンが出せずに泥を食べ続け泥が美味しいと感じる特殊技能の持ち主だと疑っています?
私、ミミズの仲間だと思われてます?
……。