おまたせ
観光……。いろいろな国に行ってみたいです。確かに。
生活の基盤がしっかりして、生活に余裕ができて、それから、ミックくんとキュイちゃんと出かけられる方法が見つかったら。いつか……。
「はい、フェリアールに行けたら行ってみたいです」
「その時は、連絡するんじゃぞ」
ワーシュさんが自分の指をトントンとたたきます。指輪のことを言っているようです。
「はい」
それから、宿に他のお客さんたちが帰ってき始めたのでバターなどを使った料理はおしまいになった。
マーリーさんたちは仕事があるので。
瓶に詰めたバターとチーズとギーは、手伝ってくれた人とマーリーさんとワーシュさんとで分けた。
バターはほとんどギーにしちゃったから瓶1つ。2~3日しか持たないので十分です。ギーならしっかり消毒した瓶で密封してあれば1年とか保存できたはずです。開封しても使い方に気をつければ3か月……。
「あ!」
大失敗です!ずいぶん時間が経っています。
私、キュイちゃんとミック君に魔石取りしていてねとだけ言って街にきちゃいました。
おなかすかせてないでしょうか。疲れて倒れてないでしょうか。
重たいので保存用のギーの瓶は部屋に置いてから宿を出ます。
街から出てまっすぐの道を進むと、前に料理した跡が見えてきました。
「ミックくーん、キュイちゃーん、どこ?」
このあたりで別れたのですが、姿が見えません。
きょろきょろと見回していると、がさりと音がして、背後の木々の間からものすごく速い動きで何かが飛び出し私にぶつかってきました。
「キュイー!」
「キュイちゃんっ!お待たせ!」
「キュイ、キュイ、キューッ!」
キュイちゃんがうれしそうに小さな手にいっぱい米粒魔石をのせて見せてくれます。
「うわー、たくさん集めてくれたんだね。ありがとう」
「キュイーッ!」
どや顔をするキュイちゃんがかわいすぎます。
「待って、キュイ、一人で走っていったら危険……あ、リツ兄ちゃん!」
ミック君が私の姿を見て笑顔を見せてくれます。
なんて幸せなのでしょう。顔を見ていやな奴にあったって顔をしかめられる人生でなくて私は幸せです。
「ごめんね、お待たせ。これ、お土産だよ」
バターの瓶とチーズの瓶とギーの瓶を見せます。ちなみに、たくさんできたホエーはレモンをいれてレモン水として宿で使ってもらうことになりました。はちみつは高価なのでなしです。レモン入りのホエーも口の中がすっきりしておいしいと好評でした。