トーストっぽいなにか違うもの
「パンの上に何か載せて食べるなんてすごい発想だな」
えーっ!そこですか?
えーっと……。そういえば、中世ヨーロッパでのサンドイッチの歴史って、確かスタートは「硬いパンを皿の代わりに料理の下に敷いた」ことがスタートだったとか。魔石から焼いた肉とパンくらいしか出して食べないのなら皿すらも必要がないってことですかね?
料理チートと言われる漫画や小説もいろいろ読んだことがありますが……どうしましょう、いろいろやらかすつもりがなくても、知らないうちにやらかしちゃうのではないでしょうか。
うーん。……ま、まぁ、今回は牛乳が今しか手に入らないので緊急事態ということで……。
そもそも隣国のワーシュさんは牛乳はこの国では飲まないと言っていたので、そこから「特殊」なので牛乳に関してはすごく発達した国ということにして……ご、ごまかせないかな?
とにかく、料理はやらかしの可能性があるということがよくわかりました。人前で料理は危険みたいです。ここにいるのはいい人達ばかリなので大丈夫ですけど。
今度からちゃんと森の中でしか料理しなければ大丈夫ですよね?
……でもいつも街道沿いではさすがに目立ちますよね。森の中……人目につかないところで料理するべきでしょうか。
グレイルさんが家を用意してくれると言っていましたが、さすがに今日明日のことではありませんよね?
と、いうことは……。バターもギーもいろいろ料理をしないほうがいいのかもしれません。
「このまま食べてもうまいのぉ」
ワーシュさんがチーズにはちみつをかけた部分だけを食べている。
ああ、そうか。歯が悪いからパンが硬いんだ。牛乳に浸して食べてたくらいだし。
やわらかいパン……作ってあげたいなぁ。でも、材料がないんだよね。イースト菌も売ってない。天然酵母……かぁ。ブドウやリンゴでできるのは知っていますが……。リンゴやブドウあるでしょうか。いえ、あったとしてもワーシュさんは明日の朝には出発すると言っていましたし。今からでは間に合いません。
「これも同じようにして食べられるのか?」
旦那さんがバターを指さした。
「あ、はい。バターはどちらかと言えば、パンを温めて上に乗せたほうがおいしく食べられます」
そう伝えると旦那さんが暖炉の火でパンを温め始めた。温めたパンにバターを一さじ乗せて塗り広げる。
「溶けた」
「はい、溶けます。はちみつをさらにつけてもいいですが、バターだけでどうぞ」
バターを塗ったパンを小さくちぎってワーシュさんに手渡す。それから他の人にも味見用にちぎって配った。
「うんまっ!俺はさっきのよりこっちが好みだな。甘いものはあまり得意じゃないからな」
「香りもいいなぁ。花とは違う甘いような香り。ちょっと暖炉借りていいか?【パン】」
お客さんが魔石をパンに変えて暖炉で温めている。
お代わりみたいです。……えっと、よく入りますね?さっきチーズをのせたパンをすでに3枚食べてませんでしたか?
「ああ、これ毎日食べたいなぁ……でも本物じゃないから出せないんだよなぁ……」
「ワシは帰ってからも作って食べるとしようかの。リツのおかげで楽しみが増えたわい」
ワーシュさんが小さくパンをちぎりながら食べている。
「あの、このバターは」
ジャガイモに載せてもおいしいし、トウモロコシに載せてもおいしいんですっ!と言おうとしたけれど。
ジャガイモは毒に分類されているでしょうか。本当に青いのは毒なんです。そこまでしっかり伝えられなければ青いジャガイモを口にする人が増えて大変なことになる可能性があるので言葉を飲み込みます。トウモロコシだって、私が読んだ漫画や小説では飼料で人の食べ物じゃないみたいな扱いでした。飼料を食べるのかと言われそうですし……。もう少し時間があるときにゆっくり教えないとだめなことだと思うのです。




