蜂蜜レモン
「あともう少し続けてひと固まりになったらバターの出来上がりです。もう少しお願いしてもいいですか?」
「ああ、もちろんだとも」
「追加の瓶を買ってきたぞ」
なぜかお客さんの何人かもお手伝いをしてくれているのです。
「お湯が沸いたよ、煮沸消毒ってどうするんだい?」
「何かほかにすることはないか?」
私とワーシュさん、マーリーさんと旦那さん、お客さん3名の、総勢7名で3時間くらい頑張りました。
バターも4回作りました。
牛乳で作ったチーズが1回分。
そのあと、バターを作って残ったバターミルクを使って作ったチーズがどっさり。
バターとチーズを作った後にさ残ったホエーもどっさり。
「チーズもバターも2~3日しか日持ちしないので、バターはギーにします。煮沸した容器に入れて密封すればギーは1年ほどは保存できるはずです。開封しても1か月は大丈夫」
「保存?食べ物を……?」
そうです。首をかしげる案件ですよね。本物を1回食べれば魔石で出せるのですから。食べずに残しておいて保存しておく意味はわからないですよね……。説明はあきらめましょう。
とりあえずです。
私を除いた6名の目が、ずっとバターやチーズにくぎ付けになっています。
「えーっと、砂糖とかはちみつは出せないですよね?」
さすがに高級品だろうと思ったのに。
「砂糖を何に使うんじゃ?」
ワーシュさんが首を傾げた。
まさかの砂糖はそんな首をかしげるほど一般的にはあまり使われない?いえ、単に高級すぎて普及してないだけ?
「はちみつならすぐに出せるぞ。ほれ、どれだけ必要じゃ?」
ワーシュさんが親指の爪サイズの魔石の一回り大きい魔石を取り出した。
……親指サイズが推定500円なので、それより一回り大きいと1000円くらい?
「【はちみつ】」
ティースプーン5杯くらいのはちみつに変わる。ティースプーン1杯が200円くらいってことかな?そこまで高くない?
うーん。日本のはちみつからすれば高級はちみつには違いないけれど……。私の日本円換算があっていればですけど。
「で、これをどうするんじゃ?」
「えーっと……」
どうしよう。何から作ろうか。
まずは……。
「はちみつと塩とレモン汁を入れます」
塩は、私も出せるのでスライム魔石でちょこっと出す。
「待て待て、はちみつは甘いんだぞ?塩はしょっぱい、それにレモン汁は酸っぱいぞ?せっかく甘いのにどうしてしょっぱいもの混ぜるんだ?」
レモンの提供者さんが目を丸くする。
あー、確かに、知らなきゃそう思うのかもしれません。
炭酸水があれば、ホエーに砂糖とレモン汁でレモンスカッシュができるんですが、炭酸水がないので、今回は塩も使ったあれを作ります。
ホエーと混ぜて、スプーンですくって味見。
うん、いい感じじゃないでしょうか?
コップに注いで皆に配ります。
「えーっと、どうぞ。好みもあるかと思うので味が濃いと思ったらホエーを足してください」
関東と関西ではおいしいと感じる塩分濃度が違うように、この世界の人がどれくらいの濃さがおいしいと感じるかわからないのです。
一番に飲んだのは、ワーシュさんです。
当たり前に思ってるけど、誰が蜂蜜とレモンを一番初めに組み合わせようと思ったんだろう?レモンが酸っぱいから蜂蜜かけたらいんじゃね?って、もしかして、グレープフルーツに砂糖かけて食べたらいんじゃね?と同じ系統なんかな……?!(グレープフルーツに砂糖は昭和らしい)でも、今でも酸っぱいイチゴには砂糖つけて食べてる(練乳は家に常備してない)けど、そういう感じでレモンを食べようと頑張った人がいたのかな……?




