変化
「えーっと……絹でしょうか?それにこの刺繍……染料は熱に強いとは限らないですよね……えーっと、できればもう少し目が粗い綿の染めてない布が良いのですが……」
料理に使う場合、乾燥を防ぐために濡れ布巾にしたり水滴が落ちないように蒸し器に使ったり、漉すにしてもゆでてすぐにざばーっと流すこともあって熱いです。染料によっては熱を加えると溶けだしてしまうものもあるので注意が必要です。あ、もちろん、酸性で溶けだすとかいろいろあると思いますが詳しくはないので……。無地で染めてないなら問題ないですよね?
「なんと、ワシの持っておるハンカチは役立たずだったんじゃな……!」
ショックを受けるワーシュさん。
「いえ、えーっと、手をふくのに役立つと思います」
ハンカチは本来そういうものです。
「じゃあ、これが使えるかい?おむつを作った端切れとして売ってる布だよ。食器洗いやテーブルなんかを拭くのに使ってるんだよ。まだ新しいのがあるから」
「そうです、そういうのです、ありがとうございます!」
まさに役割も布巾ですね。
ワーシュさんに鍋に出してもらった牛乳にレモン汁を加えてを温めます。
うーんと?あれ?リコッタチーズでしたっけ?カッテージチーズでしたっけ?バターを作って脂肪分を抜いた後に作るのがどちらで、抜かずに作るのはどちらでしたっけ?……似ているからよくわからなくなりました。……えーっと、どちらも「チーズ」ということで大丈夫ですかね?
ワーシュさんが興味深く暖炉にかけた鍋の中を見ている。
料理をしない世界ではかまどはない。暖炉が調理にも使われるそうです。いえ、調理はしないんですがお湯を沸かしたり何かを温めたり焼いたり程度の工程?大きな鍋があるのもお湯を沸かすためらしいですし。確かに、いくら口にしたものは魔石で出せるとはいえ、熱湯はそもそも口にしたら危険ですしね……。50度くらいのお湯しか飲めないですよね……。そう言えば自動販売機の飲み物は55度前後の温度に設定されているそうです。
暖炉でお湯を沸かすのは、日本でも暖を取るための火鉢や囲炉裏やストーブで調理することもあるからそれと同じでしょうか。私はやったことはありませんが、ストーブってお湯を沸かす以外にも、おでんを煮込んだり餅を焼いたりできるそうです。
お餅食べたいですね……。
「お、おお!なんじゃ、牛乳が牛乳じゃないみたいになってきたぞい!」
かなり分離が進んだようです。そろそろでしょうか。
「ではこれを漉します」
布巾を使って分離した個体と液体を分け、布巾をやけどに気を付けて絞って、覚ましておく。
「おーい、なんか変なんだ、来てくれ」
旦那さんに呼ばれて料理場から店内に戻ると、バターづくりをお願いしていた店主さんが木製の器具を前に困惑した顔を見せる。
「調子が悪くなったのか壊れたのか、がこがこするんだ」
「大丈夫です。ちょっと見てください」
革袋の口を開いて中にバターになりかけの塊があるのを見せる。
「は?中に入ってたのは……牛乳だったはずじゃ……?いつの間に入れ替わったんだ?魔法か?」
「何だ?見せてみろ、まじで何か塊があるぞ?」
レモンを出してくれたお客さんも驚いている。
絹ごし豆腐と木綿豆腐、使う布の違いだけだと思ってた時期が私にもありました。
全然違った!




