過去
「きゅっきゅきゅーいぃーーっつ、きゅっ」
え?
キュイちゃんの目から星屑みたいなものが飛び散るのが見えます。
な、なにが起こったの?
星屑みたいなものは、私の頭上、ミック君の頭上から降り注ぎました。目をぱちくりしている間に終わります。
ミック君はスープを飲むのに必死で見ていなかったようです。……目の錯覚かな。キラキラ輝いて見えただけ?
「リツ兄ちゃん……玉ねぎ……って、あの玉ねぎだよな?おいら、お腹空いてすげー空いて、土に中に埋まってる果物かもしれないって掘り出して食べたけど、いくらお腹が空いていたからって食べられなかった、あの玉ねぎ……」
うわぁ。子供が空腹で何でも食べようと必死になっている姿を思い浮かべて胸がいっぱいです……。ミックくん……。
「こんなすげーうめーもんが作れるんだな、玉ねぎって」
私の顔を見てにこりと笑うミックくん。
あかーん、もうあかーん。
思わずミック君をぎゅっと抱きしめていました。
「ミックくんが、玉ねぎをかじってくれたおかげだよ。そのときはまずくて大変だったね。でもありがとう、あの時ミック君が玉ねぎを見つけて食べてくれたから……こうして美味しく食べられるんだよ……。ミックくんのおかげ……」
レモンも出してもらえてラッキーじゃないんですよね……。ミック君が出せる食べ物の数だけ、ミック君がお腹を空かせていた証拠なんです。
たくさん、いろいろな物が出せれば出せるだけ……食べられるものが無くて仕方なく食べてるんです……。
だから、ミック君が玉ねぎ出せてラッキーだとか、レモンは出せないのかなぁとか……。いいことなんかじゃ全然なくて……。ミック君が苦しんできた証で……。
「ごめんね……」
小さなミック君の姿を想像して、胸が苦しくてどうしようもなくなってきた。
「リツ兄ちゃん……泣いてるのか?どうしたんだ?」
「まずかったもの……出してもらって……嫌なこと思い出したでしょう……?」
レモンを思い出しただけじゃない。きっと、レモンを食べたときの辛かったことまで思い出していただろう。美味しそうな果物を見つけたと思ったら食べたら酸っぱくて食べられなかった絶望感とか……。お腹がすいたなぁと辛かった思い出とか。
「うんと……おいら今が幸せだから別に思い出しても辛くなんてないよ?それどころか、リツ兄ちゃんがこれをどうやって使うんだろうってワクワクするんだ。おいらが役に立てるのも、嬉しいから、だから……」
ふいにミック君の言葉が途切れる。
子供がお腹を空かせて何かを必死に口に入れちゃうの想像するだけで泣ける……
子供が苦しんで亡くなってしまった事件が報道されるたびに胸が潰れそうになる。




