花
そりゃ、忙しいですよね。私のようなどこの誰とも知らない人がひょっこり言って偉そうに料理教えに来ました!なんて言っても邪魔なだけでしょう。
いえ、偉そうな態度はとりませんが……。そもそも、ハーブチキンとかコウ様も知っている料理を教えると言われても困るでしょう。何を知っていて何を知らないのかすら分からないのですから、料理を教えますって言って、本当に教える必要がある料理なのかもわからないんですよね。
「じゃあ、もし、コウ様が知りたいと言うものがあったら教えて。ミック君にまず教えるから。覚えるまで教えれば、ミック君がコウ様の時間がある時に教えてくれればいいよね?」
ミック君が私の顔を見る。
「うん、おいらが神官皇様に教えるから、リツ兄ちゃんはおいらに教えてくれ」
笑顔になったことにほっとします。
本当なら、レシピを紙に書いて渡せればいいんですけど。日本語で書いても読めないだろうなぁ……。
ん?まてよ?
私、漫画家の端くれだよ?
絵で表現できないでしょうか?絵だけでレシピを伝える……。
いや、さすがに絵だけで、水と酒とみりんとをかき分けるのは難しいですよね。同じ日本人に伝えるなら、蛇口やらとっくりやらを描くなどヒントも出せますがここではそういうわけにも行きませんし……。
うん、まぁ、落ち着いてから考えましょう。そもそもこの世界の食材も謎ですしね。牛乳も隣国では飲むけれどこの国では飲まないそうですし。
「さ、じゃあ味見するなら……」
バターの味見かぁ。
あ、そうだ。
「オニオンスープは少し作るのに時間がかかるから……先に、作りましょうか」
「え?何を作るんだ?必要な物があればおいら出すから言ってくれ」
そうでした。ミック君に頼むとなんか出してくれるかも。でもなぁ、できれば醤油が欲しい。さすがに醤油は出せないですよねぇ……加工食品ですし。
「材料はあるから大丈夫よ」
というと、ミック君が残念そうな顔をする。
「作るのを手伝ってもらえる?」
「おう、おいらなんだって手伝うぞ!」
「キュイキュイきゅーっ!」
キュイちゃんも張り切って胸をとんと叩きました。
あ、もう瓶を振るのは飽きたのね……。そうですよね。
「じゃあ、この花をちぎってもらえる?これくらいの長さからお願いできるかな?」
茎を見て柔らかそうなところまでを指示する。
「え?花をちぎっちゃうのか?」
「きゅ?」
不安そうな顔をキュイちゃんが見せる。
「んー、これは食べられる花だからね。……ああ、でも咲いた菜の花はちょっと苦みが強くなるというから二人には食べられないかなぁ……」
ミック君がポカーンと口を開けた。
食べられる花は色々あるけど、美味しく食べられる花は少ないですよね……
みなさん好きな美味しい花はありますか?




