★★哀れな子供
兵士さん視点
召喚が行える神官の部屋に来た。
「これはこれは、グレイル様。この度は……私が召喚した者が使えない人間でお手間を取らせました」
神官の態度にイラっとする。
申し訳ないと頭を下げているが、それは俺に対してだ。
召喚した人間に対して悪いなどと少しも思っていない。
確かに一人目は幸せそうに過ごしている。が、二人目は召喚されなければ死ぬことはなかっただろう。
お前が召喚したせいで死んだのだ。良心がとがめるならば、三度目に子供を召喚してしまったことに心も痛めるだろう。そして、4度目の召喚の準備が手につかなくなることだって……。
いいや。違う。この男のせいにするべきではない。陛下が命じている。命じられたことを遂行しているだけだ。我らとて、任務となれば人の命を奪うこともある。
できることを一つずつしてくしかないな。まずは召喚を止めることだ。
「ところで、三人目の子供はどうして追放になったのだ?どんな食べ物を出したんだ?」
もらった粘土のような食べ物を思い出す。あれが本当に食べ物なのか回復とかのアイテムなのかは分からない。他にどのようなものを食べているのかが分かれば、ヒントになるだろう。
「今までで一番高価な食べ物として出したものは、生魚でした」
「は?」
生の魚が、一番高い料理?
「その次が生焼けの肉で」
「え?」
肉はしっかり焼いて食べろともっと言い聞かせるべきだったか……!
「その、好きな食べ物として出したのは……排泄物のようなその……」
神官の言葉に思わず手を口にやる。
「毎日食べているものと、最後に出したのは、腐った豆でした」
……。
何ということだ!
腐った豆や排泄物さえも口にしなければ生きていけないような過酷な世界で生きてきたのか。
俺は……そんなことも知らずに……。
自分では大した食べ物を出すことができないからと、何も差し出さなかった。
が、あの子にとればパンさえもご馳走……!しっかり焼いた肉ですらもご馳走!そうだと分かっていれば食べさせてやったのに……!
くそっ。
今からだって、遅くないよな……。
「おい、ダン」
神官の部屋を出ると副隊長を呼びつける。
「数日、隊はお前に任せた」
「はぁ?またですか?」
「俺がいない方が、のびのびとできていいだろ?」
ダンがふぅと小さくため息をついた。
「のびきっちゃわないうちに帰ってきてくださいよ」
あきらめたような顔をしたダンの背中をバンっと叩いてマントを翻す。
まずは神殿に向かうか。本物の塩とはちみつを買ってあの子に食べさせてやろう。
そうすりゃ、生きていくことはたやすくなるはずだ。
塩は金貨30枚。はちみつは金貨100枚だったか。
昔はそこまで高くなかったはずだ。塩やはちみつ業者と結託して値段を吊り上げているのは分かり切っている。裏金ももらっているのだろう。
だが、本物を扱っているところが他にないから教会はやりたい放題だ。
もうすでに庶民では手が出ない価格になっている。まぁ、本物を手に入れなくても、業者が庶民に手に入りやすい価格で塩もはちみつも売っているのだから、あえて庶民派本物を買おうとはしないのだが……。
ギルドに行けば、異世界の食べ物を出すことで商売もできるだろうと思っていたが、排泄物や腐った豆では商売になるはずもない。
塩とはちみつ。これは異世界に召喚してしまったせめてもの償いだ。安くはないが、償いとしては高くもない。
終了。グレイル視点終了でございます。
あー、思ったより長かったわ。
ちっ(舌打ち)もっとはっちゃけたキャラにするつもりが、まじめかよっ!ってなってる(´・ω・`)
次回から駄菓子に戻ります。
キャラメル、美味しいから食べなよ。
なんだよ、艶のある粘土って!