大丈夫みたいです
「いや、だから、リツ兄ちゃん、聞いてたか?本物じゃないからな?おいらみたいに緑の手がなきゃ、育つのめちゃくちゃ時間かかるんだよ?苦労して育てたって、金にもなんないよ?」
ん?
地球じゃ、緑の手なんて便利な魔法を持っている人はいませんでしたから、時間をかけて作物を育てるのはごくごく当たり前なのですけども……。しかも、金にならない?
本物じゃないから?
「お金にするために育てるわけじゃないよ、食べるためだよ?」
「食べるためなら、本物探して食べれば出せるようになるじゃん。おいら、探そうか?ちょっと時間かかるかもしんねぇけど」
いや、ですからね。本物は食べたことあるんですよ。でも魔力不足で出せないんです。だから、育てた方が確実に手に入るんです。
それに、普通ですから家庭菜園やってる人とか普通にいましたから。
仕方がありません。説明いたしましょう。
「ミック君、実はね……」
米粒魔石を取り出して手のひらに載せます。
異世界から召喚された云々は言わない方がいいですよね。
「諸事情により、私は今はこのサイズの魔石しか使えないのです。なので、パンすら自分では出せません。玉ねぎも本物を食べても、出せるようになるまでには何年かかかってしまうのです」
ミック君が目をまん丸にしました。
「え?それで、何を食ってきたんだ?おいらみたいに、口に入るものはなんでもか?だから泥団子やレンガを……」
いやいや、泥団子やレンガから離れましょうね。
「チィロールチョコレート」
ぽんっと、泥団子と綺麗なお兄さんに言われたシンプルなチィロールチョコレートをだします。
包み紙をはずしてミック君に差し出します。
「泥団子じゃないのよ?」
「え?でもこんな黒い塊の食べ物なんて見たことないよ?」
ミック君の目の高さに手を差し出していたので、何か見ようとキュイちゃんがぴょんぴょん飛び跳ねています。
「ああ、ほら、キュイちゃん、これはねチョコレート」
手をキュイちゃんの目の高さに降ろします。
すんふすんふと、匂いを嗅ぐようなしぐさをしています。
甘いものだってわかったかな。
お馬さんにチョコレートは駄目だって聞いたことがあります。
「キュイちゃん、人以外が食べると体に悪いの……だからこれはあげられないんだ」
……いえ、そういえば玉葱はだいじょうぶみたいなことをキュイちゃん返事してましたよね?ついつい、またミニ馬の姿を思い出して尋ねてしまいました……。いえでもね、もし万が一があってからでは遅いんです。
キュイちゃんが大丈夫だといっても、食べたこともないものなので、本当に大丈夫かどうかなんて分からないですよね?
ミック君が声を上げました。
「人が大丈夫なら大丈夫だよ。獣人も食べる物変わらないよ」
へ?そうなのですか?
いえ、でも、キュイちゃんは獣人ではなく実はミニ馬の魔物……。
ん?
待てよ……。
スライムさんはチョコレートを喜んで食べていましたけれど……。魔物は動物じゃないから平気なのでしょうか?
「キュイちゃん、もしかして魔物って何でも食べられるの?毒になるような物ないの?」
キュイちゃんの頭のお耳に口を寄せてミック君に聞こえないように小さな声で囁きます。
猫の獣人とかだと玉葱やばいんじゃ問題を気になる方もいるようなので、書いときました。




