★★召喚された者の末路
兵士さん視点
「異なる世界と道を通じることができるのは……早くて3か月。長ければ数年。次の召喚はいつ行われることになるのか……」
一人目は、陛下の食事係として城にとどまっている。食べたことのない数々の料理に陛下は満足している。召喚された者も、住んでいたところよりも優遇された生活に満足しているようだ。
二人目は、この世界の空気が合わなかったのかわずか数週間で体調を崩してそのまま亡くなってしまった。
一人目で成功してしまったものだから、陛下は二人目の悲劇など頭になく、今回の三人目の召還だ。
相次いで人を召喚していることで、隣国からの目も厳しくなってきている。
西の国のようなとてつもない力を持った者を召喚し、戦争を仕掛けてくるのではないかと警戒しているのだ。
さすがにもう、このまま召喚を続けさせるのは危険だろう……。
頼りなさそうな小さな子供の肩を思い出す。
馬車の中で眠ってしまったあの子……。小さくママ、パパとつぶやく声が聞こえた。親元から引き離してしまった罪は大きい。
「神官に聞くのがはやいんじゃないですかねグレイル隊長」
確かにダンの言う通りだ。あとどれくらいで次の召喚が行われるか聞いたうえで……。
1年先ならば、それまでに今のこの状況をひっくり返すよう準備すればいい。
もし、準備が間に合わないような近い日であれば……。
「全く、人には三大欲求があると言うが……陛下も食欲にとらわれるんじゃなく、性欲にとらわれてくれたらよかったものを」
「ははは、世継ぎいなくて隊長が呼ばれたんですもんね~。今からでも陛下が結婚して子供作ってくれるといいですね」
ダンの軽口に痛むこめかみを抑えて息を吐きだす。
本当に。自分の子供を次の王にするというような欲があれば、自分が死んだ後の国のことをもっと考えてくださるのか。
陛下は、自分が生きている間の快楽しか考えていないように思える。美味しい物を好きなだけ食べる。
そのためならどんなことでもする。その結果教会が好き勝手し始めたのも野放し。
隣国との関係が悪化しようが構わない……とは。
「今子供が生まれても、成人するまでには15年……まともに政治を行えるまで20年……その間、もつか?」
陛下で、この国はもつのか……。
「やだなぁ隊長、陛下の命があと15年持たないって言ってるんですかぁ?」
ダンが分かっていてわざと違うことを口にする。
陛下の命が尽きれば王座は……。
「でも、あれだけ不健康そうな食生活をしていれば長くはないかもしれませんねぇ。異世界の住人の食べ物が我々に毒である場合だってあるでしょうし」
ダンが俺の顔を見て口端を上げた。
「こりゃぁ大変だぁ。陛下に長生きしてもらうために、諫言したほうがいいんじゃない?まぁ、聞き入れるかは知らんけど」
ダンの言葉に苦笑するしかない。
邪魔になれば始末してしまえばいい、異世界の食べ物が毒だったせいにでもして……と暗に告げているのだ。
世継ぎの問題がなぁ……。
それにさすがに、腐っても陛下なのだ。その魔力は膨大なもので、簡単に人の手に落ちることはない。それ相応の犠牲を覚悟して綿密な計画を立てなければ。
シリアスモードよ、早くおわれぇ!(´・ω・`)