スライムさん
手のひらの半分くらいの決して大きな肉じゃないですが……。半分程食べたところで自分の魔石で追加のパンを出してミルクに浸して食べています。
「お肉は、もういいのですか?」
美味しいとは言えないけれど、吐きそうになるほど生臭くて食べられたものではないわけでもないです。それとも故郷の料理に比べたらまずいのでしょうか?
「ああ、よかったら食べるかの?ワシは歯が悪くて、固い物は食べるのが億劫での。疲れてしまうんじゃよ」
歯が……。
「ああ、だから牛乳にパンも浸して食べていたんですね」
肉は豚肉っぽい。焼いてちょっと固くなった豚肉。固いと言えばまぁ、柔らかくて口に入れたとたんにとろけちゃうというお肉ではないので、固いのですが……。よく煮込んだ角煮のようにほろほろっともしませんし。歯が悪いと確かに食べるのは大変かもしれませんね……。
「おーい、パイナップルお代わり!」
隣の席のおじちゃんが、テーブルに銀貨を1枚置きました。マーリーさんが銀貨をエプロンのポケットに回収すると、奥からパイナップルを運んできました。
お祭りなんかで見る形です。パイナップルを4等分か6等分かした感じのやつです。皮をお皿にカットしたパイナップルがずらっと並べられているあれです。
あ!もしかして……。
本物のパイナップルを食べて出てくる単位は、パイナップル丸ごとなのでしょうか?お肉は一切れで出てきましたが……クルミは丸ごとでした。基準がよくわかりませんが、魔石の大きさにもよるのでしょうか。あと切っただけとか中身を取り出しただけでは調理したことにはならないけれど、肉でしたら、切っただけではなく血抜きもしているでしょうから調理したことになっているとか……?
「マーリーさん」
マーリーさんに声をかけると、すぐに笑顔で来てくれました。
「あの、パイナップルの芯はどうしていますか?」
「あら?リツさんはパイナップルを見たことがあるのね。芯と皮の食べられない部分はゴミとして捨てているわ。食べ残したものは魔石に戻すことができないものね。あとはあの子たちの餌よ」
マーリーさんが壁際に並んでいる小瓶を指さしました。
はい?瓶の餌?
「あ、スライム……ですか?」
瓶の中にはスライムが入っていました。形が肉まんじゃなかったので気が付きませんでした。瓶の形に変形しているため、瓶の半分ほどに何か入れてあるくらいにしか思っていませんでした。
瓶に入れてあると、あちこちにぶつかっちゃうこともないんだ……。
「そうよ」
マーリーさんが瓶を一つ持ってきて、指を突っ込んでスライムをつつきました。するとぽんっと弾けて米粒魔石が飛び出してきました。
10個に分裂したスライムさんは……瓶の中でぎゅっと固まっているので分裂したかもわからないうちに元に戻るのでしょうか……。
「はい、ご飯」
マーリーさんが米粒魔石を取り出すと代わりにパンくずを瓶の中に入れました。
「はい」
「え?えーっと?」
米粒魔石を渡されました。いえ、あの……と、戸惑っていると、マーリーさんが笑っています。
「部屋に植木鉢があっただろう?あの上に置いて水をやってくれないかい?スライムから出る魔石は小さすぎて飲み水も出せないけどねぇ。小さな植木の水やりくらいはできるからね」




