異世界で追放されちゃいました。
初めての投稿ではないですがよろしくお願いします。
生活に余裕はなかったけれど、電気代を節約するためくらい部屋で一袋30円のパンをかじり節約を続けた。
彼のお母さんの手術代を作るために。
ある日、彼が街中で女性と言い争っているのを見た。
「あんな地味女と浮気?」
え?浮気?
「浮気なわけないだろう。あいつを女として見たことなんてねぇし。ただの金づるよ。母さんの治療代が必要だって言ったら、毎月ホイホイ金をくれるんだぜ?手術代が必要って言ったら、なんとしても貯めるとか言ってさ。嘘信じてるんだぜ」
嘘?……そっか。嘘なんだ。
よかった……お母さん、死なないのね……。そっか……。
私のママは病気で死んじゃったけど……彼のお母さんは大丈夫でよかった……。
なんてことがあった次の日。
私、田中リツ(20代女)……まさかの、出来事が起きてしまいました。
4月15日 晴れ
売れない漫画家なので、派遣のお仕事もしているのですが……
派遣先の会社でコピー取りをしている途中に、異世界に召喚されてしまいました。
それからほどなく、お城から追放されてしまいました。
期待に添えられず、怒らせてしまったからみたいです。
4月16日 晴れ
異世界生活2日目です。ガタゴトっと夜通し馬車は進んで、太陽が昇ったころに森の中に捨てられるようです。もう、失恋……いえ、男に騙されたことに凹む間もありません。
「ほら、これだけありゃしばらく飢えて死ぬことはないだろ」
私を連れてきてくれた兵士さんが、手の平にジャラジャラと何かが入った革袋をおいてくれました。
ごつごつした体に、訓練で豆だらけの手をしています。身長は2m近くあるんじゃないでしょうか。筋肉もりもりです。金属の肩あてと鎖帷子を付けています。顔には金属のヘルメットみたいなものと、鎖でできた忍者が口元を覆うようなのを付けているので目元しか見えません。彫が深くて鋭い目つきをしていて怖そうです。でも、怖くはありません。
王様の周りにいた顔の良い騎士さんとは違って見た目は怖いけれど声はとても優しいのです。騎士さんたちは顔はいいのに声はとても冷たくて怖かったです。
首をかしげると、革袋を少し開いて中を見せてくれます。
それから、袋の中身を一つ取り出して魔法の呪文を唱えました。
「パン」
するとどうでしょう。革袋から取り出した小指の爪ほどの真っ赤な小石があっという間にパンに変化しました。
「まぁ、城で見た魔石のように大きなもんじゃねぇが、この大きさの魔石ならパンくらいは出せる」
兵士さんが革袋の口をぎゅっと縛って、しっかり私の手に握り直させました。
それから出したパンを口元を覆っていた鎖を少しまくり上げカプっとかじりました。
あうっ、そのパン、私にくださるんじゃなかったんですね。召喚されてから何も食べていなかったので食べたかったです。
もぐもぐとパンを食べる兵士さんの口元を見る。思っていたよりももしかしたら兵士さんは若くてカッコいい人なのかもしれません。彫の深い目元だけ見ると年齢も全体像もまるっきり想像がつかないのです。
袋の中身は魔石と呼ばれる真っ赤な石が詰まっていました。
「この森はスライムや角ウサギ位しか出ない安全な森だ。あっちに歩いてけば2日くらいで町につく」
兵士さんの説明を聞き逃さないようにしっかり耳を傾けます。
スライム?角ウサギ?
スライムって、水まんじゅうみたいなあれのことでしょうか?それとも、子供のころ洗濯糊で作ったドロドロのあれみたいなもののことでしょうか?
角ウサギとは?角がある兎さんってことで間違っていないでしょうか?もふもふさせてもらえるのかな?ちょっと楽しみです。
「水はコップに入れてから出せよ。それから寒い季節じゃねぇが夜は冷える。毛布。雨が降ってもある程度水をはじくからマントのように羽織って使うこともできるやつだ」
毛布と言っても、ちょっと分厚い布みたいな感じのものです。日本で見たふわふわなもこもこなものとは違います。
「あと、魔石はモンスターを倒すと出るからな。足りなくなったら何とか倒すか、働いて買うんだ。あとは、小さなものならモンスターが死んだ後に落ちていることもある。赤い石だからすぐに分かるだろう」
ふお?
魔石はモンスターを倒さなくてもも手に入るんですね。よかった。いくらモンスターと言っても生き物を殺せるか不安だったので助かります。
働いて買うか、落ちているのを探して拾えばいいんですね。
「こんな小さいやつだから、パンも出せねぇが、木の実の1つくらい出せるだろう。って、木の実って食ったことあるか?丸いこんくらいの実とか」
兵士さんが指で示した大きさはブルーベリーとかそういう感じのものでした。木の実は色々食べたことがあります。
「あと、肉、肉は分かるか?」
不思議なことを言い出しました。肉を知らないわけはないです。
「焼いた肉を食べたことあるか?あれはもともと生き物なんだ」
知っていますよ。……あ。もしかしたら、生き物を殺せないなんて甘ったれたことを考えていたのを見透かされてしまったのかもしれません。この世界にはスーパーもコンビニもなくて切り身の肉なんてないから、狩って、捌いて、命をいただくしかないと言いたいのでしょう。
「で、焼いて食べる、焼く、わかるか?火を使って焼くんだ。魔石を使えば焼いた肉が出て来るが、焼いてない肉はそのまま食べたらだめだからな。絶対肉はしっかり焼いて食べるんだ。覚えて置け」
まるで、子供によく言い聞かせるよに兵士さんが説明してくれます。
「ああ、そうだ。見せてやろう」
兵士さんがポケットから、親指の爪くらいの大きさの魔石を2つ取り出しました。パンの魔石よりも一回り大きなものです。
右手と左手に載せて、右手の魔石に「焼肉」と呪文を唱え、左手の魔石に「生肉」と呪文を唱えました。
すると、どうでしょう。右手には立派なステーキが。左手には焼く前の肉の塊が出てきました。
何度見ても不思議です。
この世界では、一度食べたことのある物をなら、何でも魔石で出せちゃえるんです!すごいですよね!
まぁそのせいで「異世界の者を召喚して、異世界の食べ物を色々味わいたい」なんて王様が考えたから、私はこの世界に召喚されちゃたんですけど。
ずっと書きたかった駄菓子物です。よろしくお願いします(*'ω'*)
色々と吹っ切れたので書き始めることができました。