scene 1 不死の館
迷宮の町、アルウネア。
町にしては広すぎるこの町は、四つの区画に分かれている。
第一区、金のオーダークを中心とし、第二区、銀のカロリン。第三区、鉄のアッツが囲うように作られている。
だが、この町の北側には、通称第四区、鉄屑のウシュアイアが存在している。
ウシュアイアはまともに働けなくなった者たちが作った非正規の区画で、禁制品や迷宮から排出された呪われたアイテムなどが当たり前のように取引されている。
またウシュアイアはアルウネアへの不法侵入が可能な道があり、他の所からアルウネアへ来ざるを得なくなった者たちで、毎日賑わっている。
そんな危険なところで、真っ黒のコートを被った二人組がいた。
二人組は両方とも子供のような体躯で、手ぶらであるのがわかる。
そんな二人組に、ここ最近の賑わいの原因である巨漢が近づいてきた。
巨漢は酒瓶を手に持っており、隣にはぼさぼさ髪で顔に生気のない女がいた。
「お前らみてぇなガキがこんな街に何の用だ?」
巨漢はコートの二人組に向かってそういいのける。
対する二人組は、男の存在などなかったかのように、まっすぐに歩いていた。
その様子を見た巨漢は、頭に血管を浮かばせながら二人組の進路を防ぐように立った。
「おいおいおい、無視かよ!新参者が、いいご身分じゃねぇかよ!」
巨漢は手に持っていた酒瓶をフードの一人へ大きく振りかざした。
当然、周りにこの巨漢を止めるようなものはおらず、まるで「そうであるのが当然」かのように道の端をひそひそと歩いていた。
ボンっ!という音とともにフードの男…ではなく、巨漢が倒れた。
フードの二人組は何事もなく歩いていく。
すれ違った、ぼさぼさの女の顔は相変わらず生気のない様子であった。
道行く人々の顔にも変化は映らない。
今日もウシュアイアは回っている。