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ピラー

作者: 相沢 真秀

 数年前に突如として水平線の彼方に一本の巨大な柱が現れた。

 その柱は天にも届く高さだったが、衛星からの映像などでは視認することができなかった。

 各国が有識者を集め、膨大な財を投資し調査を行ったが、現地へ向かったものは誰一人として帰ってきたものは無かった。

 柱の所有国について、海域汚染の可能性など、様々な問題が浮上した。

 次第に、その柱は実在するのか、もしかしたら我々人類は集団催眠のような類の中におぼれているのではないか、そういった考えを持つものも多く現れていた。


 そんななかで、僕は高校受験を終え、今年の春から無事に高校へと通うことになった。

はじめての電車通学だ。


 世界では柱による混乱が続いていた。調査によって消息を絶ったものも数知れず、柱がどのようなものかもわからないのに利権争いに巻き込まれたものも少なくない。


 電車に乗ると、いつも同じ席に読書をしている黒髪の女子高生がいた。

 制服から察するに、僕が通う高校の隣にある高校の生徒なのだろう。


 昨日の夜、柱付近の海域からいままでに見たことのない新種の魚類が発見された。

 今年に入って2回目の報道だった。

 頭のいいひとたちは、海域汚染の可能性を示し、今日もまた、どこかの国が調査の為に船や、飛行機などを出しているのだろう。


 毎日僕は、電車にのると、意識せずにその子を目で探してしまう。

 声をかけるつもりはないけど、なにかしたいというわけでもない。

 

 今朝柱にむかった調査隊はきっと誰も戻ってこないだろう。

 いつか海は新種の魚だらけになるだろう。

 もしかしたら海は海と呼べなくなるかもしれない。


 それでも、いつものように、彼女のが彼女の指定席で読書をしている姿をみると、僕は少しだけ嬉しいきもちになった。

                                     了

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