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第四話 この国の事情

主人公は城へと帰還しました。





王国攻略を担っていたガルノフ将軍を撃破した私は、王都に久しぶりに明るい話題を届けたみたいで、その夜はパーティが開かれた。


自分から見れば十分豪華なパーティに見えたけど、長く続いている戦争のせいで平和だったころはもっと華やかだったと大臣が話してくれた。



この大臣からこの国やこの世界の事を聞かせてもらった。


魔族に攻められる前の王国は豊かだったそうで、城より向こうには大きな街を持つ城が幾つもあったんだって。


この城も本来は王都の城という訳では無く、峡谷に建てられた古い時代の城で、王国が危機に見舞われた時の最後の砦みたいな意味合いの場所。


この城の背後は王国の中では外縁部に当たるようで、広さこそ領土全体の四分の一程の広さがあるものの、この先にあるのは古い街一つある他は辺境の村が点在するくらいで、大きな森と山岳地帯が広がっていて、あまり人は住んでいない。


その古い街と言うのが、二百年ほど前に王国が魔族に滅ぼされかけた時に最後に残った街だったらしく、その街がある意味今の王国の再出発の街だそうだ。


その後王都が移動したことで、昔に比べればすっかり寂れていたその街は、今城の向こうから逃げて来た難民たちが移り住み、多くの避難民が肩を寄せ合って暮らしている。


つまり、王都を含め王国の主要な都市は敵の勢力下にあるという事だけど、先に取り返した城の様子から見ても恐らくそれらの都市にもはや人は住んでいない。


そんな有様だと、魔族の脅威が無くなっても、王国の人口は最盛期よりかなり激減しているんじゃないのかな…。



この世界の国は勿論この王国だけじゃない。


危機に乗じて他国に攻められたりしないのかと聞くと、他の周辺国もこの国と同じく魔族に攻められていて、それどころじゃないようだ。



魔族はこの王国のある大陸の中央部にある広大で危険な黒森の向こうに幾つかの国を構成していて、しかもその危険な黒森の南側にはドラゴンが住むと言われる火山地帯も存在し、それらが王国が存在する人が住む土地とを隔てている。


通常魔族は自らの領域から出る事はあまり無く人の世界との交流は殆どないが、稀に魔族の中に「魔王」の呼び名に相応しい規格外の強力な魔力を持った王が現れ、魔族の国を纏め上げる事がある。


そうした魔族の国を統一した魔王は例外なく、人の領域を征服すべく黒森を超えて軍を送り込んでくるらしい。


何ともはた迷惑な連中。


それが前回は二百年前の出来事で、その時も人の国は滅びの危機を迎えた。


で、神様が勇者を召喚し魔王を倒した。という訳。



逆に人の国が魔族の国を攻める事は無いのかと聞いてみたところ、危険な魔獣が蠢く黒森やドラゴンが住む火山地帯を抜ける事などとてもじゃないが不可能な話だ、と言われた。


以前、幾つもの人の国を征服し強大な帝国を作り上げた皇帝がそれを試みたそうだけど、彼の強力な軍勢は黒森に飲み込まれて帰還せず、軍を失った帝国は征服された国々の反乱に遭い呆気無く滅びたとか。


よくありそうな話だね…。



人が住む土地の北側には、魔族の他にも屈強な蛮族が暮らす広い平原があり、彼らは国を持たず部族社会に生きているらしい。

蛮族と聞くとマッチョな人たちの集団を想像するけど、ちょっと違うんだとか。


原初の人達とも言われてるそうだけど、通常の人より二回りも大きい屈強な人たちの他、明らかな巨人とか、獣人と言われる動物と人のハーフみたいな人達もいるらしい。


彼らは桁違いに強力な戦士たちだが、他にも強力な呪術を使う呪術師も居り、魔族も人も彼らの領域に進出しようとは考えないそうだ。


我ら人から見ると彼らの領域は気候も厳しく貧しいので人が住むに適さないというのもあるのだ、とか言っていた。



大臣にざっくりとこの世界の話を聞かせて貰ったけど、依頼を達成するには広大な黒森を越えるか火山地帯を超えて魔族の領域に向かう必要がありそう。



まずはこの国の主要都市を攻略し、開放する必要があるのかな。



翌日、今後について相談した。



「一先ず、近くの城は落としたのだけど、他の魔族の軍の情報はあります?」


王様が大臣と顔を見合わせ、王様が頷くと大臣が説明を始める。


「恐らく、我らの元の王都に四天王の一人が居りましょう。

 そして、ガルノフと同格の魔将が王都との間にある街に居るはずです。

 ただ、今となっては入ってくる知らせも少なく、今もそこに居るかは…」

 

「じゃあ、一先ずその街を攻略し魔将と軍勢を撃破します」


「また、一人で行かれるのですか…?」


「勿論」


王様が心配そうな表情を浮かべる。


「勇者様…。

 …御武運を」


「ありがとう、王様。


 念のために私が乗って来た乗り物を城の前に置いておきます。

 

 ゴーレムの様な物で勝手に戦いますから、敵が再び攻めてきた場合、多少の助けにはなるでしょう。

 とはいえ、危険な代物ですから、人を近づけたりしないようにお願いします。


 乗り物はこの国から魔族の軍を追い出したら消えますので、安心してください」



「勇者様、感謝します」


「では」





バイクを作って落としたばかりの城まで戻ると、城には既に兵士達が詰めており、後片付けが始まっていた。


空城のまま放置しておくのは色んな意味で良くないからね。


兵士達は私の姿を見ると皆「勇者様!」と声を掛けてくる。


私も手を振って返事を返すと、バイクを片付け城を抜けて適当な平地を見繕ってVR空間にマッピングすると、小規模な生産拠点の構築を開始する。


いつもの手順でギャザラー君を飛ばしてリソース確保に向かわせ、ビルダー君を一体出して後はお任せ。


今回はメックを出すだけだからそれ程大掛かりにはしない。



ギャザラー君やビルダー君が忙しく働いている間、私はリクライニングチェアを出してリラックスしながら、王様から貰った王都迄の地図を取り込んだ。


取り込み後リクライニングチェアでゆっくりと目を閉じると、地図を表示してこの先のルートの検討を始める事にした。


ガルノフと同格の魔将が居ると言う王都迄の間にある都市は、ここから彼らの感覚で二週間の距離があり、その間にも宿場町とか農村などが点在している。


基本的に街道沿いに進むのが一番楽な行き方だけど、当然目立つから魔族の軍勢と出くわす可能性が高い。


逆に言えば魔族の軍を誘引出来るという事だから、ここは堂々と街道を行くべきよね。


となると、魔族の軍勢を蹴散らせるくらいの準備が要るかな。


方針が決まるとパッと目を開く。


既にメック工場を動かせる設備が完成していて、後は私が何を作るのか指示するだけ。


『全地形対応ヘビートランスポーターメックを。

 装備はブラスターカノン一門、マルチショットグレネードランチャー一基。

 それに、セントリーガンにハイスピードパルスレーザー二基。

 後はコマンドシステムとドローンハイブを』


『了解しました。

 直ちに製造に掛かります。

 完成には三時間掛かる予定です』

 

『わかった』


全地形対応ヘビートランスポーターメックはTier1のメック工場で作れる最大のメックで通常は物資や兵員を運んだりするのに使われる大きな二脚歩行メック。


どの位大きいかというと、昔風に言えば十トントラック二台分。具体的には本体が全長10m、全幅6m、全高3mあり、これを大型の逆間接の二本の脚部で持ち上げている。

立ち上がったときの高さは全高15メートルにもなる。


普通セントリーガン程度しか武装はしないのだけど、大きな搭載量を利用してそこそこの火力を持たせることが出来る。


ブラスターカノンはジェネレーターの都合で戦車並みの威力は無理だけど、それでもかなりの威力だし、グレネードランチャーはEMPやコンカッショングレネードなども撃つことが出来て制圧能力が高い。

ハイスピードパルスレーザーは、高出力レーザーを高速で撃つことが出来るので魔族の主力兵士らしいあの小型兵士達をなぎ払うことが出来るだろう。

更にはドローンハイブを搭載する事で、生産能力は落ちるがドローン工場を搭載しているような物で、ドローンをその場で生産して運用することが出来る。


メックを操縦するのは汎用ボットにドライバーAIを搭載したドライバーボットで、ドライバー、ガンナーの二人が乗り込むことで命令を下すだけで戦闘が可能。


私の為の簡単な居住スペースも付いていて、長旅にも対応。


といった、ある意味戦えるキャンピングカーみたいな代物なのだ。


完成までリクライニングチェアで暫く仮眠をとる事にする。



目が覚めたら、早速行動開始だね。










次回はいよいよ次の戦場へと出発です。


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