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第三話 攻城戦

城の奪還戦です。





『ここに前進基地つくるから』





私達の〝依頼〟という名の戦争の始め方の多くはこのパターンから始まる。

つまり、コマンダーが一人ドロップポッドで敵地に降下し、前進基地を建設する事から始める。

人知れず、誰の手も借りず。



山と山の間に僅かに広がる盆地を私の中のVR空間にマッピングし、前進基地をさながらゲームでもやる様な感覚で構築する。


こいつはここに配置して、そしてこいつはここ。


リストから配置する設備を選ぶと、マッピングされた空間に配置していき、効率よく機能する形に作り上げていく。


『こんなもんでどう?』


『機能性評価91%です』


『いいね。じゃあ作る』


形が出来たところで作業開始。



まず、この辺り一帯をギャザリングサイトに設定する。


次に、資源回収ドローンをコマンダーが内部に持っているリソースを使用して空間マッピングという昔風に言うと3Dプリンターを魔法の域にまで高度にした技術で作り出す。


資源回収ドローンは皿をひっくり返した様な形の飛行ユニットで、空間に出現すると直ちに飛び立ち資源を収集する為に飛んでいく。



これは無から有を生み出すような魔法の装置。


資源というのは場所や含有量を考えなければ、案外色んな所にある物で、こんな山間の盆地であっても資源は存在する。


資源回収ドローン、別名ギャザラー、或いはギャザリングマシンは、ギャザリングサイト内をスキャニングし私の頭の中の3Dマップのデータを更新していく。


ちなみに、私はこいつの事をギャザラー君と呼んでいる。



一つだけでは効率が悪いので三つほど作り出すと、それぞれ作業場所を分担しマッピングをまず行う。


マッピングが終了すると、私が描いた前進基地に必要な資源の採集を開始する。


ギャザラー君には機能特化されたナノマシーンが搭載されて居て、それを使って資源を採集する。ナノマシーンは土砂程度なら地面の中にも浸透していくし、岩盤があっても砕いたり溶かしたりして採集ルートを作ってしまう。


そして採取した資源はギャザラー君に一度集められた後、ハイパースペースを経由して資源ストレージへと集積されていく。


私は資源ストレージへ蓄積されていく資源のデータをチェックし、必要資源が集まったら、次にビルダー君ことビルダーボットを作り出す。


コマンダーは設備も含めTier1の全てのユニットを作り出す事が出来るが、言い換えれば小型プリンターを内蔵しているような物で、ギャザラー君程度の小型の物ならいざ知らずそれ以上となると作り出すのに専用機とは比較にならない時間が掛かる。


そして、この作り出している間、コマンダーのリソースのかなりの割合が使われるため、無防備になってしまうし、正直時間の無駄だと思う。


何しろ前進基地建設段階の基地の防御もコマンダーの仕事なのだ。


だからたいていの場合、ギャザラー君とビルダー君を作り出せば、それ以降は専用機に任せる。



ビルダー君を作り出すのはギャザラー君を作り出す何倍も時間が掛かる。


なにしろ、1m程度の円盤と1.5mのずんぐりむっくりしたロボットでは作り出すのに使用する資源量もかなり異なるから。


目の前でみるみるギャザラー君が作り上げられて行き、五分程度で完成。


ビルダー君は建物を作ったり修復したりするのに特化されたロボットで、メックの修理なども出来る。


作り出されると直ちに動き出し優先順位順に私が描いた前進基地を作り始める。


そして、暫くすると一基目の小型ジェネレーターが完成。これでエネルギー供給量がまともになり、エコモードから解放され、基地の全てが活き活きと動き出す。


とはいえ、複数の工場を本稼働させるにはまだ足りない。


ビルダー君が二基目の小型ジェネレーターを完成されると、次にボット工場の建設を始める。


ボット工場ではTier1の簡単なロボットを製造することが出来る。勿論、ビルダー君を作る事も出来るので、ビルダー君が追加生産される。


ビルダー君が五機ほど揃うと、前進基地は多面的に一気に完成に向かう。


最初の小型ジェネレーターより更に高出力のフュージョンジェネレーターが完成すると、前進基地程度の規模であればエネルギー供給量は実質無尽蔵と言っていい。


ギャザラー君が見つけた地下鉱床の位置にマイニングマシンも設置され、潤沢にミネラルの供給を始める。


ギャザラー君は引き続きカーボンの収集に飛び回り、森林資源を枯渇させないよう広く薄く収集を続ける。カーボンも重要なリソースの一つだからね。



ボット工場の次に私のコマンドセンターが設置される。ここで戦争遂行する訳だけど、実は私のVR空間にある私の家のコピーだったりするので、居住空間も併設されて居たりする。

もう実質人間辞めてるナノマシーンの身体だけど、人が人である為には人として最低限の暮らしを要求するの。


コマンドセンターには簡易のレーダースキャナーが搭載されて居て、周囲の状況を確認できる。具体的には動体反応と体温反応などが色分けされて表示されて居て、何かが近づけばすぐにわかるし、連動したセントリーガンに命じれば人や動物程度なら簡単に排除出来る筈。



三基のボット工場に加えてボット工場より更に大きなメック工場まで完成。メック工場は車両とか二足歩行兵器とか大型のメカを生産する事が出来る。

とはいえ、メックの生産にはかなりのリソースが必要で製造にも時間が掛かるため、それなりの時間と基地の規模が無いと大量運用は無理だ。


メック工場の次にドローン工場が完成し、更にはアーモリーを三つほど設置。


ドローン工場は航空ユニットを生産できる。とはいえ大型の戦闘機や爆撃機みたいなものでは無く、小型の偵察ドローンや攻撃ドローン程度の物しか作れない。

このドローン工場は航空基地も兼ねていて、ここ迄飛んで戻れば修理補給が自動的に行われる。


アーモリーは武器工場で、人が操作する銃器などが製造できる。

銃器と言ってもブラスター等のエネルギーガンの事で、昔からある質量弾を発射するタイプの物は更に上位のアーモリーが必要。


しかし、今回はそんな上位の設備やユニットは必要ない。




『前進基地完成ね』


『はい、全て問題なく機能しております』


『では、汎用ボット500体、そのうち5体に前線コマンダーAI搭載。

 武装はブラスターライフル、グレネード。

 

 更に重ホバータンク一両、武装は主砲にフュージョンブラスター一門、外部兵装に80連60mmマイクロミサイルポッド、セントリーガン二基。

 

 そして偵察用ドローンの良い奴を一機』

 

『了解しました、直ちに製造に入ります。

 偵察用ドローンは完成したら、直ぐに飛ばしますか?』

 

『うん。そうして。

 敵の城やその周辺のマップが要るから』



部隊としては最低限。

敵の実力を見る為の威力偵察の為の部隊ともいえる。


幸い敵の城まではそれほど遠い訳じゃ無い為、ボットは徒歩で行けそうなのが救い。


これが徒歩だと厳しい距離の場合は、兵員輸送車まで必要になってくるからね。



ちなみに、汎用ボットというのは正に汎用ボットで本来は戦闘用じゃない。

戦闘も出来るロボットでしかなく、搭載するAI次第で高度な礼儀作法を身に付けた執事にもなれば、前線指揮官にもなる。


高度なAIの使用にはライセンス料が必要で、私が企業の所有物であった頃は経費計上出来たので、多用しても程度によってキツイお叱りが来る程度だったけど、今の宙ぶらりんな身分だと、帰還後の請求額が怖くて多用は出来ない。


ちなみに、標準で入っているAIは汎用性に富み、基本的な戦闘や作業など幅広い仕事に従事することが出来る。


但し、内蔵ジェネレーターが小さい為、武器を内蔵することは出来ず、人用の武器や道具の装備が別に必要となる。

今回は、ブラスターライフルを別途製造し、装備させる。


このブラスターライフルは個人認証付きなので、拾っても他人が射撃する事は出来ない。

大きさは180cm、見た目はひょろくて頼りないし、のっぺりした顔は愛嬌も無いけど、まあよく働く可愛い奴だ。



重ホバータンクは〝重〟と付いているけど、大型のシージタンクに比べると装甲車みたいな物で、不整地も含めた機動力がウリの戦車だ。

ちなみに、ホバータンクはかなり速いが装甲は殆ど装甲車同然なので、防御力には何の期待も出来ない。


重ホバータンクはホバー機動の為に大出力ジェネレーターが搭載されており、その恩恵で大威力のエネルギーカノンを搭載出来る。

今回はフュージョンブラスターと言って、熱の塊を打ち出すタイプの物だ。

多分、城の城壁程度なら溶かして大穴が開くのではないかと思うのだ。


ミサイルポッドは一発の威力は知れているが面制圧力に優れているし、セントリーガンは百メートル程度の範囲で攻撃してくる敵を自動的に排除してくれる。



そうこうしている内に偵察ドローンがロールアウトし、音もなく夜空に飛び去って行く。

私がよく使うこの偵察ドローンは静粛性に優れ光学迷彩を搭載している為、敵地偵察での生存性に優れている。しかも、滞空時間が長い為一日中だって飛んでいられるのだ。


私はコマンドセンターのコマンダーシートに座ると目を閉じる。


すると視界に大型マップが表示され、偵察ドローンが撮っている現在の状況がリアルタイムに描き出されていく。


確かに、この城の大きさは大したことは無い。

古めかしい中世の城郭という感じか。

飛び道具は矢に投石器、堡塁に見えているのは大型の弩弓だろうか、あれは。


夜という事もあり、敵陣は静まり返り、たいまつの明かりから敵の活動が見える。


ドローンの目を借りてみてみると、敵はしっかり歩哨を立てており、夜襲にも備えている様に見えた。


さて、明日は堂々と敵の城に正面攻撃しますか。



翌朝、部隊は全て揃っていて、五百体の汎用ボットは指定した武器を装備しており、コマンダーボットに率いられて準備万端。


そして、三メートル近い高さの重ホバータンクも指定通りの武装で完成し、私のプライムコマンダーの徽章もしっかり描かれていた。




私は重ホバータンクに乗り込むと、号令をかけた。


「では出発!」


『了解、コマンダー』



私の乗るホバータンクを先頭に街道沿いをボット部隊が隊列を組んで進行していく。


当然、敵も私たちの動きを察知して待ち構えているだろう。


部隊を進めながら偵察ドローンで戦場予定地の偵察をする。


敵城の前の街道は流石に綺麗になっているが、攻城兵器の残骸が未だ残っているのが見える。


あの王様は、幾度か奪還の兵を出したのだろうか?


注意して城壁を見れば数か所城壁を修復した個所も見受けられた。


元々、城のこちら側は農村が広がっていたみたいだけど、今や見る影もないね。


暫くすると、どこかで確認されたのか敵の斥候が城に入り、慌ただしく敵が動き出すのが見えた。



街道沿いに進んでくと二時間後、目的地のウェルブルク城が見えてくる。


当然ながらというか、敵が陣形を組んで待ち構えていた。

小型のヒューマノイドと、大型のヒューマノイドから構成される軍団が五つ。


『ざっと見て、五千から六千ってところかな?』


『はい、コマンダー。

 正確には6532です』

 

『相変わらずキミは細かいね』


『それが私の仕事です。コマンダー』


『うん。そうだね。

 では、こちらは近接戦闘はからきしだから、距離を活かして射撃戦闘で』


『了解しました、コマンダー』


ボット指揮官が返事を返してきた。


『では展開』


ボット達が五人の指揮官ごとに分かれて、射撃陣形に展開する。


ひょろいロボットがわちゃわちゃと動いていくのは何とも頼りない。

しかし、銃兵としての能力はそれなりに高いから大丈夫だろう。


多分…。



展開が終わるとホバータンクを前に進める。


『微速前進、パンツァーフォー!』


『ヤヴォール、ヘルコマンダール』


うん、良いノリだ!


さあ、行くぞ。プライムコマンダーの真骨頂見せてやろう。


ちなみに、この戦車を動かしているのは戦車兵AIを乗せた汎用ボット。


AI開発者の趣味なのかAIのベースになったオリジナルの影響か、ノリに合わせてとある国の戦車兵みたいな受け答えをするのだ。



そろそろ敵を射程に収めたところで、城壁の上からこの前の敵将ガルノフが大声を張り上げてくる。


「ランベルクめ、性懲りもなくまた軍勢を送り込んできやがったのか!

 この前は油断していたが、今度は本気で行くからな!

 あの時の小娘は居ないみたいだが、そのデカい乗り物はどうせこけおどしだろう。

 そんなちゃちなゴーレムをわずかな数揃えてきてどうするつもりだ!

 こっちは十倍以上居るんだぞ!

 悪い事は言わない、逃げるなら今のうちだぞ!」

 


『前面の敵部隊にマイクロミサイル発射』


『了解』



マイクロミサイルが発射されると、敵の部隊の一つに降り注ぎ小型ヒューマノイドが抵抗する間もなく消し飛ぶ、大型のヒューマノイドも瀕死状態で倒れているのが見えた。


このマイクロミサイルで普通に敵にダメージが与えられるようだし、問題無し。


シールドで防がれたらどうしようかと思ったよ。



「俺が親切に話してやってるのに、お前なんて事するんだ!

 このクソ野郎が!

 野郎ども、やっちまえ!」

 

「「ウォー!」」


敵将の命令一下、敵軍が突撃を敢行してくる。


『落ち着いて応戦、接近戦は極力避ける事』


『了解』



ボット部隊が突撃してくる敵にブラスターライフルを浴びせる。


ブラスターライフルは超高温の熱エネルギーを光の弾として高速で射出する。

エネルギーシールドや熱に強い素材で出来た装甲などは苦手だが、熱でダメージを与えられる敵ならば大きなダメージを与えられる。


とはいえ、普段の戦闘じゃこんなちゃちな銃は正規軍の戦闘用ボットや軍用車両には無力で、民間人や民兵、原生生物くらいにしか効果がない。


メリットは低コストで大量生産が可能で、パーツの組み換えで色々な道具としても使えるほど汎用性に富み、エネルギーカートリッジが短時間で回復するので壊れない限り補給の必要がない優れモノである。



ブラスターライフルの吐き出す光の弾が小型ヒューマノイドに吸い込まれて行くと、バタバタと倒れていく。

敵の貧弱な革製と思しき鎧など何の意味も無かった。


そして、敵の大型ヒューマノイドも光の弾を食らうとあまりの激痛にのた打ち回り、算を乱す。


結局、短時間に兵力を半数まで減らすと、生き残った兵は皆城へと逃げ出した。


「なっ、お前ら戦え!

 誇りある魔王軍の兵だろう!」

 

しかし、前に進めば待っているのは確実な死とくれば敵将の叫びを聞くやつはいない。


城門の中へと逃げ戻り、固く門を閉ざした。


敵将が叱責しているのが見えるが、結局城に籠る策に切り替えた様だ。



『よし、じゃあ前進再開。

 但し、敵の投石器を食らうと汎用ボットはただでは済まない。

 敵の城壁より二キロの位置までゆっくり前進』

 

『了解』


しかし敵は待ち構えているだけで、その後攻撃してくる様子もなく、敵将ガルノフもこっちをジッと睨みつけているだけだった。



『敵城より二キロです』


『ん、オッケ』


私はホバータンクのハッチを開けると、半身を乗り出す。


「ガルノフ!

 無駄な抵抗はやめて、さっさと城から出ていきな!

 あんたたちに勝ち目はゼロだから」


私の煽りを聞いたガルノフが顔を真っ赤にして怒り出す。


「んだと!

 舐めやがって、落とせるものなら落としてみやがれ!」

 

ガルノフが命じると、届きはしないが投石器から岩が此方に撃ち込まれる。


あれの直撃を食らうとボットは確実に破壊されるな…。


まあ、全滅しても再生産すればいいんだけど、相手に合わせる必要もない。


『フュージョンブラスター射撃準備、目標は敵城の城門』


『了解』


『撃て!』


ホバータンクの砲身から高熱の塊が射出され敵の城門へと吸い込まれる。

ズンっと低い音が響くと頑丈そうな城門に大きな穴が開く。


恐らく、城門の後ろに居た敵の兵士達も無事では済まなかったろう。


「なっ、何だと!」


「言った筈。

 抵抗は無意味だと、あんたたちには勝ち目ゼロ」

 

「ぐっ、ぐぬぬぬっ。

 くそっ、卑怯だぞ!」

 

卑怯も何も、出来る事をやるのが戦争でしょうが。


『20ミリ質量弾スナイパーライフル』


私の手元に大型のスナイパーライフルが作り出される。


ぎゃあぎゃあわめくガルノフに狙いを定めるとそのまま撃ち込んだ。


残念ながらガルノフは避けたのかそれとも偶然か、射撃と同時に前に身を乗り出したので、頭の上を高速弾が掠めた。


バッと髪の毛が散るのが見えた。


「なっ、お前、何を撃ちやがった。

 もう少しで死ぬところだったろう!

 くっそう、もう許せねえ!

 

 原初の精霊よ現出して我が敵を打ち払え。

 『大火焔地獄』!」

 


『警告情報。高熱源反応』


『エネルギーシールド展開』


それと同時に、空に燃え上がる竜が出現し高熱を発したかと思ったら、私を中心にあたり一面が燃え上がった。


周囲に展開していた汎用ドロイドは、耐久温度を超えたのか高熱に耐えきれず全滅した。



「どうだみたか!

 お前の率いて来た貧弱なゴーレムは全滅したぞ!

 後はお前だけだ!」

 

ちょっと相手を舐め過ぎていたか。

この魔法とかいうのは厄介かもしれない。


フュージョンブラスターは威力は強いけど、命中精度はそれほど高くない。


これはさっさと、接近戦でガルノフを潰すべきか。


『私が出るから、私が出た後、ホバータンクは後退』


『了解』



「うっさい、私は全くの無傷だ。

 あんたの魔法なんか屁よ屁!」

 

「んだと、このアマ!

 ならこれでも喰らえ!

 『黒焔滅却刃』

 どおぅりゃー!」


真っ黒に燃え上がる大剣を振り上げたガルノフが飛びかかってくる。


『警告情報。高熱源反応接近』


『ハイエネルギーシールド』


目の前に六角形で構成された半球が現出して光り輝く。


ガン!と派手な音がし、ガルノフの斬撃が弾かれる。


しかし、高位魔法を乗せたその斬撃は、エネルギーシールドに確実にダメージを与えていた。

エネルギーシールドはエネルギーが続く限り何度でも張り直しが利くから実質ダメージゼロだけど、戦車のエネルギーカノンをも弾くエネルギーシールドにダメージを与えるなんて…。


斬撃が弾かれたガルノフが衝撃で弾け飛ぶ。

しかし、うまく体勢をとって着地した。


「な、なんなんだよお前は!

 なんで無傷なんだ、これを食らって無傷な奴なんて魔王様の四天王と魔王様くらいだぞ!

 お前はあのお方たちと同格だとでもいうのか!」


というか、あれを食らって無事なのか。魔王は…。


「言った筈。

 あんたの魔法なんて屁だと。

 今度は私の番だ」

 

『フレキシブルハンドを左右に五本ずつ追加。

 ビームソード装備』


ビームソードを持った腕を左右に五本ずつ、併せて十本出現させる。

ナノマシーンで構成された身体は自由に変化させることが出来る…。


「な、なんだお前っ!

 人間じゃなかったのか!

 しかし、お前は鑑定魔法でも鑑定不能…。

 一体何なんだ!」

 

人間なんてとっくの昔に辞めてる。


「さて、なんでしょうね。

 さあ行くわよ。

 奥義『千手観音』」

 

十本の手から繰り出される斬撃の嵐、それが『千手観音』。


ちょっとVRMMOから拾ってきてみたけど、こんな中二病丸出しの奥義を使ってみる羽目になるとはね。

知り合いが見ていたら恥ずかしすぎる。



ガルノフは何とか剣で受けようとするが、剣ごとビームソードは切り裂く。


「くっ、くそう!

 この化け物!

 何なんだお前は!

 ま、魔王様!」

 

『千手観音』を食らったガルノフはバラバラに切り刻まれ、絶命する。


そして、その死体が地面を血肉で汚すのかと思ったら、驚くことに真っ黒な炭の様になり、塵となって消えてしまったのだった…。


ガルノフの戦死をみた敵の兵士達は悲鳴を上げながら逃げ出した。


「ば、化け物だ!

 逃げろ!」

 

こんのぉ、人を化け物呼ばわりしやがって…。


ああ、イラつく。


『前進基地撤収。資源はハイパースペースのストレージへ保管』


『了解』



「ふぅ、これで一仕事終わり…。

 しかし、魔王とか四天王とか相当な化け物っポイ。

 これは本腰いれてやらないと駄目だ…」

 

『同意します』



ホバータンクに乗って国王の居る城へと戻ると、国王にウェルブルク城奪還の報告をした。


国王達は大喜びで、早速接収に兵士達を向かわせるという。


しかし、本当に一人で城を落としたと聞いて、その表情に恐れが混じった事を私は見逃さなかった。


まあ、わからなくもないけれど。


仕事が終わるまでに帰る手段を作らないと駄目そうね。





汎用ボットは某スペースオペラのバトルドロイドがモデルです。


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