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第二十七話 王都攻略戦 出撃

準備万端、いよいよ仕掛けます。






七時間後。


「バトルボットの生産が完了しました、コマンダー」



作戦室で、偵察衛星やドローンから送られてくる空撮映像が反映された作戦テーブルを使って敵部隊の配置や構成を見ていると、AIが知らせてくれた。


「ありがとう」


早速バトルボットが整列している場所を見てみると、完全武装のバトルボットが整然と並んで待機しており、美すら感じる位整っていて壮観。


ある意味その物ズバリと言えばそうなんだけど、まるで工業製品を専用出荷トレイに並べている様な、そんな錯覚を覚えてしまう。


ちなみに、このコマンダールームからの視野というのは一種の全能感が味わえる代物。


ドローンの空撮映像や船外カメラ、更にはボット兵士の視野や衛星画像など全ての視野から送られてくる映像情報が高度な画像処理システムによって統合され、更にはデータが足りない部分ですら高度AIによる類推による補完機能であらゆる場所が実写さながらの画像として見えるようになる。


とはいえ、万物を映し出すという魔女の水晶玉の様に、まるで見た事が無い物は見えないし、それこそ衛星画像程度では到底実写さながらとはいかず、昔のテレビゲームの様な粗いポリゴンのブロックが表示されていたり、そもそも〝データ不足〟と描かれた影が表示されるだけ、なんて事もある。


しかし、ランドシップの前に整列しているバトルボットの様に十分に画像映像データが揃っている環境であれば、まさにそこにいる様な感覚で『見る』事が出来るわけ。



閑話休題、既に日も暮れて深夜。


暗視能力を使えば漆黒の闇の中ですら昼間のように行動が可能だけれど、例えば強烈な閃光を喰らえば暫く視野がホワイトアウトするとか、色々と制約があるのも事実。いくら地形データがあるとはいえ、初めての土地でわざわざ夜襲を掛ける冒険を冒すよりは、敵に合わせて夜が明けてから動き出すのが良いだろう。



「じゃあ、、明朝五時に出撃するよ」


「了解しました、コマンダー」



そして、翌朝の五時。


私は一時間ほど前にスリープ状態から復帰して、既にコマンダールームの本体から戦闘用の身体の方へと意識を移しているので、こっちの方も準備ばっちり。


戦闘用の身体の方に意識を移している間、本体の方はさながらゲームソフトでVR空間でアバターを操作するプレイヤーの様な感じで、戦闘用の身体で活動しつついつでも本体のすべての機能を使うことが出来たりする。



今回は最初からパワードスーツを着ていく。

パワードスーツの大きさは4M弱、軽金属の外骨格に伸縮性に富んだ人工筋肉を纏い金属の鎧を着た動力鎧。

汎用ボットでは持ち上げる事も出来ない重火器や近接武器を軽々と運用できる膂力と機敏性を誇り、通常戦闘では無類の強さを発揮する。


このパワードスーツは強力な兵器だから沢山出せればいいのだけれど、

バイオサイバネティックス由来のニューラルインターフェイスによる接続を前提に作られていて、それが可能なのはコマンダーだけだから実質コマンダー専用兵器。


だから、複数出す事は出来ないのだ。


尤も、更に上のTierにはメックレベルの火力とパワーを持ったバトルボットや高度AIを搭載した浸透作戦用の高性能アンドロイドも存在するから、今の段階はともかくパワードスーツがそこまで必要という訳でも無かったりする。



今回の携行武器は、主装備に20mmチェインガン、それに肩に40mmグレネードランチャー、後は両手持ちの大型剣。

これとは別に、パワードスーツでも使えるメックに搭載しているブラスターカノン、ビームソードをいつでも用意できる。


これ迄の戦績だと、案外ビームソードが役に立っているから、大型剣は必要ないかもしれない。

でも、剣の質量にパワードスーツのパワーを載せた純粋な破壊力は捨てがたいからね。




「じゃあ、仕掛けるよ!」


「了解しました、コマンダー」


「少佐、敵の出方を見たいからバトルボット部隊を漸進させて」


「了解しました、コマンダー。部隊を進めます」


〝少佐〟とは、今回の規模の部隊を指揮する能力を持った指揮官AI。

と言っても、少佐が今回出現させた一万五千のバトルボット全てを直接指揮している訳では無くて、少佐の指揮下には更に副指揮官AIが居て、それぞれの立場でしっかり部隊を動かしてくれるから、私が直接すべてをコントロールする必要は無い。


でも、全てのバトルボットはサブシステムを介してセントラルAIに接続されているから、その気になれば私がすべてのボットを、さながらコンピューターゲームの感覚で直接指揮する事も可能ではある。



私はパワードスーツを部隊の動きに合わせてゆっくり進めながら、俯瞰画面で敵の動きを見ていると、敵軍はこちらの動きを全く察知していないのか、未だ部隊を展開しておらず、朝食中なのか敵陣のあちこちから炊事の煙が立ち上っていた。


「食事を邪魔しちゃったみたいだね」


「その様ですね、コマンダー。

 どうしますか?」


「いまここで砲撃したら、一網打尽に出来そうだけど、

 敵を全滅させる必要は無いからね。

 これ迄も、逃げた敵を特に追ったりもしなかったし。

 それより今後の為にも、色々とデータをとりたい」

 

「了解しました、コマンダー」


「少佐、森で部隊を展開させて一先ず待機」


「了解しました、コマンダー」


私は敵陣営を俯瞰しながら動きを観察。

改めてみると昨日見た時と同じく、和気藹々と鍋を囲んでいる部族もあれば、既に朝食を済ませたのか臨戦態勢で整列している所もある。


彼らの行動予定はわからないけれど、案外こちらから攻めなければ向こうから奪還に来るのかな?


およそ一時間程度が過ぎた頃、敵の朝食が終わった様だね。


「少佐、部隊を森の前に展開させて」


「了解しました、コマンダー」


こちらの部隊が森から出現したのを見て、敵軍は慌ただしく動き出した。

流石に、ここに至るまでに戦い慣れているのだろう、いざ事が始まるとなればそれ迄が嘘の様にキビキビと兵士達が動き出す。


指揮官が命令を下し、伝令が方々へと走り回っている。

どうやら、無線連絡的な物はないみたいだね。


その点、こちらの兵器は完全に全てがデータリンクされて居て、視界共有すらできる。

これだけでも結構なアドバンテージだろう。だけど、魔族の魔法的な物はやはり厄介。


これ迄は幸いそういう事は無かったけれど、魔法の剣がバトルボットを豆腐を切るように簡単に真っ二つにしてしまっても驚かない。


実際、一番最初に出くわした敵将ガルノフが持っていた魔法の剣、あれで汎用ボットが切れらたらあっさり破壊されていただろう事は確実だし。


バトルボット部隊が進んで行くと、敵はやはりというか、或いは初手は数で押すのか、所謂『ゴブリン』からなる部隊を前面に出して来た。


この世界の一般的な人間より一回り小柄なゴブリン達は、小柄だけれど日ごろから鍛えているのか筋肉質で良い身体をしていて、一般の人間では相手にもならないだろう。多分。

そんなゴブリン達を率いているのが、彼らをそのまま一、二回りほどスケールアップした、一般的な人間の水準だと大男の部類だろう筋骨隆々の屈強なゴブリン。あれはホブゴブリンという種類だろうか?

そして、ゴブリン全体を率いているのが輿に乗ったひと際大きなゴブリン。大きさ的には恐らく二メートル半程はあるだろうか、全体的に軽装なゴブリンとは違って、豪華そうな甲冑に兜を被ったゴブリンで、恐らく彼らの戦争指導者、所謂ウォーロードというやつかもしれない。


側には魔法使いっぽいローブ姿も見えるし、護衛らしい良い装備の屈強のゴブリンも居るし、あれは結構厄介かもしれない。



予定通り、まずは一当て。


「バトルボットの追加生産を始めておいて。数量5000」


「了解しました、コマンダー」


「少佐、敵の出方に合わせて漸進。

 威力偵察のつもりで。無理押しは必要ない。

 接敵前に敵対して支援射撃でかき回すから、そのつもりで」


「了解しました、コマンダー」



さて、いよいよ会戦。

今日は長い一日になりそう。




一先ず一当て。次回はゴブリン軍団相手に前哨戦です。

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