第二十三話 インターバルタイム 前編
メイン拠点へとまた戻ってきました。
リアナを国王に預け、私は再び拡張中のメイン拠点、つまりドロップポッド降下地点へとやって来た。
ちなみに、ドロップポッドは既に落下時の状態から回収され、素材として有効活用されている。
ドロップポッドに搭載されていたビーコン発信機だけでは心もとないので、一応それなりの通信設備を作って本社と通信を試みてみたのだけど、薄々予想はしていた通り無駄に終わった。勿論、ドロップポッドが発信していたビーコンが届いたとも思えない。
メイン拠点は現在更に拡大発展を続けており、既に衛星軌道への衛星投入が可能なレベルまで拡張が終わっている。
つまりはTier3テクノロジーへアクセスが可能になったのだ。
「衛星軌道へのアクセスの準備が整ったわね」
『はい、コマンダー。軌道エレベーターの建設も可能です』
「では、まずは偵察衛星でこの星をスキャンして3Dマッピング、それに地域による気候や気象情報の観測もお願い」
『了解しました、コマンダー』
一般的に作戦に入る場合、大抵は最初にこの作業から入るのだけど、今回は全くのゼロから始めたから、やっとこの星の全容が見えるところまで辿り着いた。
私をこの星に放り込んだ存在が妨害してこなければいいのだけど、なんとなくそういう事はしない気がする。この星の画像ベースでの全容がわかったところで、今現在のこの大陸の人達にとっては大して意味のない事だから。
さて、Tier3テクノロジーにアクセスできると、一気にやれる事が増えてくる。
一番大きいのはキネティック系の武器が本格的に使える用になる事。
エネルギー系の武器は高威力で基本的にエネルギーがあれば弾薬も必要無いから運用が楽で、Tier1から個人兵装レベルのブラスターからメックに装備されているブラスターカノンクラスまで幅広く使えるのだけど、出来る事の幅が広いという訳でも無いし、実の所威力の上限はキネティック系の武器の方が高い。
つまり、同クラスの規模のブラスターカノンと質量弾の威力を比較すると、質量弾の威力の方が破壊力があるという話。
ただ、キネティック系の武器は大抵の場合エネルギーをそれなりに食うし、何より弾が無ければその威力を発揮することは出来ず、当たり前だけれど弾が無くなるとたちまち置物になってしまう。
だから、エネルギー系の武器と置き換わるなんて事は勿論なくて、ここぞという時に使うのがキネティック系の武器になる。
Tier3でこれまで使ってきたTier2のドロップシップよりさらに大きな、Tier3ドロップシップにアクセスできるようになる。
Tier3ドロップシップは全長80m近い機体で、Tier3テクノロジでアクセスできるようになるTier3ヘビーメックを懸架して運ぶことが出来る。
更にそれプラス重武装の海兵を一個小隊、重装備込みでランディングポイントに運ぶことも出来るのだからペイロードはかなりの物。
その上、強力な対地支援武装と簡単には落ちない装甲を装備し、シールド迄搭載しているという、本格的な戦争に使うための兵器ともいえる。
難点は製造するのにTier2ドロップシップの数倍のリソースと時間を要する事。
未だ予想の付かない敵の魔法で落とされでもしたら、かなりの時間をロスしてしまう事に…。
それを考えると、Tier3ドロップシップを戦場の空に飛ばして対地支援任務を行わせる、というのはちょっとリスクが高い気がするな。
だから、今度の王都攻略にはやっと使えるようになったヘビーメックを投入するつもりだ。
ヘビーメックは幾つかの種類が有るのだけど、基本的には車体、足回り、そしてそれに何を搭載するかを決めれば後はAIが最適化して準備してくれる。
足回りは車体によって選択出来る種類が決まって居て、ある車体はホバーとキャタピラが選べたり、ある車体は六脚だけだったり、はたまた多脚からホバーまで一通り使える車体もある。
一ついえる事は、一通り使える汎用性に富んだ車体はペイロードに乏しく重武装は無理だが、六脚だけの車体だと逆に専用装備を搭載出来たりなんて特色もある。
実際の所、一番重たい兵器を搭載出来るのはホバータイプではあるのだけど、ホバータイプは車体が重くなる程、それを支えるエネルギー消費量が増えるから、搭載兵器は射撃に車体からのエネルギー供給が少なくて済むカートリッジタイプの重兵装に限られてくる。
ヘビーメックは大抵の場合、後方からの火力支援を担ったり、ドローンネストやTier2ドロップシップの離着陸パッドを載せたりといった小型のランドキャリア的な用途での使い方が多く、重装甲とシールドに物を言わせて敵に突入させたりという使い方はあまりしない。
重装備の戦闘車輌が実は近接戦闘に弱く、ゲリラ戦でジャンプパック装備の機動歩兵に成す術もなく破壊された例もあるので、ヘビーメックは気軽に前に出せる代物ではない。まあ、この星だとそういう心配は要らない可能性が大きいのだけれど。
そう考えると、前線を担うのはやはりTier1汎用ボットの戦闘用兵士版であるバトルボットという事になるのかな。
Tier3ファウンドリーヘビーメックをもっていけば現地でバトルボットを大量生産できるしね。
それは兎も角、準備するにはまずは現地の情報が必要。衛星情報が手に入るまで、私はその間VR空間でのんびり休暇を取る事にする。
久しぶりに自宅でのんびり過ごし、AIの人しかいないけどVR空間に作られた平成の街をぶらついたりと、そういった時間も必要だからね。
私はメイン拠点に設置したコマンダールームのシートに身を沈めると、静かに目を閉じVR空間の自室へと意識を移した。
衛星軌道へのアクセスゲットは大きいです。




