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第二十一話 一時帰還 前編

一先ず攻略の報告とリアナを預けに城塞都市へと戻ります。





カイエンブルクを攻略しリアナから事情聴取も出来た私は、そのリアナを一人で無人の拠点に置いておく訳にもいかないし、一先ず城塞都市へと戻る事にしたのだ。


だけど、高機動ビーグルを飛ばせば城塞都市まで数時間で到着するとはいえ、以前同乗させた騎士にはちょっと気の毒な体験をさせてしまったし、今回はその時の更に倍の時間リアナを絶叫マシンに乗せ続けるのは、ちょっと酷…。


そこで、絶叫マシンとバンジージャンプならどっちがマシか、という話になるのだけど、飛んでしまえばそれ程怖い事は無い筈。


そう考えた私は、ドロップシップにリアナを載せて一気に城塞都市へ飛ぶことにした。



「リアナ、これから城塞都市に行くのだけど、ここからだと結構距離があるから空を飛んでいこうかと思うのだけど」



「空を…、ですか…?」


「ええ、空を飛ぶ乗り物でね」


それを聞いてリアナはきょとんとした表情を浮かべた。


『魔法があるこの世界では、空を飛ぶのに乗り物に乗る、という事は滑稽なのかしら』


『カイエンブルク城に離着陸場と思われるテラスがある事から、何等かの空を飛ぶ乗り物がこの世界にも存在する事が予測されます。

 誰もが簡単に魔法で空を飛び、空から魔法で攻撃できるなら、空を飛ぶ乗り物は必要ないでしょうから、その場合カイエンブルク城のテラス状の施設は必要無いと考えます、コマンダー』


『という事はこの反応は滑稽ではなく、むしろ荒唐無稽というところね』


「リアナは空を飛んだことある?」


「いえ…、ありませんが…」


「そう。ところであなた達って空はどうやって飛ぶの?」


余りに一般常識な事を聞いてしまったのか、それともこれまた荒唐無稽だったのか、リアナはじぃっと私の事を見つめる。


そして、語り出した。


「そうですね…。

 魔法に長けた者であれば魔法で飛ぶことが出来ます。

 ですが、空を飛ぶという事にはかなりの魔力を要しますから、魔法で空を飛べる者は限られます。

 

 魔法以外の方法というと、飛竜やグリフォン等の騎獣に乗る事が出来るなら、それらを駆って空を飛ぶことが出来ます。

 ですが、飛竜やグリフォンには誰でも乗れるわけではありません。彼らに認められ従属させるほどの力を持った者でなければ」


「魔法で飛ぶのは難しいんだね。

 でも、飛竜に乗って空を飛ぶなんてカッコいいね」


「そうですね。

 殆どの者にとっては空を飛ぶことなど夢のまた夢ですから、空を舞う彼らは憧れの存在です」


「じゃあ、憧れの存在にはなれないけど、今から飛ぶよ」


そういうと、ニッと微笑んで見せる。


「えっ、もう…ですか?」


「ええ。

 さて、付いて来て」



不安げな表情を浮かべるリアナを連れて、拠点の外に停めてあるドロップシップへと向かった。


拠点のメディカルブースから初めて外に出たリアナは、私の世界の施設に目を丸くする。


「この様な建物は見た事がありません…。

 ひょっとして、あなたは別の世界から来た人なのですか?」


「まあ、そんなところ。

 ところで、別の世界から来た人ってこれ迄にも居たの?」


「はい。

 言い伝えに出てくる存在ですが、海の向こうから人族がやってくるより更に昔に、狂った王が召喚した魔人を別の世界からやって来た勇者が倒したそうです」


「どこかで聞いた話ね。

 でも、勇者ってあなた達の世界にも居たのね」


リアナは苦笑いする。


「ええ、言い伝えの存在ではあるのですが…」


「ちなみに、その勇者はその後どうなったの?」


「勇者のその後についての伝承は残って居ません」


『例の勇者と同じく役目を終えたから帰されたのかな』


『その可能性はあります、コマンダー。

 勇者と呼ばれる存在の力は、明らかにこの世界のバランスを壊します』


『私達も帰してもらえると良いけど』


『乗って来た船は既に四散してます。ですからもしこのまま戻されても、二度とハイパースペースから帰還する事は出来ません、コマンダー』


『ダヨネ』


「そっか…。

 さて、これが空飛ぶ乗り物だよ」

 

私はドロップシップを指し示す。


リアナはドロップシップを見上げると、完全に絶句し、凍り付いた。


『まあ、仕方ないよね』


『この世界ではこのサイズの乗り物は存在しないと思われます、コマンダー』


『多分ね』


私はタラップにもなっている後部ハッチを開けると、リアナの手を引いて中に乗り込んでいく。


リアナは抵抗する事も無く手を引かれるままに付いて来るけど、心ここにあらずといった様子で、この世界の人には傍で見るドロップシップは少々インパクトが強すぎたかも。


私とリアナは、カーゴエリアを抜けて操縦室へとやって来た。


普段は自分で操縦したりはしないからここには来ないのだけど、飛んでいるのを実感できるのはやっぱり操縦席からだよね。


私はリアナを操縦室の椅子の一つに座らせると、シートベルトで身体を固定する。


そして操縦席に座ると、機体にリンクしてシステムを起動した。


途端に私の視界は、機内の風景から全方位外の風景へと切り替わる。


ちなみにこの外の映像はダイレクトに私が認識していて、いわば高性能なVR空間を脳内に表示しているような物なので、機内が透明になった訳では無く、リアナがいきなり宙に放り出されている訳でもない。



リアナは相変わらず放心状態のまま。舌を噛まないと良いけど。



「さて、行くよ」


私は機体を浮かせると一気に上昇させた。


機体の機動に我に返ったリアナが変な声をあげる。


「あっ?! ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



程なくリアナの悲鳴が収まった。



『搭乗者が気を失いました、コマンダー』


チーン




リアナのドロップシップ初体験でした。

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