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第十七話 カイエンブルク攻城戦 城塞攻略中編

カイエンブルク城塞の攻略開始です。





『コマンダー、2時です』


仮眠をとって夢を見ていた私は、AIのメッセージに目を覚ます。


見る夢の多くは、かつて生身の身体だった高校時代の頃の夢。

あの頃は体調を崩すまでは毎日が楽しくて、こんな毎日がずっと続けば良いのにと思っていた。


ある意味その願いは、夢の世界の中で、という条件付きで叶う事になったのだけど…。


「ドロップシップの準備は出来ている?」


『はい、コマンダー』


「よし、では作戦を開始する」


『中尉、戦況は如何』

 

『命令通り、23時より突入を開始しました。

 現在城の一階に突入して交戦中で、フロアの半分を制圧しました。

 既にかなりの敵兵力を撃破しましたが、未だ敵兵力は尽きる気配がありません。

 味方は、突入時より既に159体が戦闘不能状態。

 しかし、増援が逐次投入されて居る為兵力に問題はありません。

 敵の誘引には成功していると思われます』


ボット部隊のカメラをサムネイル表示して戦況を確認する。


ボットは血を流す事は無いけれど敵は血を流す、文字通り血みどろの激戦(血を流しているのは敵だけだが)が繰り広げられていた。

ボルトガンは役に立っているみたいだけど、ロケットランチャーは建物の内部で使うには火力が強すぎて今のところ役に立っていない。

勿論、外で使っていたナパームスロワーも同じ理由で使うことが出来ない。


部屋を一つ一つ開けて制圧しながら進んでいる様だけど、思いもよらぬところから敵が現れてボットに組み付かれるパターンが多い様だ。


だけど、こうなる事は想定済みだ。損害度外視で敵を誘引してもらうしかない。


『了解。

 こちらも作戦を開始する』

 

『ご武運を、コマンダー』



私は装備を整えると、ドロップシップに乗り込む。


AIによって自動操縦されるドロップシップがふわりと浮き上がると、コマンドメックがあっという間に小さくなる。


そして、地上から見ればそびえる様な城塞も上空から見ればミニチュア模型の様だ。


ドロップシップは予めマークしておいた地点と高度に到着すると、上空で待機する。


後ろのハッチを開けると、上空に吹く風が吹き込んでくる。

地上は遥か下で、こんな高度から飛び降りるなんて普通は頭がおかしいとしか思えない。


勿論、HALO降下はもう何度も行っていて、すっかり慣れっこではあるのだけど。


とはいえ、飛び降りる瞬間はやはり覚悟が居るのだ。


「よし…。行こう。

 アイキャンフラーーーイ!」


私は大空へと飛び出す。

落下していくと、ドロップシップはどんどんと小さくなり、逆に城はどんどんと大きくなる。

風の抵抗を小さくするために身体はぴったりと閉じて、頭から降下して行く。


降下地点のテラスをマークすると、足首辺りについているフィンとカエルの手の様な水かきの付いてる手で進路を微調整して目的地まで一直線に飛んでいく。


既定の高度まで降下すると、減速の為に両手両足を大きく開いて薄膜を展開する。

途端に全身に強い風圧を受けて急減速して制動が掛かり、降下地点へと静かに降り立った。


「さてと」


テラスには人気は無く、サーマルセンサーでも近くに熱源反応はない。

恐らく地上階で激戦が続いているので、殆どは下にいってるのだろう。


ここまでは想定通り。


テラスから中に入る扉は鍵が掛かっているけれど、人差し指を細く変化させると鍵穴に差し込み、シリンダー内を走査すると合いカギの形に変化させ、カチャリと開ける。


私の世界のセキュリティ機能付きのデジタルキーだとハッキングしなければ簡単には開かないけれど、この世界の古い鍵程度なら簡単に開けることが出来るので楽でいいね。


とはいえ魔法で施錠されて居るとお手上げだから、プランBが必要だけど。


扉を開けるとそこはホールになっていて、そこから廊下が更に奥に続いている。

廊下には左右に扉が並んでいて、これも奥まで続いているようだ。


そして、人の気配は全くない。

骸骨戦士やら動く死体は静止しているとスキャン不能だから、正しく誰も居ないかというとそれは分からないけれど。



「こいつを使う時が来たね」


私は3Dマッピングで、銀色の球体を十個作り出す。


このガジェットは最新のナノテクノロジーで作られた便利な道具。


この球体は、ナノマシンで構成された液体金属で出来ている。

自由に形を変えられるし、硬さだって任意に変えることが出来る。

本体質量を超えない限りは何にだって変化させることが出来るのだ。


更に複数球体を合体させて質量を増やせば、その分大きなものに変化することが出来る。

この十個を合体させれば、私の様なナノマシンで出来た身体を構成する事も可能なのだ。


そう、私の身体によく似た代物なのだ。


とはいえ、私の身体を構成するナノマシン程の性能は無いのだけれど。


このガジェットはAIを入れて独立して動かす事が出来るのだけど、私の分身として使うことも出来る。


つまり、私は安全な所に居ながら城の探索が可能という事。


色々と制約もあるのだけど、今回の作戦にはぴったりなガジェットだと思う。


私は身を隠すと目を閉じ、ガジェットに意識を移す。


最初の頃は慣れなかったけど、今や十個のガジェットだって並列処理で動かすことが出来るのだ。


ガジェットは移動する時は球体になって転がっていき、部屋にはスライムの様に隙間から侵入し、一部屋づつ室内を確認して行く。


今の所黒ローブや動く死体は居なかったけれど、骸骨戦士が待機状態で数体固まっているのが見えた。


しかし目の前を怪しい球体がうろうろしているのに、骸骨戦士達は微動だにしないのだ。


こいつ等は、やはり黒ローブが居なければ動かないのかもしれない。


私が潜入したこのフロアは、詰所やリネン室などの護衛や使用人達が使用する部屋が多く、一方で貴人が使用したであろう立派な居間や豪華なベッドなどが置かれた寝室などもあった。


案外と、城主とその家族の居住階だったのかな。


という事は、あのテラスは本当に飛行機の類を飛ばす為のヘリポート的な物だったのかも。


今私が居る、テラスから入ったところにあるこのホールは、よく見れば格納庫に見えなくもない。


そしてどうやらこの貴人の居住区画には黒ローブ達の親玉である豪華黒ローブが居住しているようで、豪華な黒ローブが何枚も掛けられてあった。


捜索中下への階段を見つけると、更に下のフロアへと球体を転がしていった。


下のフロアは、元は誰が住んでいたのかは分からないが、現在は黒ローブ達の居住区のようで、乱雑に黒ローブ達の私物が置かれてあったりと、すっかり荒れ果てていた。


このフロアにも居るのは骸骨戦士のみで、他は誰も居ない。


地上階に攻め込まれて居れば当然と言えば当然か…。


更に下のフロアへと進み部屋の探索を進めると、漸く黒ローブが居る部屋を見つけた。


なにやらしている様だけど、ついでだし始末しておこう。


足元に銀色球体ガジェットを忍び込ませると、球体からニードルを突き出して黒ローブの身体を貫いた。

黒ローブ自身はやはり普通の人と言うか普通の魔族なのか、小さなうめき声をあげると身体を痙攣させて絶命した。


このフロアでは他に何人か黒ローブを見つけたので、同様に全て始末した。


そして更に部屋を探索して行くと、元は会議室なのか食堂なのかはわからないけれど大広間を発見し、そこに親玉であろう豪華な黒ローブを着た男が、何人かの黒ローブと共に城の地図をテーブルに広げて喧々諤々とやっているのを見つけた。


「ふふっ。見ぃつけた」





地上階にボット部隊を損害度外視で突入させ敵を誘引し、混乱状態の所へと忍び込む二面作戦です。

未来のガジェット大活躍です。

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[一言] ようやく未来のテクノロジーが優位に働きそうな漢字仮名?
[気になる点] 「ふふっ。見ぃつけた」 何この悪役感
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