第十四話 カイエンブルク攻城戦 前進
ボット部隊が前進を開始します。
翌朝早朝、コマンドメックの前に二千体の武装を終えた汎用ボットが勢ぞろいした。
「中尉、また頼むわよ」
「了解しました、コマンダー」
「任務内容は、再び街まで前進。途中敵部隊と接触した場合、交戦距離に入ったら戦闘をはじめて。
今回の装備であれば敵の接近を許すことは無いはず。
敵部隊の殲滅後、城壁に籠る敵兵の排除を。
城壁を制圧したら、コマンドバトルメックから支援射撃を行い城門を破壊する。
城門が通行可能になれば市街地に突入、市街戦を行い敵を掃討する事。
状況が変われば追って指示する」
「了解しました、コマンダー」
「では、出撃」
私の号令と共に汎用ボット部隊が横陣を組むと前進を開始。
丘の上から望遠でカイエンブルクの様子を見ると、敵は既にこちらが軍を繰り出してくる事を察知し、黒ローブがこちらを指さして何かを叫んだり骸骨の弓兵を配置に就けたりしているのが見えた。
二千体ものボットが綺麗な陣形で整列し前進して来るのを見て、黒ローブ達はどう思うだろうね。
前回と同じく、あちらの準備も完了したのか城門が開くと再び動く死体の群れがわらわらと出て来た。
しかも、今回は前回よりもさらに多いようだ。
既に、前に聞いたカイエンブルクに住んでいた住人の人数を超える死体を焼いたような気がするけれど、他所から持って来ているのだろうか。
動く死体にはあまり細かい命令が出来ないのか、骸骨戦士の様に隊列を組むことも無く、一塊になってヨタヨタと歩みを進める。
この状態であれば強いどころか、前に進むのも不安に見えるのだけれど、黒ローブの命令一下全速力で喰らいついてくるのは前回見てのとおり。
恐らく今回も前回と同じように、ある一定距離に入るまではたとえどんな攻撃を受けようと前進を続けさせ、その時が来たら突進させるのだろう。
今回装備させたナパームスローワーの射程距離は約300m、高圧力を掛けられたナパームゲルがハイドロジェットノズルから投射されるのだ。
ブラスターに比べて有効射程は半分しかないけれど、〝死体を焼く〟と言う用途なら圧倒的に威力を発揮するはず。
双方の距離が300mまで接近した時、ボット部隊からナパームの輝く白い炎が舌を伸ばすように伸びて行ったのと同時に、動く死体が再び両手を振り上げ突進を始めた。
前回はブラスターで部位破壊することが出来ても突進を止める事は出来ず、ボット部隊まで殺到されると数に物を言わせて組み伏せられ滅茶苦茶に壊された。
だけど、今回は違う。
数の上では動く死体はこちらの三倍以上いるように見えるけれど、ナパームスローワーの燃え上がるゲルを身体に浴びるとたちまち動く死体は燃え上がり、前に進めなくなる。
そして、燃え上がったゲルが僅かな時間で燃え尽きる頃には、動く死体はすっかり炭化していてもう動くことは無い。
ナパームスローワーの炎が動く死体の群れを舐めるたびに燃え上がり、交戦開始後それ程の時間を経ることなく、動く死体の大群は炭化した死体の山になった。
動く死体の後方に居たはずの黒ローブもナパームを食らって一緒に燃えてしまったのか、その姿を見つける事は出来なかった。
ボット部隊は敵部隊を殲滅すると、城壁へと向かって前進を始めた。
敵は角櫓に備え付けられたカタパルトの準備を始めた。
流石にカタパルトから射出された大きな石が直撃すれば、汎用ボットも無事では済まないから十分脅威になりえる。
カタパルトを操作するのは骸骨戦士達。動く死体と異なり、やはり細かい命令を与える事も可能なのかな?
ボット部隊が城壁まで600mに近づいたところで、守備兵への攻撃を開始する。
ブラスターから放たれる赤い光線が城壁の上の骸骨兵士に命中すると、その部分が超高熱で焼かれる。
生きている兵士ならそれは致命傷になるのだけれど、骸骨戦士には効き目が薄く、部位破壊しない限りその動きを止める事は無かった。
守備兵との交戦が始まると、程なくカタパルトから人の頭大の大きな石が投擲される。
射程的にはギリギリの様子で、殆どがボット部隊まで届かない。
でも、中にはボット部隊が布陣している所まで届いたり、或いは地面に落下した後転がってボット部隊に乱入することもあり、敵にそれ程の損害を与えて居ないにも拘らず、こちらに少しずつ損害が出だした。
『中尉、部隊をカタパルトの射程外まで下げて。
対地支援を行う』
『了解しました、コマンダー』
ボット部隊が一旦戦闘を中断し、城壁から一キロの地点まで後退する。
それを見て城壁にいる黒ローブが手を叩いて喜んでいるのが見えた。
なんだかイラつくね。
『ドロップシップをお願い。
到着したらロケット弾とチェインガンで城壁の上に展開する敵部隊を掃射して』
『了解しました、コマンダー。
ドロップシップ到着まで十五分です』
『了解』
十五分後、ドロップシップが飛来して指示通り城壁の守備隊を掃射すると、また戻って行った。
角櫓の上にあったカタパルトは粉々に粉砕され、展開していた黒ローブも骸骨戦士も最早原型を留めてはいない。
その代わり、城壁に少なからぬ被害が出た…。
後で直さなきゃ。
『中尉、ブラスターカノンで門を壊すからもう少し待機して』
『了解しました、コマンダー』
「ブラスターカノン発射準備、目標カイエンブルク城門。準備出来たら発射」
「了解」
程なくブラスターカノンの吐き出す火球が着弾し、城門を瓦礫に変えた。
『中尉、突入開始』
『了解しました、コマンダー』
汎用ボット部隊が城門へと前進を開始した。
次は市街戦だね。
私も出る準備をしておこう。
城門を破壊し、いよいよ突入です。




