第十一話 インターバルタイム
城を後にした主人公は次の行動をはじめます。
国王達に見送られ城を後にした私は、ドロップポッド降下地点に設営している基地へと向かった。
設営中の基地は光学迷彩で一応カモフラージュされており、遠目には分からなくしてある。
基地へとやって来たが、完成度は未だ三割という所だ。しかし既にTier2のテクノロジーにはアクセスが可能になっていた。
「やっとドロップシップが利用できるわね」
『はい、コマンダー。Tier2のストーク型ドロップシップが生産可能です』
ストーク、つまりコウノトリ型ドロップシップは全長30メートルを超える機体で、Tier2のバトルメックの輸送も可能であり、最も広範囲に使われている中型のドロップシップだ。
バトルメックを胴体下面に吊るして運ぶことが出来る他、完全武装の海兵一個分隊をカーゴエリアに乗せて空中降下させる事も出来る輸送力を持つ。
更にはTier1バトルメックに搭載していた物と同程度の火力を持つブラスターカノン一門、多連装ロケットポッドを二基、20mmヘビーバレットチェーンガン二基を機首に装備していて、対地支援も可能。
索敵機能として多機能統合型マルチセンサーも搭載されている為、上空から地表の動向を把握することが出来る。
これで移動が随分と楽になる筈。
「じゃあ直ぐにドロップシップを二機生産して。
一機目に乗って帰るから、Tier2ビルダーを五機搭載してね。二機目が完成したら、Tier2コマンドバトルメックを搭載して送って」
『了解しましたコマンダー』
コマンドバトルメックというのは、指揮能力を高めた簡易生産機能を持つ大型のメックで、六脚で動く全地形対応型の動く前線基地みたいなメック。ストーク型が運べる一番大きなメックでもある。
シールドと武装を備えた強力なバトルメックだけど、これ一両で正面攻撃みたいな事は勿論考えてはいない。
まずは敵情把握をしてから、前進基地を移動させないとね。
一機目のドロップシップが完成すると、早速乗り込んで前進基地へと戻った。
やはり空を飛んで帰るのは圧倒的に早いね。
前進基地へと戻ると、医療カプセルに入っている魔族女性の確認に医療施設へと向かう。
常時モニタリングしているから、まだ目を覚ましていないのは知って居る。
救出してから未だ四日程度しか経っては居ないが、医療カプセルの中に入って居れば一般的な外傷であれば、部位にも寄るのだけど、部分欠損していても一週間もあれば回復する。
元々それほどひどい外傷は無かったのだけど、見た感じ擦り傷や打ち身などの外傷は既に治癒しており、我々の医療カプセルが一応この世界の住人にも効果があることが分かった。
酷い待遇で痩せ細って衰弱していた身体も随分マシになっていると思うのだけど、依然として目を覚ます気配は無し。脳波を見る限り植物状態に陥っているという訳では無い様なので、眠り姫の様に眠っているだけだ。
彼女が目を覚ますには、まだ暫く時間が掛かるのかも知れない。
「この前進基地は、保護している異種族が目を覚ますまで、拠点として保持する」
『了解しましたコマンダー』
施設建設システムを開くと、さながらゲームの様な感覚でこの前進基地に外壁と扉、タレットなどを追加配置していき、防御設備を整える。
これ迄はレーザーワイヤーで囲んだだけの簡単な防御態勢だったけど、これで少しはまともな拠点になったはず。
設計が終了したので実行を選択すると、ドロップシップに載せてきたTier2ビルダーを中心にTier1ビルダーが協力して、短時間で増強された前進基地が完成する。
「後は、警備兵として汎用ボットを二十体程配備しておいて。
武装はブラスター、フラッシュグレネード、フラググレネード、ビームソード」
『了解しましたコマンダー。
もし、侵入者があったらどうしますか?』
「可能であれば捕獲。
となると、ブラスターにパラライザーオプションも追加」
『了解しましたコマンダー』
手配が終わると、前進基地のコマンダールームで今後の計画を練る事にする。
『偵察ドローンが撮って来たカイエンブルク迄のデータを基に地図を作成して』
『了解しました。データベースをアップデートします』
程なく地図画面に更新データが反映されて、カイエンブルク迄の衛星写真も表示される。
偵察ドローンはまだ上空を飛んでいるから、必要があれば直ぐに追加情報を得る事も出来る。
「見た感じ、敵の勢力下なのに宿屋街からカイエンブルクまで誰も居ないね」
『はいコマンダー、敵影は確認できません。
敵はそれほど大部隊では無いのでしょうか』
『それは分からないけど、それでも宿屋街に辿り着くまでには、それなりの敵軍が居たよね』
『五百から千名程度の兵団を繰り出して来ていましたね。
気づかれる事も無く、アウトレンジで撃破しましたが』
『出来る事をやるのが戦争。わざわざ敵の土俵に乗ってやる必要はないよ』
『同意します、コマンダー』
『とはいえ、なにも居ないなんてあり得ない』
私は地図を操作すると、次の前進基地の設営に良さそうな場所を物色する。
程なく良さそうな森を見つけたので、そこに新たな前進基地を建設する事にした。
『この場所に前進基地を作るよ。
今回はTier2ビルダーを持って来ているから、Tier2テクノロジで設備を作るよ』
そう言うと、VR空間に森の地形をマッピングして前進基地の構築を行う。
コマンドセンターを中心に小型ジェネレーターを配置して、それを動力にTier2ギャザラー基地を配置。Tier2ギャザラーを生産し基地として機能するこのベースを設営する事で、Tier2迄の必要資源をTier1ギャザリングマシンの数倍のキャパで採集可能になる。
そして、ボット工場にメック工場、ドローン基地もTier2で揃えて配置していく。
ボット工場が完成したらTier2ビルダーを更に追加。
勿論、二機のドロップシップを運用する為のパッドとメンテナンス施設を設営するのも忘れていない。
今回は最初から外壁とタレットを設置して、万が一にも備えよう。
『よし、こんなものか。
じゃあ、移動するよ』
『了解しました、コマンダー』
私は再びドロップシップへと乗り込むと、新たな前進基地建設予定地へとドロップシップで乗り込んだ。
と言っても、私とTier2ビルダーボットは空中投下だ。ドロップシップは新基地にパッドが出来るまでは、前の基地の空き地で待機なのだ。
「よっと」
大空から舞い降りた私は、華麗に着地を決める。
ちゃんと飛び降りれば、無様に顔から突っ込むなんて事は無いのです。
Tier2ビルダーボットも危なげなく近くへと降下した。
現地で再度マッピングを行い、予め作っておいた施設建設図に反映させる。
「さて、はじめるよ!」
私はTier1ギャザリングマシンを3Dマッピングすると早速資源調査と採集に向かわせ、資源ストレージをVR空間に保管してある手持ち資源を使って設置させる。
後は作業が進むのを見ながら待つだけ。
Tier2ビルダー君がしっかり働いてくれるだろう。
私は野戦テントを設営すると、簡易ベッドを配置して寝っ転がる。
『私は休憩取るから施設が完成したら知らせて』
『了解しましたコマンダー』
こんな時くらい自由に過ごさないとね。
私はVR空間へと意識を飛ばすと、VR空間内にある自宅でのんびり過ごす事にした。
カイエンブルク攻略に向け前進基地の建設をしました。
次回はいよいよカイエンブルクの攻略です。




