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おやすみ白(ブラン)
区切られた小さな部屋で
向こう側の音を聞いている
丸い天窓にそそぐ血の色の花火
届かない熱
まるで星みたいね
さも優しげに
目からこぼれ落ちるのは
むらさき色の蜜を乞う生唾
分かっていて それでも私は
うなだれるあなたの背中が描く
なだらかな丘を愛しているの
真っ白な壁は
時おり肉の塊になって
悪夢の中の怪物みたいに
あなたを苦しめたりもするけれど
あんまり遠くへ逃げてはだめよ
私がその目をふさいであげる
死んだ怪物のかけらを食べて
あなたにだけ優しい子守歌をきいて
今日もぐっすりおやすみなさい
どうか明日も 素直でかわいい
それ以外には何もないあなたで
外ではまだ花火が降っている
どこかで馬がいなないている
うつくしくない願いごと
私は祈る
燃える宇宙のちりにすがる
消しゴム色のあなたの額に
銀の埃のキスを落として
前作の『おはよう黒』と対で書いたものです。
「無関心」「目を背けること」を何となく題材にして書きました。