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読切小説

異世界転生オンライン【読切】

 2016年頃から本格的なVRゴーグルが販売開始して以来、世の中ではさまざまな変革が起きた。実際、VRゴーグル自体は1930年代から開発が開始されたらしいが、ブレイクスルーが起きたのは2016年にMicrosoft社が発売した「Mixed Reality」だろう。これを機に社会一般にVRが受け入れられたし、そこからVRを使ったオンラインゲームが多数リリースされた。

 そして、様々なゲームがVRを使ってリリースされる事になる。FPSがVRの基本であるため、非日常体験をキーワードに様々なゲームが開発された。

 そんなVRMMOの一つとしてリリースされたゲームの一つに、【異世界転生オンライン】としてファミ通にも掲載されたことのあるゲームが今回の話の根幹である。


 そのタイトルは【Legend of BRAVES】と言うゲームだ。


 似たようなゲームがその後多数リリースされるため、たいして話題になる事は少なかったが、LoBはまるで本当に異世界に転生した感覚を味わえるVRMMORPGであった。

 そう、このゲームはまるで異世界に転生・転移したかのような経験を味わえるゲームとして話題になった。

 と言っても、話題になったのは実際2年ぐらい前のことだし、俺が受験真っ盛りの時だったので、知ってはいたけれどもプレイはできなかったわけであるが。

 俺はバイトで頑張ってお金を稼いで、最新のVRゴーグルと【Legend of BRAVES】のスターターセットを購入したのだ。

 ヨドバシカメラで購入した俺は早速、VRゴーグルを装着する。コントローラ人差し指にはめるタイプのものを購入した。

 VRゴーグル自体は初めてでは無い。実家にもあるし、PS4のVRゴーグルも実家にある。今回購入したのは、PS5用のVRゴーグルである。

 早速ゲームをPS5にインストールして起動する。

 よくあるVRMMOの話のように脳の電気信号を取得するなんて事はなく、単に目線の感知や首の振り、あとは両手に装着したコントローラで色々と操作するようである。

 オープニングが流れたあと、早速キャラメイクになる。異世界転生オンラインと名を打つだけあり、様々な種族でスタートをすることができる。中には無機物転生もできるようであるが、非常に難易度が高くお勧めはできないとwikiには記載があった。


 俺は、他のゲームでもよくやるネカマなので、早速女性のキャラクターを作成する。


 俺が作るキャラクターは、アビゲイル・ルーレグライスとした。設定は異世界転生した女の子で、赤い髪が特徴の美女である。このゲームのキャラクリは頑張れば老人も作れるし、とてもじゃないが人間とは言いがたいものも人間ベースから作成できる。それぞれ転生種族べつに設定できる容姿が異なるのだ。

 モンスターは容姿をあまり変えられなかったらしく、1年前の大型アップデートでモンスター種族もかなり自由度高く容姿を変更できるようになったらしい。

 モンスター転生プレイも面白いが、ネカマプレイが一番好きなので最初のキャラクターは女性キャラと決めている。


 さて、キャラクリも終わり、早速ゲーム世界に入り込む。【スタート】を右指でクリックすると、世界が突然切り替わった。

 この時俺は気付かなかった。ありきたりだが、とんでもない事に巻き込まれてしまったという事に。


 アビゲイル・ルーレグライスは平凡な女の子だ。

 どちらかと言うと男勝りだが、気立てが良く、誰とも気さくに話す活発な町娘だ。

 ほんの1分程ではあるが、あたしはアビゲイルの人生を追体験していた。極めて不思議な感覚である。まるで本当に異世界転生でもしたかのような気分だ。

 ん? あたし?

 目の前にはゲームのコンソールが写っており、意識すればステータス画面が表示される。

 うん、間違いなくゲームの世界だ。

 手とか身体を動かすと、思っていた以上に思った通りに動かせる。鏡を見ると、寝間着姿のアビゲイルが映るが、まさにキャラクリエイトで作成したそのままだ。


「おお、結構本格的じゃ無い!」


 お、イントネーションまで補正がかかってる感じがするわ。思考もアビゲイルに若干よるのは気になるけれど、成り切るなら思考からだし問題ないわね。

 コマンドを確認すると、


 ▷ステータス

 ▷アイテム

 ▷装備

 ▷コミュニティ

 ▷クエスト

 ▷システム

 ▷課金メニュー

 ▷ログアウト


 のアイコンが表示されている。どこかの強制ログアウト不可VRMMOみたいな状態では無いのかな?

 ステータスにはあたしの情報が載っている。


 称号:なし

 所属コミュニティ:なし

 名前:アビゲイル・ルーレグライス

 年齢:12歳

 性別:女性

 種族:人間

 ジョブ:ノービス

 レベル:8


 以降はアビゲイルの基本的なステータスだった。

 装備は寝間着に下着上下である。カップ数まで記載してあるのはなんだかなぁと思うが、まあいいわ。ゲーム上は脱げないだろうからね。


「しかし、本格的異世界転生ゲームね。まるであたしがほんとうにアビゲイルとして転生したみたいだわ」


 ログアウトは出来るようなので、時間が来たらログアウトしよう。その前に、操作感の確認をしたらいいかしら。

 移動は普通に歩いた感じである。指で操作すると思ったが、なんか普通に歩けてしまっている。

 さすがに魔法は覚えていないみたい。MPは存在するし、魔力もそれなりにあるので魔法は普通に使えそうね。


「……おかしいわね。まるで本当にこの世界に入り込んでいるみたいだわ」


 声はおそらく声優さんのものだろうが、選択したボイスと若干差異があるようにも感じる。12歳なので幼い感じの声ね。まあ、それがこのゲームの仕様だとあたしは推測する事にした。


「アビィ! 起きてるのー? 朝ごはんよー!」


 おそらくアビゲイルの母親かしら。ヘルプが表示されて【RPの練習をしよう! キャラクターになりきってNPCに返答してみよう】とあるので、あたしはお母さんに返事をする。


「はいー、今行くわー!」


 あれ、思いっきり大声を出してしまったが、大丈夫かしら? 一応防音性の高い部屋を借りていたから大丈夫よね?

 まあ、いいわ。

 あたしはトットットーと部屋を出て、階段を降りる。その時、手に木の質感を感じたし、匂いを感じたのはものすごく違和感があったわ。

 あたしがしているのはゴーグルタイプのVRゴーグルで、鼻を覆ったりはしないし、手も人差し指を覆うタイプのコントローラである。

 あたしは疑問に思いつつも、アビゲイルとして朝食を食べる事にしたわ。硬いパンと目玉焼きにベーコン、サラダにスープね。硬いパンはちぎるのにも一苦労したけれど、一口大に細かくちぎって食べるものらしかった。これにバターを塗って食べるようである。

 最大の違和感はここにあった。ご飯をたべれる事である。食感や味を感じたの。凄く質素で美味しいっちゃ美味しいけど微妙な感じの食事をサッサと済ませて、あたしは慌てて部屋に戻った。

 そして、すぐにログアウトをした。


 視界がブオンと揺らぎ、暗転してタイトル画面に戻った。


「はっ!」


 俺はすぐにゴーグルを外すと、そこは見慣れた部屋だった。


「な、なんだこれは……」


 俺は確認するために、VRゴーグルと共に購入した他のゲームを起動してみる。某有名ホラーゲームだ。

 他のゲームは【Legend of BRAVES】ほどの没入感は無く、普通にプレイできたことを確認した。


「……なんだろ、このゲーム」


 何というか、本当にアビゲイルになった感じがするゲームであった。まるで本当に異世界転生したかのような錯覚に陥っていたようだ。


「このゲーム、本当に続けていいのだろうか……?」


 俺は気になりつつも、悩む。5600円で買ったしなぁと言うのもある。Skyrimみたいな雰囲気のゲームかなと思って期待して購入したしな。


「ま、やるにしてもせっかく始めたし、バイオの方から先にやっちゃうかな」


 俺は選択を先送りにして、ホラーゲームの方を再開したのだった。

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