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3話 僕の顔は今、どうなっている?






......うぅ。何やら変な夢を見た気がするな。僕はどうなったんだっけか?たしか、牢屋の中で寝てたはず。その後に気を失って変な夢を見たんだっけ?......ただの夢だ。ただの夢に希望を持っちゃいけない。夢......か。あんな夢を見るなんて、僕はまだ希望を持ってしまってるのかもしれない。......希望なんて何の役にも立たない。人間はクズだ。


「殺してやる......人間を滅ぼしてやる」


あの男......あの男のせいで僕はこんな目に!ぼ、僕の体!僕の体はどうなっているんだ?意識が回復してすぐ真っ暗な牢屋にぶち込まれたから自分の体がどうなっているかわからない。僕の大事な体、ズタズタに......?牢屋にいた時の皮膚の激しい痛みと突っ張る感覚......喉に感じた刺すような痛みと呼吸がままならない感じ......僕、今どんな顔をしているんだ?


「ああ、ああああ......うぁああああぁああああああ!!!」


ぼ、僕の顔......僕の大切な顔......僕の美しい顔が......母さんから譲り受けた顔が......僕の顔は、今どうなっているんだ!?僕の顔、顔は......


「そんなに気になるかい?自分の顔が」

「だっ、誰だ!?」


すぐ隣から聞こえる声。暗闇で自分の手すら見えないので、もちろんその姿を確認することはできない。その声の主は、声の高さからしてまだ幼い子供のようだ。


「おや?もう忘れてしまったのかい?ボクだよ、ボク。契約したじゃないか。」

「まさか、夢の――――――――?」


思い返してみれば、夢の中で聞いたこえもどこか幼い少女のような声だった。まさか、あの夢は現実だったのだろうか?僕は、幼い少女に仕えるのか......?


「夢?アレは夢ではないよ。ボクは少し便利な魔法が使えるんだ。......相手にボクの望んだ夢を見せる魔法をね」


ゆ、夢じゃん......。じゃなくて!


「ほ、本当にアレは夢じゃなかったのか?」

「今はそんなの問題じゃないんじゃないかい?気になってるんだろ?」

「そっ、そうなんだ!僕の顔!」

「......ふ~ん。君はだいぶ自分の顔に自信とコンプレックスがあるみたいだね。」

「こ、コンプレックス?」


僕が顔にコンプレックス?バカな。僕はこの顔で成功したんだ。自分が望んだか望んでないかはともかく、視聴者が望むことは出来ていた......ハズ。


「そ、そんなことより、鏡!鏡は?」

「落ち着きなよ。慌てても君の顔は逃げないよ?少し待っててくれよ、明かりをつけるから。【ライト】」

「そ、それって?」

「ん?別に珍しいものではないだろう?魔法だよ。」

「あ、ああ。灯り、ありがとうな。」


周囲が明るくなり、少し目がくらむ。......予想通り、目の前の声の主は幼い少女だった。......それにしても、魔法?魔法なんてこの世界にあったのか。僕が居た世界とは全く違う世界って言うのはもう分かったが、そんなファンタジーなことってあるのかな?


「うん。鏡つかう?」

「あ、ああ。」


か、鏡。これに、こ、これに僕の顔が......映るんだよな?って、当たり前か。そうか。そうだよな。これを見ればいいんだよな?あ、ああ。解ってる。解ってるけど。......見たくないんだ。暗い牢屋の中で腕を触った時、腕がベトベトしてヒリヒリしてたんだ。それと、言うまでもないけど触ったところが痛かった。関節も曲げようとすると死ぬほど痛かったし、むしろ動かないでも痛かった。


「だめだ。見ないとダメだ。ダメなんだ。見ないと。」

「ちょっと落ち着きなよ。唇から血がでてきてるよ?」


血?......おかしいな、保湿は毎日やっていたんだけど......。あ。


にぢゃっ......


「っがぁあぁあぁああああ!!!????」

「だめだよ~そんなんなってるとこ触ったら痛いに決まってるじゃん。あ~あ。無理に触るから剥がれてるじゃん。剥き出しになっちゃって。でも、残念だったね。この傷じゃ完全には治らないよ。」

「そ、そんなんって?ぼ、僕の顔、どんなんなってるんだ?」

「あ......。い、いや、でも安心してよ。傷が完全に消えるワケじゃないけど、目立たないようにはなるから」

「目立たない?目立たないじゃだめだよ。完全に消えないとダメなんだ。ダメなんだよ。僕は完璧じゃなきゃダメなんだよ。」

「煩いよ?今よりはマシになるんだ。治してやるだけありがたいと思えよ」

「あ?違う違う違う。ダメだ。それじゃあダメなんだよ。」

「その煩い口、鏡を見れば少しは鎮まるんじゃないのか?君、興奮しすぎなんだよ。なんだか君、危ない感じがする。それ(・・)あと少しでも集めたら、瞬間に君の首は飛んでなくなるよ?」


は?何を言ってるの?首?鎮まるって何?何わけわかんないこと言ってるんだよ?......ワケわかんないことを言ってないで僕の顔治せよ。


「これじゃあ話にならないな。【ミラー】」

「は?」


目の前に透明な氷と銀の板が出てくる。......もしかして、ここで鏡を作るつもりなのか?さっきかが見渡してきたじゃないか?


「......優しさ入りの鏡だったんだけどね。君には正直になろうじゃないか。見なよ。」

「は?優しさ?」

「......。」


無視かよ。......少女がため息とともに、両手を合わせる。すると、まるで少女が手で操っているように二枚の板が合わさる。......見事に一枚の鏡が完成した。こんな魔法無いだろうけど、多分応用だろう。......それに名前を付ける意味は解らんけど。あれか。イメージ理論か。魔法の威力はイメージの力によって変わるってアレ。


ス――――――――ッ。


僕の目の前に鏡が移動する。......そこには当然だけど僕の姿が映る。


「それが君の姿だよ。ボクの言っている意味、わかったかい?」

「これが......僕の姿か?お、おかしいな?」


何がおかしいかって?逆に何がおかしくないって言うんだ?だって、これ見てみろよ。いつかネットで見てしまったアフリカの処刑みたいな感じになってるじゃないか。僕の記憶でも覗いてるの?


「な、何かの冗談なんだよね?僕、こんな顔じゃあないはずなんだけど」

「君、牢屋にいた人と本当に一緒なの?僕には君のことが色あせて見えるよ。君の胸の内の思いは何?それに正直になったらボクも先の治療の話を続けても良いよ?」

「僕は――――――――」


僕は......?胸の内に燻る思い?僕は今何を望んでいるんだろうか?この醜いを通り越した恐ろしい顔を元通りに治すこと?元の世界に帰ること?この世界で生まれ直したい?――――――――――――――――違う。全部違う。僕は。僕は。


「僕は」

「君は?」

「僕は、僕は!!人間がッッ」

「人間が!?人間がどうなんだいッ!?胸の内をぶちまけちゃえよ!」

「僕は人間が憎いッ!人間を_____人間を滅ぼしてやるッ!!!」

「ダメだよ。滅ぼすのはまだダメだよ。でも、すぐに君の死に場所をボクが見つけてあげるよ」

「......ありがとう」


僕は泣いていた。情けなく、幼い少女の腕の中で。......おかしい話だと思うかもしれないけど、なんだか少女の腕の中は今までで一番あったかくて、今までで一番安心できた。......今まで一番人の為に尽くしたいと思った。









親が美人で有名な女優で、自らもモデルとして華々しく活躍していた主人公。自らの容姿を一番気にして、一番神経質になっていたからこそ、主人公の行動を制限していた自分の顔が心の内でコンプレックスになっていたのかもしれませんね。


......コンプレックスになるほどいい顔してるなんて。ちょっと顔ちょうだい。

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